sorry,Japanese only

 『 自閉症の人の自立をめざして 』

梅永 雄二:著 北樹出版 定価:1500円+税
ISBN978-4-7793-0119-3 C3037 \1500E

副題に「ノースカロライナにおけるTEACCHプログラムに学ぶ」とあるようにこれまでも自閉症者をはじめ、障害者の就労などの成人の方の第一人者である梅永先生が、2006年から1年間ノースカロライナへインターン研修をしてこられての報告と考察です。
TEACCHプログラムについては、日本に紹介されてから既に四半世紀、自閉症児を育てられている親の方たちの中では、もう知らない方はいらっしゃらないでしょう。少なくとも若いお母さん方にとっては、告知後まだ間もない方を除いて周知のプログラムだと思います。
育てる会でも、児童デイサービス「赤磐ぐんぐん」ではTEACCHプログラムに基づいた早期療育に取り組んでいます。
そして我が家でも、告知後まもなくTEACCHを知り、その視覚化や構造化の手法にずいぶんと助けられた息子が、もう成人式を迎えます。時の流れを感じます。
今回、著者の梅永先生が1年間滞在し、身をもって体験された本場のTEACCHです。硬直化することなく、実践や研究を重ね、どんどんと改良されているのが、TEACCHプログラムのすごいところでもあります。わくわくしながら本書を開きました。
まず、紹介されているのが診断と評価です。CARS(小児自閉症評定尺度)やPEP(自閉症・発達障害児教育診断検査)は我が家でもお世話になったのですが、ここで新たに紹介されているTTAPとは、私にとって初めて聞いた評価法でした。
それは、学校を卒業して社会にでるための個別移行計画を作るための評価法だそうです。従来のAAPEPに代わるものとして開発され、高機能自閉症やアスペルガー症候群の青年たちに対しても使用できるものとなっています。
その領域は、AAPEPと同じく「職業スキル」「職業行動」「自立機能」「余暇スキル」「機能的コミュニケーション」「「対人行動」と分かれており、そのそれぞれに、新たな検査項目がいくつもついているそうです。
たとえば、「職業スキル」の中にある「箱詰め作業」の評価項目を見るとこんな具合です。
  「職業行動」では、以下の項目等で評価を行ないます。
( 1) 作業に従事している時間
( 2) 作業の効率
( 3) ミスの割合
( 4) 作業中の集中力
( 5) 規則遵守
( 6) ほかの人たちとの距離感を保った作業
( 7) 上司との関係
( 8) 仕事をする上での作業指示の確認
( 9) 複数の仕事へのスムーズな移動
(10) 次の仕事へ移る際の行動
(11) 言語や視覚的指示に対する反応
(12) パターン化した仕事が変化したときの反応
梅永先生のおっしゃっているとおり、どの項目一つをとってみても実際の仕事を行なうにあたって評価が必要な項目ばかりで、すぐにでも日本の特別支援学校の高等部や就労移行支援の作業所でも使える評価法だと思います。少しでも早く、新たにTEACCHで開発されたこのTTAPが現場で使えるように、全文の紹介・出版が待たれるところです。
また、本書では他にも学校コンサルテーションや就労支援、居住支援、余暇支援など、ノースカロライナで取り組まれている実践の数々が続いて紹介されています。
それはそれで、すばらしい(・・・羨ましい)事例の数々であり、参考になることも多いのですが、親としてはそれをいかに日本で暮らしている我が子たちのために役にたてられるのか、ということの方にどうしても関心がいきますね。
その意味では、最終章「自閉症の人の支援に関するノースカロライナに学ぶ点」で、梅永先生が提言されている数々の事柄が、本書の一番伝えたいこと、私たちの一番知りたかったことだったのかもしれません。
ライフステージにおけるそれぞれの場での支援のなかで、日本では何が欠けていて、そしてそれを補っていくためには何が必要か、ということが提言されています。
診断というのは、その人に○○障害とか○○病というレッテルを貼るのではなく、診断に基づいた治療や教育、福祉的なサポートがなされなければ意味がありません。
身体障害、知的障害、精神障害といった3障害同様、自閉症やアスペルガー症候群に対しても「発達障害者手帳」という福祉的なサポートを受けることができる手帳が提供されるべきです。
中にはこのような一歩踏み込んだ提案もありますが、梅永先生がこの章でもっとも必要であると力をいれて書かれているは、「各ライフステージで支援をされる方に対しての専門的な研修や、専門家としての人材の育成である」ということです。
やはり特効薬的な魔法の薬はなくて、遠まわりに見えても地道な努力が必要だということでしょう。そう思うと私たち育てる会が取り組んでいる学校の先生方を主な対象とした支援者養成講座や、保護者も含めた支援者養成セミナーは、TEACCHを日本に根付かせるために最も正しい道だったといえるのでしょうね。
私たちの取り組みにエールをいただいたようで、元気がもらえた一冊でした。
(「育てる会会報119号」 2008.3)

  目次

はじめに
第1章 ノースカロライナ州の自閉症サポートとTEACCHプログラム
1 TEACCHプログラムとは
2 TEACCHプログラムにおける自閉症の捉え方
    (1) 「構造化」による指導
    (2) 自閉症の社会性
    (3) コミュニケーション
    (4) こだわり行動
    (5) 認知の問題 − 考えること、学習すること
    (6) 組織化と連続性
    (7) 感覚や知覚の問題
3 TEACCHセンターの業務
    地域センター
第2章 診断・評価
1 CARS
2 PEP
3 TTAP
第3章 就学前支援
1 家庭支援
2 プリスクール
第4章 学校コンサルテーション
1 小学校
    (1) フェアビュー小学校
    (2) ジョンズ小学校
    (3) アッシュビルカソリックスクール
2 アッシュビル中学校
3 高校
    (1) ジャクソン高校
    (2) アッシュビル高校
第5章 就労支援
1 チャペルヒルTEACCHセンター
    (1) モービルクルー
    (2) 標準モデル
2 グリーンズポロ
    (1) 標準モデル
    (2) モービルクルー
3 アッシュビル
第6章 居住支援
1 アッシュビルのグループホーム
    (1) モントフォードグループホーム
    (2) フェアビューグループホーム
2 アルバマールのグループホームとカロライナファーム
第7章 余暇支援
1 WNC(ウェスト・ノースカロライナ)ランニング/ウォーキング
2 ピクニック
3 サマーキャンプ
4 オールド・フレンズ
第8章 研修
1 地域センターによるワークショップ
    (1) 高機能自閉症/アスペルガー症候群のワークショップ
    (2) ソーシャル・ストーリーズワークショップ
    (3) 援助つき就労ワークショップ
2 5デイズ・トレーニング(5days Training)
3 ウィンター・インサービス
4 メイ・カンファレンスとインターナショナル・インサービス
第9章 その他
1 権利擁護
2 研究(早期診断、新しい検査ツールの開発)
3 研修生の受け入れ(長期、短期)
4 自閉症協会(親の会)
第10章 自閉症の人の支援に関するノースカロライナに学ぶ点
1 診断
2 発達障害者手帳
3 学校教育
4 就労支援
5 居住支援
6 余暇支援
7 生活支援

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