学校現場では、教材購入、旅費等で予算が足りないことをいつも痛感している。さらに学校によれば、わら半紙代さえ十分になくて保護者の負担に一部頼っている状況さえある。しかし、それらの教育予算がどのような財源から構成されているのか、一般にはなかなか理解されていない。「予算が足りない」と当局に言われれば「しかたない」とあきらめ、それで終わってしまいがちになる。教職員から必要な教材備品を要求しても、当局から総額の枠をはめられその枠内で要求を調整せざるをえなくなる。予算の財源を知らない教職員にとってそれ以上のことがなかなか要求できない。研修・教育課程等について管理職・地教委・教育事務所等に強力に主張する教職員でさえ、教育予算についてはその仕組みや財源について十分な知識がないために要求行動も十分なとりくみになり得ていないのではないか。教育予算についてはほとんど何も知らず、無関心な教職員も多い。教育条件を改善していくためには、
教育予算についてのしくみを今まで以上に理解し、当局の言いなりで終わることなく、配当されるべき(国の地方交付税交付金の積算による)予算が十分に配当されているのかどうかを検討しながら、行政当局に要求すべきは要求するという姿勢が必要であると考える。それをしないで安易に保護者の負担に頼るということではいけない。
中学校が町内のもう1校の学校に統合され、「統合すれば2校から1校になり交付金が減り町の財政も圧迫されるはずなのに、なぜ統合したがるのか分からない。」と言う話も聞いていただけに、教育予算と地方交付税交付金への関心が高まっていた。役場に行き、基準財政需要額の数値を聞いたり、補正係数の計算の方法を簡単に聞いたりしたものの、それらのコピーは拒絶されるし、補正係数の計算資料はちらっとしか見せてもらえないしすぐにわかるようなものでもなく、前途多難なスタートであった。全市町村の補正係数・基準財政需要額の県の資料を入手した。あとは各市町村の教育予算額の入手だけでよいことになった。、補正係数については『地方交付税関係法令』からまとめた。『地方交付税関係法令』は、補正係数算出方法にかかわって不明な点をM参議院議員に尋ねる中で、入手したものであり、地方交付税についての多くのことを知ることができた。教育予算のしくみや実情を知る糸口になればとの思いでまとめたものである。
県及び市町村は、独自の財源だけでは財政運営が行えない。そのため独自の税収の他に、国庫支出金や地方交付税交付金を受けながら、地方の財政が行われている。地方交付税交付金との違いを明確にするために国庫支出金について少し整理してみよう。
国庫支出金は、使途が明確に規定されており、@国庫負担金A国庫補助金B国庫委託金からなる。国から地方への教育関係の国庫支出金は40数種類に及び、給与費・手当関係、就学奨励関係、へき地教育振興関係、学校教育振興費、公立文教施設整備費関係、私立校等学校経常費助成費、社会教育費関係、文化振興費、体育振興関係、学校保健・安全・給食費関係、文化財保存事業費、文化財保存施設整備費に分類される。
以下、O県における教育費関係の国庫支出金の収入状況(93年度予算)を簡単に述べる。(O県・教育費に494億42百万円)
地方団体の支出する経費の実績に対して国が一定割合を義務的に支出するもの。
負担率・算定基準は必ず法律又は政令で定めなければならない(地方財政法第11条)。
対象となる経費の地方負担分については、公営住宅関係・国民健康保険関係を除き、地方交付税の額の算定に用いる財政需要額に算入するものとされている。(同法第11条の2)
(1)教育費国庫負担金・・義務教育職員給与費国庫負担金が2分の1強を占める
<O県・教育費国庫負担金>474億83百万円
小学校教職員費(258億97百万円)、中学校教職員費(144億97百万円)、教職員人事費(46億83百万円)、養護学校費(18億34百万円)、盲ろう学校費(2億98百万円)、学校建設費(1億83百万円)、全日制高等学校管理費(90百万円)
(2)建設事業費国庫負担金・・義務教育学校建設費国庫負担金→市町村に
「その施策を行うため特別の必要があると認めるとき又は地方公共団体の財政上特別の必要があると認める」(同法16条)ときのものであり、国の一方的裁量によって適宜交付するものである。補助率等は法律・政令で定められるものもあるが、一般には必ずしもその必要はない。また、地方負担分のうち、重要なもの普遍性の高いもののみを地方交付税の財政需要額に算入するのが通常である。
<O県・教育費国庫補助金>19億57百万円
小学校教職員費(31百万円)、中学校教職員費(27百万円)、事務局費(12百万円)、教育指導費(3億15百万円)、高等学校総務費(5百万円)、定時制高等学校管理費(37百万円)、教育振興費(12百万円)、学校建設費(99百万円)、通信教育費(6百万円)、盲ろう学校費(24百万円)、養護学校費(61百万円)、社会教育総務費(92百万円)、文化財保護費(6百万円)、保健体育総務費(22百万円)、体育振興費(25百万円)、私学振興費(11億71百万円)、短期大学費(3百万円)
外国人登録事務、国政選挙など本来国の行政事務であるものを地方公共団体に代行させるもの。
<O県・教育費委託金>91万円
事務局費(55万円)、文化財保護費(36万円)
国庫補助負担金を整理し、これを地方税・地方交付税等の地方一般財源に振り替えることが行われる例もある。1985年度に義務教育費国庫負担金のうち旅費・教材費に係わるもの等が一般財源化された。86年度には、共済追加費用や恩給費等の負担率の引き下げを行っている。また事務職員・栄養職員を義務教育費国庫負担制度から適用除外しようとする動きがあり、この10年間、各地方議会に陳情・請願のとりくみがされている。一般財源化されると地方の財政が圧迫されるとともに、十分な教育行政ができにくくなる。
教職員の定数もいわゆる「定数標準法」に基づいて規定され、各学校に配置される。しかし、小規模校への教諭・事務職・養護教諭の配置は、92年度で第5次定数改善が完結したと言われるものの、O県では不十分なままになっている。(表1−1〜2)
教職員給与費等はこの定数に基づき、国庫負担制度で1/2が国庫支出金から出ており、地方交付税交付金の基準財政需要額(後述)にも算定されている。しかし、標準定数に比べ県内の教職員の配置数は不十分である。(表1−1〜4)
配置の特徴は、@校長・教頭を多く、A教諭を小学校に少なく中学校に多く、B小学校の6学級以下の小規模校に教諭を少なく、C3学級規模の小中学校の事務職員・養護教諭は標準の65〜80%、となっている。さらに同教主事の加配、初任研加配、第6次定数改善(TTその他)などの教諭・講師数を標準定数の中で配分しているのではないか。
ここでは以上の指摘に止めておく。ゆとりある教育を実現させるためにも、教職員の定数増のとりくみはぜひとも必要であり、少なくとも第5次分の完結は強く求められるところである。県の予算などの分析も今後必要である。
@地方団体の行政執行上の自主性を損なう事なく、その財源の均衡化を図る。
A交付に際しての基準の設定を通じて地方行政の計画的運営を保障すること。
B地方自治の本旨の実現と、地方団体の独立性を強化すること。
(1)最も基本的な特色は、地方団体の「独立共有財源」としての地位。
国税収入のうちの一定割合分は当然に地方交付税となるということを意味する。つまり、単なる国庫からの交付金ではなく、本来、地方団体が共有する独立財源であることを示している。また、名称からも明らかなように、地方税の代替的な性格を有するものであり、「間接課徴形態の地方税」ともいわれている。
(2)使途制限の禁止
いったん交付された地方交付税をどのような使途に充てるかは地方団体の自由にゆだねられており、国は、地方自治の本旨を尊重し、これに条件をつけ、又は使途を制限してはならないものとされている。(地方交付税法第3条第3項)
(3)地方団体の責任と国の措置
@使途制限の禁止の規定は、国の不当な干渉を排除するため(地方独立財源ゆえ)
Aこの財源で地方団体の無制限で恣意的な行政執行を許容するものではない。
B地方団体は合理的かつ妥当な行政水準を維持すること及び法律・政令により義務 づけられた規模と内容を備えるべきことを規定する(同法第3条第2項)
C地方団体がこのような義務を怠りその行政水準を低下させていると認められた場合 には、国は地方団体に対する勧告及び勧告に従わない場合の地方交付税の減額等の措置を講じ得るものとしている(同法第20条の2)。この規定が発動された例はない。
(1)財源均衡化の機能
地方交付税は、その基準財政需要額及び基準財政収入額の算定方法を通じて、徹底した財源均衡化機能を発揮する。(地方譲与税・国庫支出金でもこの役割を付随的に果たす)
(2)財源保障の機能
地方交付税の最大の特色ともいえる。地方交付税法においては、地方交付税を「地方団体が等しくその行うべき事務を遂行することができるように国が交付する税」(同法第2条)と定義し、財源保障機能を明らかにしている。これは、地方財政全体を通じてのいわば総額としての財源保障に関する機能と、各地方団体に対する交付額の算定を通じての個別的財源保障に関する機能の2つの側面から考えられる。
@総額としての財源確保(国税5税)
地方交付税の毎年度の総額は、国税5税(所得税・法人税・酒税・消費税・たばこ税)の一定割合(後述)とされており、一般会計歳出の25%前後を占めている。この5税は国税の基幹的ないし有力な税目であり、多少の変動があるとしても、国税に対するリンク率を定めておけば、必要な地方財源は大局的には確保できるという考えに立脚している。また地方交付税の総額が地方団体の財源不足総額を相当下回るような事態が発生すれば、地方行財政制度の改正または国税に対する地方交付税のリンク率の変更を行うものしている(同法第6条の3第2項)。1975年以降、そのような事態になり、交付税特別会計において巨額の借り入れをし、84年以降は借り入れ方式を廃止し、交付税総額の特例措置を講ずることとなった。
A各団体毎の個別的財源保障(基準財政需要額)
個々の地方団体に対する地方交付税の財源保障機能は、各地方団体について算定した基準財政需要額が基準財政収入額を越える額、つまり一般財源の不足額を補てんすることによって果たされる。これによりどの地方団体も、一定水準の行政を実施するのに必要な財源を保障されることとなる。この場合、基準財政収入額として算定される標準的な税収入(地方譲与税のうち消費譲与税をも含む)については、道府県の場合には80%、市町村の場合には75%とされている。これは、@個性のある各地方団体のあるべき財政需要を一定の尺度で完全に補足することは不可能であり、したがって、その団体に固有な財政需要に充てるべき財源として、税収入の20あるいは25%を別にしておく必要があること、Aもし税収入を100%算入することになるならば、各団体における税源確保のための努力が無意味になり、財政運営の自律性を阻害することがその理由となっている。この税収入の20%あるいは25%の部分は「留保財源」または「自由財源」と呼ばれている。
基準財政需要額については、教育費・土木費といった行政項目毎に区分してそのあるべき財政需要額が算定され、また、基準財政収入額についても、各税目毎に標準的な税収入が示されるので、地方団体は、これを目安として、予算の編成や財政運営を行うことが可能となる。すなわち、地方団体における計画的な行政運営を保障する機能を備えているわけである。
(交付税の総額)=(所得税+法人税+酒税)×0.32+消費税×0.24+たばこ税×0.25
(普通交付税額)=(財源不足額)=(基準財政需要額)−(基準財政収入額)
(市町村基準財政収入額)=(標準的な税収入(地方譲与税のうち消費譲与税額をも含む))×0.75(都道府県は×0.8)+地方譲与税(消費譲与税を除く)
(都道府県基準財政収入額)=(標準的な税収入(地方譲与税のうち消費譲与税額をも含む))×0.8+地方譲与税(消費譲与税を除く)
(基準財政需要額)=「一般財源をもってまかなうべき財政需要額」=測定単位の数値×補正係数×単位費用
1)普通交付税
4月(1/4)、 6月(1/4)、 9月(残額の1/2)、 11月(残額)
2)特別交付税
特別の財政需要があったとき
12月(特別交付税総額の1/3以内)、 1月(特別交付税)
経費の種類 | 測定単位 | 単価(千円) | 補正の種類 | ||
都道府県 | 小学校費 | 教職員数 | 4,319 | 態容補正、寒冷補正 | |
中学校費 | 教職員数 | 4,329 | 態容補正、寒冷補正 | ||
市町村 | 小学校経費 | 経常経費 | 児童数 | 41.7 | 態容補正、寒冷補正、密度補正 |
学級数 | 700 | 態容補正、寒冷補正、数値急減補正 | |||
学校数 | 6,894 | 態容補正、寒冷補正、数値急減補正 | |||
投資的経費 | 学級数 | 530 | 態容(事業費)補正、寒冷補正、数値急増補正 | ||
中学校経費 | 経常経費 | 生徒数 | 35.8 | 態容補正、寒冷補正、密度補正 | |
学級数 | 886 | 態容補正、寒冷補正、数値急減補正 | |||
学校数 | 7,632 | 態容補正、寒冷補正、数値急減補正 | |||
投資的経費 | 学級数 | 530 | 態容(事業費)補正、寒冷補正,数値急増補正 |
単価の積算内容は表3−1(小学校・中学校)を参照のこと。
標準施設規模
児童生徒数 | 学級数 | 職員数(用務・給食) | 建物面積 | 校 舎 | 屋内運動場 | |
小学校 | 720人 | 18学級 | 6人(2人・4人) | 5,030u | 4,111u | 919u |
中学校 | 600人 | 15学級 | 4人(2人・2人) | 5,465u | 4,484u | 981u |
「教職員数」
当該年度の5月1日現在における、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数に関する法律」にもとづいて調査した数字。
@「児童数・生徒数」
学校基本調査規則によって調査した当該年度の5月1日現在の児童数・生徒数。
A「学級数」
学校基本調査規則によって調査した当該年度の5月1日現在の実学級数。
B「学校数」
学校基本調査規則によって調査した当該年度の5月1日現在の学校数(分校も独立の学校とみなす)
(1)普通態容補正に用いる地域区分(「普通交付税に関する省令」第11条)
・行政の質及び量の差による種地に係わる地域区分
a)甲地(1種地〜10種地)
ア.人口集中地区人口に係わる点数 イ.経済構造に係わる点数
ウ.宅地平均価格指数に係わる点数 エ.昼間流入人口に係わる点数
(1種地は200点未満の市、人口集中地区を有する町村及び広域行政圏の中核町村としてかかげるもの)
b)乙地(1種地〜10種地)
ア.甲地からの距離に係わる点数 イ.昼間流入人口比率に係わる点数
ウ.経済構造に係わる点数 エ.宅地平均価格指数に係わる点数
c)甲乙の選択
a)に定めるところにより甲地に該当することとなる市町村にあっては、市町村の普通態容補正係数を算定する場合における市町村の種類の区分は、該当する甲地又は乙地の種地のうち当該市町村の長が選択する種地とする。
(2)普通態容補正係数の算定
普通態容補正係数は、当該市町村の評点に「別表第1」のAに定める率を乗じて得た率と同表のBに定める率とを合算した率とする。合算した率が1.000に満たないときは、1.000とする。
(1)地域区分
@〜Bによって地域が区分されており、それぞれに補正率が決められている。
@給与の差による地域区分
国家公務員の寒冷地手当に関する法律別表、寒冷地手当支給規則別表第1の地域。
A寒冷の差による地域区分
B積雪の差による地域区分
(2)寒冷補正係数
@〜Cのそれぞれについて、給与差・寒冷度・積雪度に応じて補正率が定められており、[1+補正率(の合算)]で寒冷補正係数が算定される。
@児童生徒数にかかわる経常経費(給与差による寒冷補正)
A学級数にかかわる経常経費(給与差・寒冷度・積雪度による寒冷補正)
B学校数にかかわる経常経費(給与差による寒冷補正)
C学級数にかかわる投資的経費(寒冷度・積雪度による寒冷補正)
児童数・生徒数を測定単位とする経常経費・・・( )は中学校の数値
@前年の5月1日の4(6)km以上遠距離通学児童数(生徒数)×0.90(2.11)
Aスクールバス・ボート数×131.63(153.32)
B寄宿舎児童収容定数×5.73(6.68)
密度補正係数(小数点以下3位未満四捨五入)=(@+A+B)/児童数・生徒数
(小学校・中学校費のうち学級数・学校数を測定単位とする経常経費)
・急減補正係数の算式(小数点以下3位未満四捨五入) [下記数値+1]
{(B−A)×0.9+(C−B)×0.7+(D−C)×0.5+(E−D)×0.3+(F−E)×0.1}/A
5月1日現在の学級数又は学校数で、当該年度をA、前年をB、2年前をC、3年前をD、4年前をE、5年前をFとする。 (B−A)、(C−B)、(D−C)、(E−D)又は(F−E)が負数のときは、それぞれ0とし、Aが、B、C、D、E、Fのいずれよりも小さくないときは、(B−A)、(C−B)、(D−C)、(E−D)及び(F−E)は0とする。
(小学校費・中学校費の投資的経費)
算式 (B−A)÷B×5.77
A 5年前から前年までの各年の5月1日現在における学級数のうちの最大値
B その年の5月1日現在の学級数
1)12月分
<都道府県>
@小学校又は中学校の冬期分校が設置されたこと
前年度中に設置された冬期分校に勤務した教員数に冬期分校の設置月数(一月未満の端数は切り捨て)を乗じて得た数に186千円を乗じて得た額。
A小学校又は中学校の複式学級があること
当該年度の5月1日現在における複式学級について、次の算式によって算定した額の合計額
小学校 2,875円×A×12 (O県では134学級で4,623千円)
中学校 2,875円×A×24
A・・・2の学年の児童・生徒で編成する複式学級の数
<市町村>
@語学指導等を行う外国青年招致事業
(当該年度の8月1日現在の数)×5,450千円
A義務教育費国庫負担法第3条第1項(第3号を除く)に規定する施設の整備事業
元利償還金の額×0.7
B児童・生徒急増市町村の学校用地取得のための義務教育施設整備事業
元利償還金×0.6
Cスポーツ振興法第20条第1項第1号に規定する学校水泳プールの整備事業
元利償還金×0.3
D小学校・中学校の特殊学級があること
(5月1日現在の特殊学級の数)×(小学校53,400円、中学校47,000円)
E小学校又は中学校の統合が行われたこと
前年度の10月1日から当該年度の9月30日までの間に行われた統合によって減少した学級数又は学校数
(減少した学級数)×(小学校820千円、中学校800千円)
(減少した学校数)×(小学校1,910千円、中学校1,870千円)
F小学校又は中学校の冬期分校が設置されたこと
(冬期分校の児童数)×月数(1月未満切り捨て)×(小学校41,000円、中学校37,000円)
Gへき地における小学校又は中学校があるため特別の財政需要があること
3〜5級のへき地校(都道府県庁より200q以上の隔遠地市町村を除く)
完全(又は補食)給食実施校×(小学校1,880千円、中学校2,170千円)
2)3月
事情を考慮して決める額として
@産炭地域の市町村における要保護児童生徒・準要保護児童生徒に要する特別の財政 需要があること(O県には該当せず)
A児童生徒急増地域であるため、特別の財政需要があること
市町村の教育予算は@学校管理費A教育振興費B学校建築費から構成されている。しかし、後でも触れたいが、このほかの項目を別に立て予算書を構成しているところも数町村見受けられる。このため、各市町村の予算状況がどうなのかということが非常に分かりにくくなっている。
とりあえず、比較する第1段階として、各市町村の小学校費・中学校費の総額(一般財源部分)がどうなっているのかということを見ていきたい。「3.教育予算における基準財政需要額」で少し述べた「基準財政需要額」が地方交付税交付金の算定基礎になるので、それとの比較をしてみる。その前にもう一度「2.地方交付税交付金の役割」の説明を確認しておきたい。「基準財政需要額」は学校教育ではこのくらいの予算が必要であろうと国が定めたものである。その需要額に財政収入額が足らない部分を国が交付金として保障しようとするものである。したがって、財政収入が乏しいから学校教育予算が十分取れないのだ、と言うことにはならない。また交付金は地方公共団体に縛りをかけるものではないが、地方公共団体はその行政水準を維持する義務は生じている。したがって充足率が100%以下の市町村では、本来学校教育費に充当されるべき予算が、教育費以外のどこに回されているのか、追求していくことが必要になってくる。
学校管理費、教育振興費及び学校建築費の一部が不明な下記の町村については残念ながら充足率を見ることができなかった。学校建築がある市町村は充足率が高くなっている。建築費なしにもかかわらず、充足率が100%をこえている市町村もある。そこで建築費の影響を除いたらどうなるかを次に見てみよう。
学校建築費を除いた学校管理費と教育振興費の合計が基準財政需要額(投資的経費を除く)をどの程度充足しているかを検討する。
人件費(給食従事員・事務補助員)が学校費の中に入っていない町村は、どうしても充足率は低くなっている。それらの人件費は教育委員会費の中で一括して計上されているのだろう。したがって全体で判断するときには、この人件費がどのようになっているのか(学校費に計上されているか)を考慮しなければ一概に充足率だけで「もっと教育予算を」と要求することはできない。全体での充足率は低いが、基準財政需要額に占める需要費などの構成比率は他市町村とほぼ似たようなものになっている町村もある。
基準財政需要額との比較において学校費の中に計上されるべきものが計上されていなかったり、逆に計上しなくてもよいものが計上されていたりで、基準財政需要額の充足率の評価が非常にしにくい状況となっている。 そこで、各市町村の予算を比較しやすくするために「節」ごとに予算額を一覧表にした(一部のみ)。そして基準財政需要額に対する項・節の予算額の構成比率を「%」欄(縦横)に示した。これにより、一部の予算が抜けていたり加わっていても、他の町村と比較がしやすい。またどの項目によりどの程度充足率を上下させているかもはっきりする。ただ、「節」内の予算額は一般財源以外のものも入っているので、国庫支出金に関係するもの(工事請負費・負担金等)については十分注意しなければならない。
先に述べたように基準財政需要額の対象となるもので学校費の中に計上されていないものがある。次の@〜Bなどである。
@給食従事員及び事務補助員の賃金(「給料」「職員手当」)
このほかにも、授業嘱託等の市町村費の教員の給与のみを計上して校務員・給食調理員の給与を学校費の中に計上していないのではないか、と推測できる町村もある。給食従事員及び事務補助員の賃金が他の項にいくと、表5−2の「2.給料」等の%の欄からから20〜30%以上は充足率が変わってくることが予測される。
A学校医・歯科医・薬剤師への「報酬」(1校当たりの総額985千円)
このほかにも、「報酬」に学校医等の報酬ではなく英語助手の報酬を計上している町村も何校か見られる。
Bスクールバス・寄宿舎の経費
予算書の中にスクールバス・寄宿舎などの明記がなくて、十分につかめなかったところもある。スクールバス等の経費については表7−4に確認できたものをまとめている。これらの額が基準財政需要額の数%〜43%占めている。基準財政需要額の20%台がYB町・中、KG町・中、OH町・中で、YN町は実に43.5%占めている。学校費の中ではなく、旭町や新庄村のように他の項にまとめている町村もある。したがって細かく分析するなら教育予算全体で十分な検討が必要になる。また、HR中のように「寄宿舎」があるところは、表5−2から基準財政需要額の50数%(建築がかかわっている)占めている。
以上@〜Bは、たぶん教育総務費とかその他の項を市町村独自に立て、その中に一括して計上されているものと思われる。したがって、より正確に基準財政需要額と比較する場合には、教育費の予算も検討しなければならない。ただ、それらの賃金部分を除いても、充足率が妥当なものかどうかは、もう少し分析を必要とする。
今回の分析では、地方交付税交付金の中でも「普通交付税」を対象とし、市町村の予算の中でも「一般財源」を対象としている。一覧表の中でもこの対象外のものがある。
@「中学校費」の中の「外国青年招待招致事業費」
表5−2の中でOT町、SK町、YN町などに外国青年招致事業の費目が見える。
また、表の左の欄に「☆」で示した町村は外国青年招致事業(英語助手)を行っており、よく見ると「報酬」「給与」などの欄に360万円程度の額が共通して見えてくる。しかし、「3.教育予算における基準財政需要額」の「4.特別交付税」の箇所で「外国青年招致事業」については545万円の特別交付税が12月に交付されることがわかる。これは普通交付税とは別である。したがって普通交付税の基準財政需要額と市町村の予算を比較するときには、英語助手の報酬等の545万円前後が過大評価されてしまうことになる。英語助手の経費がどの程度占めるかは、表5−2のOT町・SK町の「外国青年」の「%」の欄から基準財政需要額の5〜9%程占めていることが分かる。つまり、英語助手がいるために、他の市町村よりも充足率を5〜9%高めることになる。これが中学校費に計上されている市町村があれば、その額を減額してから表4−2を検討しないと比較が間違ってくる。 しかし、YN町のように英語助手(兼務)がいても旅費等のみの支給であればそれほどの影響は与えない。
教職員にとって毎日の学校生活の中で欠かせないのが、備品購入費と需要費にかかわるものであろう。今回備品購入費よりも需要費に注目してみたのは、「わら半紙代」の父母負担のことが気にかかったからだ。また光熱水費については、学校で行っている夜の社会体育の電気代などが皆学校の負担になっている実態があり、学校費の中に入ること自体おかしいという意見があり、追加した。
表6−1〜2に一覧表を作った。これは表3−1の「地方交付税交付金の積算内容と単価」(厳密にいうと「基準財政需要額の積算内容と単価」である)で示した需要費・消耗品費・燃料費・光熱水費の単価をもとに予算の充足率を計算したものである。
総額としての需要費の充足率がどうなっているのかは、表6−1〜2の右端の@の欄を見てほしい。ここを見るとどこの市町村とも、基準財政需要額をはるかに上回っている。そんな中で充足率が100%に達していない町村もある。
《小学校》最高はAB村の632%である。
200%以上 25市町村中10町村に及んでいる
100%以下 25市町村中 3町村
《中学校》最高はKM村の467.6%である。
200%以上 25市町村中 6町村に及んでいる
100%以下 25市町村中10町村
《小学校》
300%以上 25市町村中13町村に及んでいる(500%以上が3町村)
200%〜 8町村
150%〜 3町村
《中学校》
300%以上 25市町村中 5町村に及んでいる(500%以上が3町村)
200%〜 6町村
150%〜 3町村
100%〜 6町村
小学校のほうが中学校より全体的に充足率が高くなっている。この消耗品の中には教師用指導書もかなり含められている。92年度は小学校の教科書が新しく採択された年でもあり、その関係で消耗品費の充足率が高くなっているとも予測される。疑問が出されたのは、このような教科書の採択という特別の年度には、国からの何らかの財源措置が行われるのか、ということであった。
《小学校》
300%以上 25市町村中9町村に及んでいる(500%以上が2町村)
200%〜 5町村
100%以下 6町村
《中学校》
300%以上 25市町村中6町村に及んでいる(900%以上2村、500%以上が2町村)
200%〜 2町村
100%以下 6町村
北部山間地の小規模校が軒並み高くなっている。また、暖房器具・校舎の違いによる差もある。小規模・小人数の学校でも各教室を暖かくするために暖房がいる。それは教室単位で必要なものであり、「児童・生徒数」だけを測定単位としては不十分である。基準財政需要額の積算内容では、「学級数」を測定単位とするものは「消耗品費」であり、「学校数」を測定単位とする「需要費」が「6万円」というだけだ。
《小学校》
800%以上 25市町村中 1村
100〜200%〜 14町村
100%以下 10町村
《中学校》
300%以上 25市町村中14町村に及んでいる(1,000%以上2町村、500%以上が4町村)
200%〜 4町村
100%以下 0町村
光熱水費は圧倒的に中学校が高くなっている。これは部活とともに、夜間の社会体育の関係によるものと考えられる。
需要費関連の予算は、小学校のほうが中学校より大きな予算が計上されている。予算書を見ていると教師用の指導書を「消耗品費」としているところや、「備品購入費」としているところもある。各町村で充足率が大きく違っているので、さらに細かく調査してみることが必要だ。しかし需要費の各費目がどれも低い充足率である市町村もあるので、「わら半紙代」確保のためにも、もっと要求をしなければならないだろう。 需要費についてのみの充足率を計算してみると、全体的にかなり高い。これは必要なところに十分つけているという面と、基準財政需要額の単価があまりにも低く押さえられている面とがある。後者については、特に燃料費、光熱水費などで見られるように基準財政需要額の10倍以上の予算が必要という町村もあり、単価が引き上げられなければならないところは多くある。
県北のM地区には多くの小規模校があり、この数年で統合されてしまった小・中学校が10校近くある。「統合は損か得か」と一概に言えない。しかし、今後も統合がすすめられることは十分予想もされるし、その後の教育条件がどうなるかを考えることは必要である。地域のシンボルが失われ、お金だけはかかるが、本当に子どもたちのために使う予算は以前よりも減ったということではいけない。市町村に交付される交付税が統合によってどのよう変化するのかを追求してみたい。
92年4月に小学校5校が統合したA町の小学校費の基準財政需要額を考えていきたい。
@児童数・学級数は地教委からの資料(数年先の児童数まで確認)を基に想定する。(表7−3)
A遠距離通学者は91年度のものを参考にして、児童数全体の変動に併せて、大まか な数値をいれ、補正値を計算した。(表7−1)
B投資的経費の補正係数は91〜93年度のものは決定値をいれたが、他の年度は事 業費補正(態容補正の欄)をすべて0.000として計算した。94年度からは事業費補正も0に限りなく近づくものと予想できる。
表7−1は今の児童数などから今後の補正係数などを予測したものである。その中でも補正係数で一番変化しそうな「数値急減補正」のみを算出し、それに92年度単価で今後99年までを予測したものである。
《予測結果》
@統合の92年度から93年度までは統合した方が、児童数・学級数の急減補正など で、統合しなかった場合よりも多い。
A94年度からは、急減補正の効果が薄れ、統合しなかった場合の基準財政需要額の 方が上回る。これは統合しなかった場合の学級数・学校数の効果の方が上回るから である。
B統合によって投資的経費の部分がいくら増えたとしても、純粋に学校教育費に反映 されるものではないと考えられる。つまり借入金の返済に使用されるものであろう。
C統合したためにスクールバスの運行が不可欠となり、4台(中学校と合わせれば8 台9路線)が必要となり、そのための費用が職員の給料等とバス維持費で3〜5千万円(91〜93年度決算額)が支出されている。このくらいの通学措置費があれば、同程度かもう少し大きな学校規模の町の学校費が十分賄える規模である。
Dまた、統合によってスクールバス運営のために多額の費用が必要となると、町財政や学校費を圧迫していくことにつながる。学校統合は国にとって「安上がり」であっても市町村にとってはその逆になることを示しているのではなかろうか。スクールバスを運行していても、長く経過して行けば統合時点での町当局と保護者との確認事項も薄れ、民間委託とか保護者経費一部負担(受益者負担)などに条件が悪化していった町もある。
小規模の学校が統合されることによって多くのメリットもあるだろうが、その逆にデメリットもある。市町村が数校の学校を維持していくのは負担が重いと判断して、学校を統合しようとするのなら、この予測からしても統合すべきではないだろう。県北には多くの小規模校が存在するけれども、これらが単独校として地域の文化拠点となり続けることを切に願う。
M地区の市町村の教育予算を地方交付税交付金の算定基礎となる基準財政需要額について、@総額として充足率を比較し、A市町村の予算項目の構成比率を基準財政需要額をものさしにして数市町村を比較し、B需要費については積算内容から単価を計算しそれぞれについて充足率を比較する、という3つの方法にとりくんだ。
それぞれについて、十分な考察を加えるというところまでいっていないが、教育予算総額に対する充足率だけでは各市町村の比較は、不十分な資料しか提供してくれない。予算の中に給料部分が計上されていなかったり、中学校では外国青年招致事業の有無によってかなり変わった数値になってしまう。やはり各市町村の予算書に当たって、どの項目にどの程度の予算がついているのか、など細かく分析をしなければならない。
細かく分析する項目としては、やはり、備品購入費とか需要費とくに消耗品費などは重要な項目である。今回の分析は備品購入費については全く手が付かなかった。というのも、予算書の中だけではどんな備品購入をしたのかということまで説明していない市町村が多く、分析の手掛かりがなかった。消耗と備品の範囲も各市町村でかなり違っている。
今回のレポートの中で、一番印象深いのは、統合にかかわるところである。表面的には多くの子どもたちが集まり、学習に張り合いが出るとか、幅広い経験ができるなどと言われているけれども、行政からの真のねらいは別のところにある。少なくとも、統合を推進する文部省・県教委・地教委は、「教育の安上がり」を目指しているのではないか。文部省・大蔵省からすれば、地方交付税交付金は統合後2〜4年で浮かすことができる。学校や学級が少なくなれば、教職員の配置数も少なくてすむ。財政学の専門家に言わせると「統合は経費節減が目的」とはっきり断言する。そういう中で、地域住民・教職員が同統合に反論し、地教委がそれを支持してくれるかである。地教委までも統合に賛成していくと、安上がりを考えた地教委・行政当局もスクールバス等でかえって多額の経費が必要になっていく。そして何年かすると、スクールバスが維持できなくなり、保護者の負担に負わせられてしまうことになる。現実にそのような学校もある。保護者の方も、統合の時期の人達はいなくなり、「受益者負担」を受け入れてしまうことになる。
1)予算の分析について
今回は、M地区を中心とした分析に終わっているが、組織的に全市町村の予算分析をする態勢をとる必要がある。補正係数がある以上、一括してそれらの数値を入手することから始め、各市町村の『予算書・説明書』を入手していくことはぜひとも必要である。それらの資料を元に、全体の比較や、個々の需要費(消耗品費)・備品購入費などの分析を行っていく組織的なものが必要である。
93年度から新たに交付税の積算内容に「学校事務機器」(小学校1校当たり76,300円、中学校1校当たり99,800円)と「学校図書館図書」(小学校1学級当たり9,917円、中学校1学級当たり24,800円)がついている。このような具体的なものが、各学校にきちんとつき実行されているのか。各分会で確認していかなければならない。表3−1に示した内容のものがついているのかどうか、チェックすることがぜひとも必要である。
2)予算要求についてのとりくみ
事務職員・栄養職員の義務教育費国庫負担制度堅持の請願のとりくみを毎年行っている。もうこれ以上、しなくてもよくなるような文部省のき然とした「堅持させます」という姿勢が望まれるところである。
身近なところでも、学校、市町村段階での教育予算増額のとりくみをすることが求められる。多くのところでこのようなとりくみは行われているだろうが、予算増額の根拠となるものも必要であろう。そのために、1)で述べたような予算分析が一つには必要である。地方交付税の積算内容を幅広く分かりやすく知らせることは、基本的に必要だ。また他方では、学校に必要なものは予算化させていく、というとりくみを忘れてはいけない。必要だから予算をつけるのであり、過去の予算のうえに、新たに必要な予算をつけさせるという「教育予算増額」のとりくみが求められるのである。
市町村の予算は以上だが、それでは県では何をするか。県も市町村と同じように、教育予算の分析をし、国庫負担金や地方交付税交付金から考えて、十分な予算がつけられているのか。管理職などを厚く配置し、その分、教諭・養護教諭・事務職員の配置を少なめにしている今の状況を、改善させるとりくみが必要である。第5次定数改善が92年度で完結したと言われる中、O県の地ではまだまだ、完結を求めていくことが必要である。