7,注射と点滴について
風邪の季節になりました。今では少なくなりましたが、「風邪の注射をしてほしい」と来られる方が、未だにおられます。
風邪の注射とは、解熱剤の注射でして、熱があるときには少し下げることは出来ますが、風邪を根本的に治すことは出来ません。あくまで対症療法にすぎません。注射は、薬を急いで効かせなければならないとき、内服では良く効く薬が無い場合などやむを得ず使用するものです。熱も30分ぐらいかかって下げても良い場合は、内服や座薬で十分です。特に、子供では、以前には、大腿四頭筋短縮症といって、筋肉注射から障害が残ったりする場合もありましたので、むやみに注射はしない方がいいのです。
点滴は、栄養の補給になると思われていますが、そうではありません。点滴の第一の効用は、水分の補給であり、脱水の治療です。下痢がひどいときや、嘔吐で飲み物も受け付けない場合、脱水でアセトンという物質が体に溜まり、体が酸性になります。このような時は、よけいに吐き気がひどくなってきますので、点滴で脱水の治療をすると非常に効き目があり、楽になります。ですが普通、外来でする点滴は、500mlの大きな瓶のものでも100〜200kCalしかなく、カロリーにすると小さめの、あんパン1個分ぐらいのものです。
痛い目をして、点滴注射をしなくても、経口補液といって、スポーツドリンクの様なものを飲んで頂く治療もあります。市販のスポーツドリンクは、飲みやすくするために、塩分を控えてありますが、これに少量の食塩を加えると、非常に治療効果の高い治療液ができます。これも、スポーツドリンクでないとだめ、といったものではなく、ジュースでもお茶でも構いません。要は、水分が補給できればよいのです。
嘔吐下痢症などで脱水になっているときには、この様な水分をこまめに(特に水分を摂りたがらない小児にはスプーンで飲ませるように)するといいです。水分を摂ったからといって、下痢がひどくなることはありません。