16,レントゲンって大丈夫?


○ レントゲン検査でわかること

 ドイツで1895年にウィルヘルム・コンラッド・レントゲン博士が真空放電管の電極から何か目に見えない光のような物が出ていて、物質を突き抜ける不思議な性質があることを発見し、これをX(エックス)線 と名づけました。このX線を使って、骨や造影剤を使って消化管や血管、さらにはCT(コンピューター断層撮影)で様々な内蔵など体の中の状態を正確に検査することが出来ます。 胃のレントゲンでバリウムを飲むのは、そのままでは写らない胃袋を造影剤で映し出すわけです。  

○ レントゲンの被ばくは大丈夫?

 日本人は、1年間に平均2.1mSv(ミリシーベルト:線量当量の単位)という放射線を浴びています。これに対して、胸部のX線撮影では、0.06〜0.3mSvの被ばくとなり、胃のレントゲンでは、3〜4mSv、 注腸レントゲン 4〜6mSv、頭部CTで0.5mSv、腹部CTでは3〜6mSv、核医学(RI)検査で4mSvの被ばくとなります。放射線を全身にどのくらい浴びると、どんな害があるのかというのが以下の表です。
放射線量 [mSv]
症状
250以下

医学的検査では症状が認められない

250

白血球が一時的に減少する閾値

500

白血球が一時的に減少し、やがて回復

1000

吐き気、嘔吐、全身倦怠、リンパ球激減

1500

50%の人が放射線宿酔(二日酔いのような症状)

2000

5%の人が死亡

4000

30日以内に50%の人が死亡(←ヒトの半致死線量)

6000

2週間以内に90%の人が死亡

7000以上

100%の人が死亡

 従って、250mSv以下では、症状は出ないことになりますが、安全も考えて放射線業務に従事する人が1年間に 浴びても良い放射線許容線量は50mSv以下とされています。国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告では、どんなに低い線量当量でも高い場合と同様にガンになる確率に 影響すると考え、原子力発電所などから一般の公衆が受ける人工放射線の被ばくは1年に1mSv以下にするよう勧告しています。この線量限度は 医療機関で受ける医療被ばくには適応されません。また、赤ちゃんに放射線が原因で奇形が発生するには少なくとも100mSvが必要とされています。
 従って、医学的に「病気の診断・治療に不可欠な検査であり、患者さんにとって利益が危険を大きく上回る」ときのみ行われることになっている通常のレントゲン検査は、 一般に安全で、過度に恐れる必要はありません。
 しかし、不必要な被ばくは出来るだけ避けるに越したことはないわけで、レントゲン検査に関して、疑問がある場合は 遠慮なく、医師や放射線技師に申し出て下さい。医師には説明する義務がありますし、「正当化」と「最適化」に十分配慮しなければなりません。

○ 放射線治療では

 ガン細胞などをやっつける放射線治療では、局所的に60,000mSv程度の桁違いに大量の放射線をかけてガンの治療を行います。診断のために検査としてつかわれるX線 とは違いますので、混同しないで下さい。

10日規則に気を付けて

 これは、妊娠可能な年齢の女性の下腹部へのX線照射は、月経開始から10日以内に実施するべきだとするもので、この期間は胎児がいないはずだからです。 仮に妊娠していたからと言っても、過剰な放射線恐怖症による人工中絶なども慎むべきですので、心配な場合は、医師に相談してみて下さい。


目次へ   to home