18,死について
○ 死の三徴
人が、「死んでいるかどうか」を判断するのには、従来から3つの徴候がそろう必要があるとされています。
- 呼吸停止(息が止まっている)
- 心停止(心臓が動いていない)
- 瞳孔散大(黒目が広がっている)
この3つがそろって死亡を確認するのが従来の方法でした。
○ 脳死とは
「脳死」とは、脳の部分的な機能停止でなく、脳全体の機能が停止し元に戻らない状態をいいます。このとき自発呼吸はありませんが、
心臓は自動能といって自分だけで動く力がありますから、人工呼吸器をつけて息をさせてあげると、心臓が止まるまで数日の間
生き続けることが出来ます。
この、心臓の自動能だけで生きている状態を脳死と言います。1997年10月に成立した「臓器移植法」では、移植時に限り脳死状態をもって人の死と判断しても
良いことになりました。ですから、まだ血液が流れている新鮮な状態の臓器を移植に使うことが出来るわけです。
法律では、脳死をもって人の死とできる事になりましたが、暖かい血液が流れているうちは、死亡と認めたくない感情や考えもあります。99年3月の朝日新聞の世論調査では、
脳死を人の死と「認める」51%、「心停止に限るべきだ」37%、「その他」12%で、国民的な合意はまだ十分に得られてはいないようです。
臓器を提供したい意向を示すドナー・カードと同時にノン・ドナー・カードというものもありますから、脳死で臓器を提供する意志の有無をはっきりとしておいた方が良いとも言えます。
○ 4つの側面
アルフォンス・デーケン教授によると、生物学的な「死」の他に、死には4つの側面があるといいます。
- 第一に、心理的な死。生きる意欲が一切なくなったら、肉体的に死ぬ前から死んでいるのも同然です。
- 第二は、社会的な死。人間は社会的な生物ですから、子供が来なくなれば、お父さん・お母さん・おじいさん・おばあさんはひとりぼっちになって、社会的に死んでしまいます。
- 第三は、文化的な死。文化的に潤いがなければ、ただ生きているだけであって、人間的に生きているとは言えません。
- 第四は、肉体的な死。医学・医療の進歩により、日本人の平均寿命は世界一となりました。それはすばらしい事ですが、肉体的に長生きすることが、必ずしも人間らしく最後まで豊かに生きることにはならないこともあります。
一日々々を元気良く、健康に長生き出来るよう、生協班会での健康チェックや各種の健診も重要ですし、生き甲斐と潤いのある文化的な生活が出来るよう精神的な衛生環境にも気を配るべきと言えるでしょう。
友人・知人との語らいや自分の趣味を豊かに持つこと、また家族や親戚とも仲良く暮らせるよう努力や工夫を重ねることも大切です。