19,体によいビタミン


○ ビタミンとは

 ビタミンの語源は、生命に必要なアミンという意味で、1912年にポーランドのフンクが名前をつけました。新しく発見されるたびにアルファベット順に名前が付いたのですが、 重複や間違いがあったりして、今のように飛びとびになったのです。また、化学名で呼ばれるようになったものもあります。
 ビタミンは、炭水化物・脂肪・タンパク質・ミネラルと並んで5大栄養素の一つです。そして、他の栄養素が体の中でうまく利用できるように 潤滑油のような働きをしています。ビタミンは、体の中で作り出すことができないか、できても必要量に満たないため、外から食べ物として摂取しなければなりません。  ビタミンとして、13〜15種類のものが知られています。

○ 主な水溶性ビタミンの働き

 ビタミンの中でも、最も不足しがちなのがビタミンB1です。脚気(かっけ)とまでは、いかなくても、足がだるい、肩こりや頭が重い、手足がしびれる、疲れやすいなどと言った潜在性のB1不足の人は結構いるようです。お酒を欲のむ人もB1が不足しがちで「ウェルニッケ脳症」になる場合もあります。 インスタント食品、ジュースやスナック菓子などばかりでも不足してきます。部活動などで、激しいスポーツをする人の場合、通常の10倍もビタミンB1が消費されるともいわれています。
 ビタミンB12や葉酸が不足すると貧血になります。この貧血は鉄分を補給しても全く効かないので、昔は「悪性貧血」と恐れられました。しかし、原因がビタミン不足と判ってからは、治療可能なものとなっています。
 ビタミンCは、コラーゲンの合成を促進しますので、血管や関節を強くして、皮膚に抵抗力をつけます。風邪の予防やがんの予防に有効だとする報告もありますが研究中です。熱に弱いビタミンで、ほうれん草を3分間ゆでると、半分に減ってしまうと言われています。イモの場合は40分蒸しても4分の3が残っていると言われます。 ビタミンの中でも最も壊れやすいものですから、うまく調理して上手に摂るようにしたいものです。

○ 水溶性ビタミンの働きと欠乏症

 ビタミンは、欠乏症と過剰症がありますが、水溶性ビタミンは、多すぎるときは尿中に排出されますので、欠乏症のみが知られています。また、水溶性ビタミンは、体に貯めておくことが出来ないので、毎日少しづつ摂取する必要があります。
名前(化学名) 働き 欠乏症 多く含む食品
ビタミンB1
(サイアミン)
糖分をエネルギーに変える 脚気(疲労、食欲不振、手足の痺れ)
ウェルニッケ脳症、多発性神経炎・神経障害
イライラなど情緒不安定
米ぬか、胚芽精米、玄米、納豆、豆腐、ニンニク
豚肉、レバー、落花生、枝豆、のり、ごま
ビタミンB2
(リボフラビン)
脂肪を燃やす、
成長・発育促進
結膜炎、口内炎、脂漏性湿疹
疲労、倦怠感
レバー、チーズ、牛乳、卵黄、納豆、ほうれん草
小松菜、肉類、魚卵
ビタミンB6
(ピリドキシン)
タンパク質の代謝を助ける けいれん、皮膚炎、貧血、末梢神経炎
(欠乏はまずない)
レバー、魚、牛乳、大豆、卵、麦、トウモロコシ
ビタミンB12
(コバラミン)
赤血球をつくる 悪性貧血(大人に多い) レバー、肉類、牛乳、チーズ、魚介類
ビオチン アミノ酸や脂肪酸の代謝 脂漏性皮膚炎、湿疹、不眠、脱毛 レバー、胚芽米、ナッツ、酵母
ナイアシン
(ニコチン酸)
糖質と脂肪を燃やす、
皮膚や消化器を正常に保つ
ペラグラ(皮膚炎)、下痢、食欲不振 レバー、肉類、魚、椎茸、牛乳、大豆、小麦
のり
パントテン酸 脂肪酸を燃やす 末梢神経麻痺、消化器障害 レバー、肉類、魚、牛乳、納豆、胚芽米
葉酸 赤血球をつくる 悪性貧血(子どもに多い) レバー、牛乳、ほうれん草など緑葉野菜
ビタミンC
(アスコルビン酸)
細胞をつないでいる
コラーゲンを作る
壊血病(紫斑性出血、倦怠感など)
=昔の船乗りの病気
いちご、オレンジ、レモン、ミカン、トマト
ホウレンソウ、ピーマン、ブロッコリー

○ 主な脂溶性ビタミンの働き

 脂溶性ビタミンは、脂に溶けやすいので、脂ものと一緒に食べると吸収が良くなります。
しかし、取りすぎた場合は、体に蓄積してゆきますから、過剰症にならないよう注意が必要です。
 ビタミンAは、動物性のカロチノールと植物性のカロチンがあります。両方を摂ると良いと言われています。過剰に摂りすぎると頭痛や吐き気がします。
 ビタミンDは、カルシウムの吸収を良くしますので、骨粗鬆症の治療に使われます。過剰に摂るとカルシウムが増えすぎ腎臓結石になったりもします。
 ビタミンEは、動脈硬化を予防する働きがあって、老化を防止すると言われています。過剰症の心配はあまりありません。
 ビタミンKは、凝固因子という止血作用のある物質を作るのに使われますから、ワーファリンという抗凝固剤(血液の流れを良くする薬)を 治療として飲んでいる場合は、取りすぎるとその薬の効き目が無くなることになります。

名前(化学名) 働き 欠乏症 多く含む食品
ビタミンA
(レチノール)
視覚作用、発育・成長に関係 夜盲症、免疫能の低下
皮膚の乾燥・角化、眼球乾燥症
レバー、うなぎ、卵黄、バター、マーガリン
ニンジン・カボチャなどの緑黄色野菜、のり、ワカメ
ビタミンD
(カルシフェロール)
カルシウムの吸収を助ける 骨軟化症、骨粗鬆症、小児のくる病 レバー、サバ、イワシ、しらす干し、カツオ
マグロ、煮干し、シイタケ
ビタミンE
(トコフェロール)
末梢血管拡張
不飽和脂肪酸の酸化防止
しもやけ、しみ、動脈硬化 胚芽精米、ホウレンソウ、レバー、牛乳
落花生、アーモンド、牛・豚肉、卵黄
ビタミンK
(フィロキノン)
血液止血・凝固作用 出血傾向 レバー、チーズ、キャベツ、ホウレンソウ、ニンジン
海藻、枝豆、納豆、パセリ

○ ビタミン剤は必要か

 確かに、ビタミン欠乏の場合にはビタミン剤は薬としての働きがあります。しかし、ビタミンは本来食品に含まれているものですから、厚生省も現在では「食品」の扱いとしています。従って、特別な場合を除き 医療機関での保健適応がありません。レバーなどビタミンの豊富な食べ物をしっかり摂れば、わざわざ薬として飲まなくとも良いものです。天然・自然の食品の方が多くのビタミンがバランス良く含まれていると考えた方が良いと思います。
 ですが、激しいスポーツや妊娠・授乳など体力を消耗したと考えられる場合には補給を考えても良いかも知れません。
 液体のドリンク剤は、吸収が速いのですが、割高でもあり、アルコールやカフェインが入っていることも多く注意が必要です。錠剤は、割安ですが、たくさんのむほど効くと言うものでもありません。 いずれも用法・用量を守って使用することが大切です。

目次へ to home