27,骨とカルシウム


○ 骨粗鬆症と骨折

 人間の体は、固い骨が心棒となって、回りから筋肉や靭帯で支えられて成り立っています。骨のカルシウムが少なくなって、骨に鬆(す)が入ったようになり脆く折れやすくなってしまう病気が「骨粗鬆症」です。この骨粗鬆症になっている人は、日本人で1000万人、年に10万人が大腿骨頚部骨折(太ももの付け根の骨折)で入院となり、そのうち40%の人は退院できず、骨折後1年以内に10〜20%がそのまま死亡しています。

○ カルシウムはどのくらい取ればよいか

 日本人の成人が、1日に必要とされているカルシウムは、600mgとされています。しかし、食品栄養調査によると、平均カルシウム摂取量は568mg、20歳台の若年女性では496mgとさらに少なく不足しています。思春期・青年期には700〜900mg、授乳期には1100mgが必要と言われています。カルシウムの吸収を良くするビタミンDと合わせて、若いときからしっかりとカルシウムを取ることが骨粗鬆症の予防にとって重要です。

○ 骨粗鬆の診断基準

原発性骨粗鬆症の診断基準(1996年度改訂版)

YAM:20〜40歳の若年成人平均値
注:骨密度量は原則として腰椎の骨密度量とし、腰椎骨密度量の評価が困難な場合にのみ橈骨、第2中手骨、大腿骨頚部、踵骨の骨密度を用いる。骨萎縮とは radiographic osteopenia (X線上骨量減少)に相当する
T、X線上椎体骨折を認める場合
低骨量[骨萎縮度T度以上、あるいは骨密度量が若年成人平均値(YAM)
の80%以下]で非外傷性椎体骨折のある症例を骨粗鬆症とする
U、X線上椎体骨折を認めない場合
脊椎X線像 骨密度量
正常 骨萎縮なし YAMの80%を超える
骨量減少 骨萎縮度T度 YAMの80〜70%
骨粗鬆症 骨萎縮度U度以上 YAMの70%未満

○ 骨粗鬆症の予防と治療について

 中年以降は、男女とも骨のカルシウムは少なくなってゆきます。特に、女性の場合は、閉経を境にして急速に骨塩量が減少します。ですから、若いうちに出来るだけ多くのカルシウムを骨に貯金しておくことが重要です。若い女性の極端なダイエットなどは、若いうちから骨粗鬆症になってしまう場合もあり、注意が必要です。
 治療には、飲み薬や注射を使います。代表的な薬は、カルシウムの吸収を良くするビタミンDの薬です。その他にも、カルシウムを補給したり、骨が溶けてゆくのを防止する薬などがあり、患者さんの状態に応じて薬を使い分けてゆきます。

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