29,体脂肪について


○ 体脂肪を計るには

 前回、肥満のお話をしました。肥満とは体脂肪が増えすぎている状態ですから、体脂肪の量を正確に測れると肥満の診断は可能です。しかし、これはかなり難しい事なのです。市販の「体脂肪計」は、どのような原理で作られているのでしょうか? 人間の体は、電気を通す水分や筋肉と電気をほとんど通さない脂肪などでできています。このために体脂肪が増えて水分の割合が減ると電気抵抗(インピーダンス)が大きくなります。このことを利用して体に ごく弱い電気を流し、体脂肪を計算して出す方法を「生体電気インピーダンス法(Bioelectrical impedance法)」といって、市販の器械はほとんどこの方法を使っています。妊娠していても、とくに問題のない程度の弱い電流ですが、妊娠中は誤差が大きくなるので、あまり参考になりません。また、心臓ペースメーカーを使っている人は、使用を控えた方が良いでしょう。
 実際には、両手を前に出して両手でグリップを握るもの(カード型のものをつまんで測るものもあります)、体重計と同じように素足で器械の上に乗り測るもの、体重計に乗った状態で片手でグリップを握るものなどがあります。 いずれも、かなり誤差が大きなものです。手や足の汗のかきぐあいや、食事の影響なども受けます。
 その他の、体脂肪の測り方としては、1.皮下脂肪測定:いわゆる皮下脂肪をつまんで測るキャリパーや近赤外線、超音波などで皮膚表面から皮下脂肪を測定する方法。2.ヒトを水槽に沈めヒトの比重を測って体脂肪を測定する方法(水中体重法)。3、密閉した検査装置の中に無害なガスを充填してその中にヒトを入れて体積を測定する方法(空気密度法)。4、二種類のエネルギーの異なるX線を当て、それぞれのX線について組織の吸収量が違うことから測定する方法(DEXA法)などがあります。いずれにしても、現在の技術では、真に正確な体脂肪率は、計測が困難です。

ですから、体脂肪率計は、正確な数値を求めようとするのではなく、体脂肪の変動の傾向をチェックするために使うのが正しい使い方です。 そのため、出来るだけ同じ器械で同じ条件の時に測るようにした方が、役に立ちます。


○ 体脂肪率計の使い方

 まず、以下のような場合には、本来の体脂肪率とは大きな差が出ることがあることを覚えておいてください。

時間帯でいうと、下記の

状態の安定している時間   

の時間帯で測定してください。食事や入浴から2時間以上あけて食事または就寝の前までです。体重計の付いた、足で測るものでは、午前より午後の方が体脂肪は低く出ることが多いようです。これは、主に水分の分布の変化によるもので、午後の方がより正確と考えられており、寝る前の測定を薦めているメーカーもあります。

 時刻  06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22
 行動 起床 朝食 昼食 夕食 入浴 就寝

 手で測るもの、足で測るもの、手と足で測るものではかなり数値が異なることがあります。これは、測定の原理からして仕方のないことで、どれが本当の正しい数値かという事も言えません。手で測るものは上半身の肥満がわかり、足で測るものは下半身の肥満がわかるというものでもないのです。

○ 標準の体脂肪率は

性別適正範囲  肥満
 30歳未満30歳以上 
男性14〜20%17〜23%25%以上
女性17〜24%20〜27%30%以上
東京慈恵会医科大学・健康医学科のデータによる

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