さらに、詳しい癌の情報を得たい方は、国立がんセンターのページへ
@寿命がない:不死化=癌の細胞はテロメラーゼで染色体の端にあるテロメアと呼ばれる部分を伸ばしてしまいます。テロメアは、ふつう細胞分裂を繰り返すたびに短くなって、ついには分裂が出来なくなってしまうもので命のローソクのような物ですが、癌細胞ではこれがどんどん延びるので死
なくなってしまうのです。
A転移する:もとの組織から離れて、リンパ管や血管を伝わり飛び火します。これが癌が治しにくい原因の一つです。
B周囲の組織に浸潤する。:直接まわりの組織に染み込むように広がって行きます。ですから手術の時には、癌そのものだけではなく、周りの組織も安全域を見込んで切り取ります。
遺伝子異常をおこさせる物質(変異原物質)を「イニシエーター」といい がん細胞を増殖させる物質を「プロモーター」と呼びます。「イニシエーター」には 放射線や紫外線・ウィルス・魚の焼け焦げなどがあり、「プロモーター」には 女性ホルモンや胆汁酸・高塩分・タバコ・人工甘味料・農薬(DDT・BHC)・PCBなどが知られています。
生活習慣や食物などを広く「環境」とすると癌の95%は環境要因によるとされています。特に食物と喫煙で癌の2/3が発生すると推定されています。
癌の原因の寄与割合(Dollらの推計、1981年)
発ガン促進要因 | 抑制・予防要因 | |
---|---|---|
アルコールの飲み過ぎ やけどするほど熱い食べ物や飲み物 低栄養 |
食道癌 | 野菜(緑黄色野菜)・果物 高栄養 牛乳・乳製品 |
喫煙 大気汚染 粉塵 |
肺癌 | 高栄養 緑茶 緑黄色野菜 ビタミンA・カロチン |
大量の穀物 塩分の多い物 やけどするほど熱い食べ物や飲み物 不規則な食事 ヘリコバクター・ピロリ菌の感染 喫煙 |
胃癌 | 新鮮な野菜(緑黄色野菜) 果物 牛乳・乳製品 |
高脂肪食 アルコール 食物繊維の不足 |
大腸癌 | 食物繊維 野菜 豆類 牛乳・乳製品 魚類 |
カビ アルコール |
肝臓癌 | 高栄養 |
高脂肪 高カロリー |
乳癌 | 穀物 ビタミンA |
世界の癌発生は、毎年約1千万人といわれますがこのうちの約3割は食事等で予防すること
が可能であるとされています。
ビタミンCとビタミンEとカロチンは発癌物質であるイニシエーターの働きを抑え、 ビタミンAとカロチンは細胞膜を強くして発癌促進物質であるプロモーターの働きを弱める働きがあることが解っています。
(右の表を参照)
それでは、具体的にはどのような食事・どのような生活を心がければ良いのでしょうか?以下に「癌の予防15か条」を掲げますが、食生活の改善、特に植物性食品を 主体とする食事が、癌予防に非常に有効であることを強調しています。
1.食品と食事:野菜や果物、豆類、精製度の低いデンプン質などの主食食品が豊富な、植物性食品を中心にした食事をする。
2.体重の維持:BMI(体重s/(身長m)×(身長m))を21〜23に維持し、成人期の体重増加は5s未満になるようにする。
BMI=体重(kg)/身長(m)^2。22が標準体重。
3.運動の維持:仕事であなり体を動かさない場合は、1日1時間の速歩を行い、1週間に合計1時間は強度の強い運動を行う。
4.野菜と果物:1日400〜800gまたは5皿以上(1皿は80g相当)の野菜類や果物類を食べる。
5.その他の植物性食品:1日に600〜800gまたは7皿以上の穀類、豆類、芋類、バナナなどを食べる。なるべく精製していいないものが良い。
6.アルコール飲料:積極的には飲酒は勧められない。飲むなら1日男性は2杯(=日本酒1合)、女性1杯(=日本酒5勺)まで。
7.肉類:赤身の肉を1日80g以下に抑える。(赤身の肉とは、牛肉羊肉、豚肉)。
8.総脂肪、油脂:動物性脂肪を控え、植物油を使用して総エネルギーの15〜30%の範囲に抑える。
9.塩分:塩分は1日6g以下。調味に香辛料やハーブを使用し、減塩の工夫をする。(酢の使用も良い)。
10.食品の貯蔵:常温で長時間放置したり、かびがはえた食物は食べないようにする。
11.冷蔵庫での保存:腐敗しやすい食物の保存は、冷蔵庫で冷凍か冷却する。
12.食品添加物と残留物:添加物、汚染物質、その他の残留物は、適切な規制下では特に心配はいらない。
13.調理法:黒焦げの食物を避け、直火焼きの肉や魚、塩干薫製食品は控える。
14.栄養補助食品:この勧告を守れば、あえてとる必要はなく、癌予防にも役立たない。
15.タバコ:タバコを吸わない。
口腔咽頭癌は、禁酒と野菜・果物の大量摂取で33〜50%が予防できることが分かっています。食道癌も同じ予防法で50〜75%は予防可能。肺癌は、禁煙と野菜摂取、胃癌は食塩を控え野菜・果物を十分摂り、食物をきちんと冷蔵することで66〜75%予防できます。結腸・直腸がんは、野菜摂取を多くし、適度の運動と禁酒、肉類の摂取を控えると66〜75%予防できます。
癌をどれだけ予防できるか:WCRF/AICRの報告書(1997年)
H10年厚生省「がん検診の有効性評価に関する研究」班による勧告
A.胃癌検診
逐年のX線検査を用いた胃癌検診受診を勧奨する証拠がかなりある。ただし、検査の限界に関する十分な説明を事前に行うべきである。
B.子宮頚癌検診
1)30歳以上の女性を対象とした細胞診による子宮頚癌検診の有効性を証明する十分な証拠がある。
2)ただし、検診を行う適切な年齢、間隔について検討を続ける必要がある。
B’.子宮体癌検診
現行の子宮体癌検診の有効性は十分に証明されているとはいえず、早急に検討する必要がある。
C.乳癌検診
1)視触診による乳癌検診は、生存率の比較による研究において無症状の場合は死亡リスク低減効果が認められるが、有効性を示す根拠は必ずしも十分ではない。
2)マンモグラフィによる検診は、有効性を示す確かな証拠がかなりあることから、マンモグラフィの導入に関して、早急な対応が求められる。
D.肺癌検診
肺癌の生存率は一般にきわめて低い。しかし、肺癌検診を逐年受診することの有効性は示唆されている。ただし、現行の方法による肺癌検診の効果はあっても小さいことは事実である。(中略)また、集団検診へのCTの導入など一層の早期発見の研究が必要である。
E.大腸癌検診
便潜血検査による大腸検診を勧奨する十分な証拠がある。免疫便潜血検査2日法による逐年検診の効果とその大きさを実証していくべきである。また、2日法については、特異度、精検受診率を高く維持することが重要である。精検は全大腸内視鏡検査か、S状結腸内視鏡検査と注腸X線検査の併用で行うのが望ましい。
男性の方が、女性よりたくさん癌で死亡しています。主に喫煙率が男性の方が高いことによると考えられています。以下の統計数字では、前立腺癌・乳癌などは男女別の死亡率をほぼ全人口に対する数字に修正して、頻度の多い順に表示しています。↑は現在増加中、↓は減少傾向の癌です。
いずれにしても、検診で診断可能なものばかりではないので、癌予防がいかに重要であるのか再認識させられます。
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