33、血液検査について


○ 血液検査を受ける前に

 健康診断や、病気で病院にかかった時、また日赤の献血に協力した際に、血液検査をすることがあります。健康診断では、血糖やコレステロールや中性脂肪などの値を正確に知るために朝食前の採血をする場合が多いと思います。これは、血液検査の中には、食事によって値が変化するものが幾つかあり、食事による変化がないと考えられる空腹時での値で基準値が作られているためにわざわざ食事を抜いて採血を行うのです。9時間以上の絶食が基準になるので、前の日の21時以降は、食事や飲み物は控えて翌朝の6時以降で、朝食前に採血を行います。病院に受診した際や、献血の場合は、食後でもしばしば採血を行います。多くの血液検査は、食事の影響をほとんど受けませんから、それで概ね状態が解るのです。

 普通は、肘を中心とした、腕の静脈から採血をしますが、ここから採血がしにくい場合は、手の甲や、足の静脈、首の静脈などを使う場合もあります。駆血帯というゴムで腕を縛って静脈を浮き上がらせて、採血をするのが普通です。寒い時には、血管が縮んで細くなっていると採血しにくいので、蒸しタオルで暖めたりすることもあります。
また、動脈の中の酸素の量を調べたりする場合に、特別に動脈から採血をする場合もあります。これは、看護婦ではなく医師が採血します。


○ 血液検査で何がわかるのか

 ひと口に血液検査といってもその種類は2000を超え、日常の診療に用いられているものでも数百種類になります。
健康診断や外来の診療などで、よく行われているものについて、簡単に解説をしてみましょう。他にも多くの検査がありますので、不明な点は担当の医師に尋ねて下さい。
 基準値の考え方については、以前に健康講座でお話していますので、今回は省略いたします。

検査項目 何がわかるのか 見つかる病気
検血・血算
白血球(WBC)、赤血球(RBC)、血小板(Plt)
Hb(ヘモグロビン)=血色素量、
Ht(ヘマトクリット)、MCV、白血球分類など
骨髄で作られ、血管の中を流れている血液の細胞(血球)の状態が分かります。 貧血、多血症、白血病
炎症の有無など
肝機能検査
GOT(AST)、GPT(ALT)、ALP、LDH、
γ−GTP、ChE、T−Bil、ZnTT、アンモニアなど
肝臓の細胞から流れて出てくる酵素の量や、肝臓で分解されたり合成されて
出来てくる物の量を調べます。
肝炎、アルコールや薬物による肝障害
肝硬変など
脂質検査
T−cho(総コレステロール)、TG(中性脂肪)、
HDL−cho(いわゆる善玉コレステロール)、
LDL−cho(いわゆる悪玉コレステロール)など
血液の中を流れている脂肪分を調べて、動脈硬化を起しやすくないかどうかみます。
栄養の状態も分かります。高すぎてはいけませんが、低すぎるのはあまりよくありません。
高脂血症、高コレステロール血症など
腎機能検査
尿素窒素(BUN)、クレアチニン(Cr)、尿酸(UA)
腎臓から、尿に排泄されるべき老廃物の量を調べて、腎臓の働き具合をみます。 腎不全、高尿酸血症、痛風など
血糖
空腹時または随時の血糖、
HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー、糖化ヘモグロビン)
細胞のエネルギー源となるブドウ糖の量を測ります。HbA1cは過去1〜2ヶ月の平均的な血糖の状態が分かります。 糖尿病
血清検査
HbsAg、HCV、梅毒血清反応、
リウマチ因子など
肝炎のウイルスや梅毒にかかったことがあるかどうかまたリウマチの素因が分かります。 慢性ウイルス性肝炎、梅毒など、関節リウマチ
電解質
ナトリウム(Na)、カリウム(K)、クロール(Cl)
カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、リン(IP)など
血液中の、電解質(イオン)の量を調べます。 内分泌(ホルモン)の異常、栄養の偏り、
骨の代謝異常など
炎症反応
血液沈降速度(血沈、ESR)、CRP、など
体の中で炎症が起こっていないかどうか調べます。 感染症、膠原病(自己免疫の病気)など
膵機能検査
アミラーゼ、エラスターゼT、リパーゼなど
膵臓から出てくる消化酵素の量を調べます。 慢性膵炎、急性膵炎など
筋源性酵素
CPK、LDH、アルドラーゼなど
筋肉が壊されると出てくる酵素の量を調べます。 心筋梗塞、筋炎、横紋筋融解症など
腫瘍マーカー
CEA、CA19−9、TPA、IAP
αFP、PIVKA−U
NSE、SCC、PSAなど
癌などの悪性細胞が作り出すたんぱく質の量を測ります。 胃癌、大腸癌、肝癌、肺癌、前立腺癌
乳癌、すい臓癌、悪性リンパ腫など
免疫やアレルギーの検査
免疫グロブリン、リンパ球サブセット、抗核抗体、
IgEなど
免疫を担うたんぱく質の量や、リンパ球の種類、またアレルギーの引き金を引くIgEというたんぱく質の量を見ます。 免疫不全、
各種アレルギー性疾患
気管支喘息、花粉症、自己免疫疾患(膠原病)
アトピー性皮膚炎など
各種ホルモン検査
fT3、fT4(甲状腺ホルモン)
TSH(甲状腺刺激ホルモン)
コルチゾール(副甲状腺ホルモン)
ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)
カテコールアミン、PTH(副甲状腺ホルモン)
バソプレシン(抗利尿ホルモン)
LH・FSH(女性ホルモン)、HANP、BNPなど
体のバランスをとっている、ホルモンの量を測定します。 甲状腺機能亢進症(バセドウ病)、
甲状腺機能低下症、副腎の機能異常、
褐色細胞腫、副甲状腺の異常、
尿崩症、
更年期障害、心不全など
出血凝固系検査
PT(プロトロンビン時間)
APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)
TT(トロンボテスト)、血小板凝集能など
血の固まりやすさを調べます。 出血傾向、血友病、DICなど
薬物血中濃度
抗てんかん薬、ジギタリス(強心剤)、テオフィリン(気管支拡張剤)、抗不整脈薬、アミノ配糖体、免疫抑制剤など
薬の血中濃度をはかり、中毒を未然に防いだり、薬の量の調整をします。 薬物中毒
動脈血ガス分析(動脈から採ります)
酸素分圧(PaO2)、
二酸化炭素分圧(PaCO2)、
ペーハー(pH)など
肺機能を調べます。酸素を取り込んで、二酸化炭素を出す働きがうまく行えているかどうかみます。ペーハーは腎臓の病気でも異常になります。 慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、気管支喘息、肺気腫など)
腎不全。


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