34、自律訓練法とは


自律訓練法とは

 自律訓練法とは、自己暗示を利用したリラクセーション(緊張緩和)の一つの方法で、ドイツの神経科医 ヨハネス・H・シュルツ教授が1932年に考案したとされています。
これにより、精神生活の向上・不快感の解消・生理的活動の正常化などをもたらす事ができ、医療上は、各種の心身症(ストレスから身体的な症状のでる病気)の治療に応用されています。
 訓練と言っても、リキんでムキになって行うと、その目的は達成されません。ストレスから交感神経が高ぶっている状態から、副交感神経の働くリラックスした状態を自己暗示によって作り出すことが訓練の目的になります。色々な、不快な症状をなくすために行うと言うよりも、リラックスすることの副産物として不快な症状が軽減すると考えた方が良いでしょう。

リラクセーションの効果

自律訓練の効果としては、
1、蓄積された疲労の回復が得られる
2、イライラせず、穏やかになる
3、自己統制がすすんで、衝動的行動が少なくなる
4、仕事や勉強の能率があがるようになる
5、身体的な痛みや精神的な苦痛が緩和される
6、内省力がつき、自己向上性が増す
などと言われています。もっと、具体的に言いますと、
 頭の休養がとれ、疲労回復し、騒音・光・嫌な臭いなどに対して耐性が向上する。
 精神的エネルギーを補給し、新しい活力を生み出し、作業能率の向上・精神集中をもたらす。
 不安・痛み・イライラ感などがなくなり、ぐっすり眠れるようになる。
 肩こりや筋緊張性頭痛が改善し、精神を集中したり、頭の中から落ち着けるようになる。
 タバコの吸いすぎ、爪かみや貧乏ゆすり、かんしゃく、つまみ食いといった不適切なストレス解消行為がなくなる。
 高血圧の血圧を下げたり、狭心症の症状を改善する。
 消化器系の調整ができ、神経性胃腸症などの便秘や下痢が改善する。
 頻尿などがなくなり、排尿・排便を我慢出来るようになる。
 などです。

自律訓練の方法

 慣れるまでは、気が散らない静かな場所をえらび、あらかじめトイレはすませて、靴は脱ぐか、スリッパなどに履き替えます。ベルトやネクタイはゆるめて、腕時計やメガネも外す方が良いでしょう。医師など自律訓練の方法を知っている人に、「公式」といわれる暗示を唱えてもらうと行い易いかも知れませんが、一人でも、心の中で「公式」を唱えることで訓練は十分可能です。慣れれば、教室や職場でも可能です。意識を無理に集中する必要はなく、雑音が聞こえればそれにある程度気を取られても構いません。「公式」唱えて、体がそのような状態に自然となることに気づくことが大切です。

 基本姿勢として、仰向けに寝るか、ゆったりと座れる椅子に腰掛けて腕をひじかけに載せるか太ももの上に軽くおきます。背もたれがなければ、肩の力を抜いて少しうつむき加減になります。 足は床につけ、肩幅ほどに開きます。目と口は軽く閉じましょう。

 まず、はじめにゆっくりと深呼吸を数回して、「気持ちがとっても落ちついている」という言葉を、ゆっくりと数回、心の中で繰り返します。落ち着いた感じが得られたら、第一公式の「手・足が重い」へ進みます。最初は、利き手から片方ずつ、慣れれば両手を同時に暗示をかけることが出来ます。手足が実際に重く感じられるようになったら、消去の動作をします。これが1回の訓練になります。この訓練を3回連続して行い、全体で5〜10分の時間になります。この3回1セットを1日朝昼晩と3回程度行います。1回の訓練を長く行うより、短い時間で何回も行う方が習得が早いようです。手足の重たい感じが良くつかめるようになったら、第二公式の「手足が暖かい」へ進みます。この間も背景公式と言われる、「気持ちがとっても落ち着いている」を時々あいだに入れると良いようです。第二公式まで、体感できるようになれば、立派に自律訓練が出来ているといえます。さらに、訓練を進めたい方は、以下の公式を参考にして下さい。
 はじめは、重い感じもつかみにくいかも知れませんが、寝る前に布団の中などでしてみると、1週間ぐらいのうちには感じがつかめてきます。手の重い感じの方が、足よりも簡単で両手をするよりも、片手から始める方がさらに簡単です。

自律訓練の公式言語・背景公式(安静練習)  「気持ちが落ち着いている」
・第一公式(重感練習)  「両腕・両足が重たい」
・第二公式(温感練習)  「両腕・両足が温かい」
・第三公式(心臓調整)  「心臓が静かに規則正しく打っている」
・第四公式(呼吸調整)  「楽に呼吸(或いは息)をしている」
・第五公式(腹部温感練習)  「お腹(太陽神経叢)が温かい」
・第六公式(額涼感練習)  「額が心地よく涼しい」

●訓練(約1分)−消去(30秒)−訓練−消去−訓練−消去:で5〜10分ぐらい
これを出来れば1日3〜4回、最低1日1回続ける と良いとされています

(補足) 第一公式では、以下の様に進めます
1.右腕が重たい
2.左腕が重たい
3.両腕が重たい
4.右脚が重たい
5.左脚が重たい
6.両脚が重たい
7.両手・両脚が重たい

○消去動作

 自律訓練法の最後に、過度のリラックスに陥らないように、消去動作をします。これは、寝る前に寝床で自律訓練をしている場合などは必要なく、そのまま眠ってしまっても問題はありません。

1、両手を親指を中にして握る・パッと開く (三回ほど繰り返す)
2、両腕を胸元から前へ伸ばす       (三回ほど繰り返す)
3、両手を前から上に回して背伸びをする (ここでしっかり目を開けて気持ちをハッキリさせる)


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