人がビスフェノールAを摂取する可能性は、ポリカーボネート製の食器や哺乳瓶、エポキシ樹脂を内部コーティングに使っている缶詰類などからです。1997年に市民団体が、PC樹脂製の哺乳瓶からビスフェノールAが溶出することを突き止め、以後、哺乳瓶のガラス化が進みました。
慢性・発癌性試験や生殖毒性試験などの結果、動物実験での無作用量は5mg/kg/日と推定されたので、これに安全率の1/100を掛けて0.05mg/kg/日となっています。体重を50kgとすると、2.5mg/人/日であり、1日に食事を1kg食べるとすると、食品中の濃度は2.5ppmということになります。
ビスフェノールAは、ダイオキシンと違って、分解されやすく体内に吸収されてもすぐに肝臓でグルクロン酸抱合されて水溶性となり女性ホルモン活性を失って体外に排出されますし、女性ホルモンとしての強さもエストラジオールを1とした場合、その約200分の1と言われていることもあって、比較的安全とされている向きがあります。
ポリカーボネート容器では、製品中のBPAとして、市販幼児用食器で5〜80ppm、哺乳瓶で18〜37ppm、また水95℃で30分間の溶出量は幼児用食器で0.046ppm以下、哺乳瓶で0.005ppm以下で、大部分の市販品では溶出は認められなかったとされています。
缶詰の内部コーティングとしてエポキシ樹脂を使用した場合には、その原料として、また塩化ビニル樹脂では安定化剤としてPBAを使用するので、加圧加熱滅菌時に中身の食品に溶出する可能性があります。実験では、最高22.9μgのビスフェノールAを検出していますから、一般にその溶出は0.1ppm以下と言われています。
そのため、現在ではビスフェノールAを含まないポリエチレンテレフタレート(PET)でコーティングした缶の使用が増加しています。
現在、1998年に厚生省は、BPAの摂取量は少ないので健康被害が出るほどではなく、制限する必要はないとしています。BPAの安全性について、製造メーカーは「安全論」の立場からビスフェノールAのホームページ http://www.bisphenol-a.gr.jp/ で、情報提供を行っています。情報が多いのでここでは紹介しきれませんが、興味のある方はご覧下さい。
各種研究結果から、BPAは環境ホルモンとして、一時心配されたほどの毒性は無いのではないかとも言われてきています。しかし、一方では、脳神経系に影響を及ぼし、母ラットにBPAを投与したら雄の子供のラットの脳が雌化したり逆に雌の子供ラットの脳が雄化したという報告や、免疫系に異常が生じたという報告もあります。ですから、現在の実際摂取量は許容摂取量に比べてかなり少ない状態ではありますが、女性ホルモン作用以外の影響についてもさらに研究を重ねて、有害でないかどうかを見極める必要があると言えるでしょう。
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