スチレンダイマーとトリマーは、スチレンが2個および3個結合した化学物質です。これは、ポリスチレンの製造工程の副反応で生じた不純物です。この混合物1g/kgを雌ラットに1回投与すると、腟開口の早期化がみられ、低分子ポリスチレンを160ppm餌に混ぜて雌ラットに4日間食べさせると子宮重量が増加し、ごく弱い女性ホルモン作用があったとする報告があります。
カップ麺などの即席食品の容器にポリスチレンが、よく使用されています。問題は、ポリスチレン製品から、上記のモノマーやトリマー・ダイマーが溶け出すのかどうかです。水60℃、30分間では、溶出は見られませんでしたが、溶出溶媒の脂溶性が増加すると溶出量が増加します。その2/3は 1-phenyl-4-(1'-phenylethyl)tetralinです。n−ヘプタンでは、0.38〜44.8μg/cm2が溶出。即席食品への移行については、EPS(expandable polystyrene)容器では、材質濃度が低く移行は認められませんでしたが、PSP(polystyrene paper)容器では、ND(検出下限以下)〜62.4ng/g(1食あたり33.8μg)のトリマー移行がみられています。
食品衛生法では、材質中のスチレン、トルエン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、n-プロビルベンゼンの合計が5000ppm以下、熱湯を用いる発泡ポリスチレンでは合計が2000ppm以下で、スチレンおよびエチルベンゼンが各1000ppm以下と定めています。 ある報告では、市販ポリスチレン製品中の残存量は21〜819ppm、熱湯30分放置後の溶出量は3〜44ppb、即席食品への移行量はND〜87ppbと報告されています。
これらのことから考えると、食品容器やカップめん容器からの溶出で急性中毒を起こす可能性は、きわめて低いと言えます。また、低濃度での人に対する内分泌撹乱作用が必ずしも証明されているわけでもありません。
しかし、多様な化学物質が溶出することは明らかですから、直ちに使用を中止する必要は無いにしても、カップ麺などは、容器を移し替えてお湯を注ぐなどの生活上の注意が必要かも知れません。
各種化学物質の、健康への影響に関しては、神奈川環境化学センター(http://www.fsinet.or.jp/~k-center/index.htm)にも詳しい情報があり参考になります。
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