「けんか・トラブル」への対処の仕方
・小林幸雄流「けんかの仲裁」で教師のリーダーシップを発揮する。
1.けんかの仲裁は、教師のリーダーシップが問われる
けんかが起きないクラスはない。起きないことこそ異常である。
けんかの仲裁の仕方によって子どもからの信頼を失うこともありうる。
当事者同士にしこりが残ることもありうる。
「けんかの仲裁」は、まさに教師のリーダーシップが問われるのである。
2.小林幸雄流「けんか仲裁」のポイント
小林幸雄流「けんか仲裁」を知った時は、「こんな仲裁方法があったとは・・」
と大きな衝撃を受けた。氏の仲裁方法を追試すると当事者間にしころが残らず、すっきり
と仲直りができてきのである。この方法の最大のポイントは「当事者に自分自身を自己評価 させること」である。
互いの非ばかりに目が向いては解決しない。相手に向いた目を自分自 身に振り返らせることこそ重要なのである。
3.小林幸雄流「けんかの仲裁」のステップ
@ 当事者を落ち着ける場所に連れて行く。
A 教師が中立を宣言する。
B 自分がとった態度を自己評価させる。
C その点をつけた理由を聞く
D 悪かった部分のみを謝らせる。
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この方法を知って入れば、慌てることなく対処することができる。また、様々なパターンのトラブルにも応用可能である。
けんかの仲裁は『自己評価』で! 小林幸雄 ( 2000,4,3更新)
1、けんかの仲裁は、教師のリーダーシップが問われる
さわやかな春風と共に、教師も子どももやる気に燃え、新学期のスタートを切る。
四月当初は、どの子もちょっぴり緊張ぎみで、しかも、先生に良く思われたい、今年こそは頑張りたいという強い願望がある。
だからこそ、どの子も素直でかわいらしい。
ところが、どんなクラスでも、少し緊張がほぐれてくると、いろいろと日常のトラブルが生じてくる。
けんかもその一つである。けんかの起きないクラスは、無いと言ってよい。
いや、起きないことこそ異常と考えるべきであろう。
さて、けんかに対して、どのような対処をすればよいのだろうか。
殴り合いのけんかもあれば、口げんかもある。また、一方的にいじわるをしたケースもあれば、
そうでない場合もある。一対一の時もあれば、複数の時もある。
このように、けんかといっても様々なケースがあり、いつどんな形で起きるか分からない。
場合によっては、たった一つの突発的なけんかにより、子どもたちからの信頼を失う恐れさえある。
また、当事者どうしにしこりが残る場合もある。
まさに、「けんかの仲裁」は、教師としてのリーダーシップが問われているのである。
2、自己評価させる
たかが、けんか、されどけんかである。では、どう対処すればよいのか。
私は、次の一点に集約されると考える。
当事者に自分自身を評価させる。
そんなことをすれば、客観的でなく公正でないと心配される方もおられるであろう。
しかし、この方が断然良い。裁判官のごとくあなたの方が悪い」と判定を下される方が、教師に対して
不信感を持つ恐れがある。
「自分で自分を評価させる」からこそ、自分でも納得できるし、後でしこりが残ることもないのである。
以下に、このことを踏まえながら具体的にどのように対処するのか述べる。
3、 五つのポイント
けんかの仲裁のポイントは、粗く分けて次の五点にある。
@ けんかの仲裁は、他の子供たちの前ではしない。
A 教師は、はっきりと中立の宣言をする。
B けんかの相手に対し、自分のとった態度が、何点だったか自己評価させる。
C どうしてそんな点をつけたかその理由を聞く。
D 自分で悪かった部分のみをあやまらせる。
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事例(教師がけんかの原因を知らない場合)
以下、具体的な事例をあげて説明をする。
掃除時間が終りかけたころ、職員室にもどつた矢先のことである。
「先生! 田中さんが泣いています! 小林くんが雑巾をぶつけたんです」と女の子が知らせに来た。
急いで教室にかけつけてみると、黒板の前に人だかりができている。
その中に、しやがんだまま泣いている田中さん。ひきつった表情で棒立ちの小林くんがいた。
さて、こんな時、どう対処するのか。
上記の五つのポイントに従い説明をする。
ポイント@
まず、当事者を落ちつける場所へ連れていくことである。
周囲の目があると本人のプライドが傷つき、決して心を開くことはない。
けんかした子を職員室へ呼んで説教している先生がおられるが、これなど言語道断である。
私の場合、誰も居ない特別教室に連れていくことが多い。
ポイントA
そして、二人を教師と同じ目線に座らせ、必ず次のように言う。
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先生は、見ていません。だからどうしてけんかになったのか分かりません。どっちが
いいのか悪いのかも分かりません。知っているのは、自分自身と、それに、天の神様だ
けです。
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現場をよく見てもいない第三者に、先入観でああだこうだと決めつけられることが、当事者にとっては一番心外なことである。
中立の立場で接すること。このことが仲裁に入る者の前提条件である。
ポイントB
次は、三つめのポイントである。二人に対し、次のようにたずねる。
君たちは、相手の友だちに対して何点の態度で接しましたか。
もし、小林くんが田中さんに対して何も失礼なことが無ければ、百点をつけたら
いいのです。点がつけられるのは、自分自身と天の神様だけです。
点がついたら教えてちょうだい。
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この問いこそ、ポイント中のポイントである。この問い一つで、それまでどんなに興奮していた子供でも、嘘のように神妙な
態度に変わる。なぜ、そうなるのか。
それは、自己と正対し、自問するからである。
けんかした直後の子どもは目の前の教師や、けんかした相手の方にのみ日が向いている。気になるのは、
教師の出方であり、けんかした相手の出方である。
このように、視点が自分に向いていない状態で、あれこれ事情をたずねても実りは少ない。なぜなら、
視点は相手に向き、相手の非のみに向けられているからである。
口を開けば、悪口の言い合いなるのは、火を見るより明らかだ。
ところが、「自分の態度は何点だったのか?」と問われると、視点は、他者から自己へと変わる。
自己と正対し自問することで、初めて素直に反省する心が生まれるのである。
「0点です。」と小林くんが答える。
ポイントC
この時、すかさず次のように言う。
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0点をつけるの。小林君は、自分にきびしいんだね、
100点も引いたわけを先生に教えて。
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共感的に受容し、けんかの要因を問うのである。
このようにたずねられると、子どもは素直にその理由を話す。小林くんは次のように答えた。
「大田さんに雑巾をぶつけたし、掃除もなまけたから」
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もう一人の大田さんにも同じようにたずねる。
すると、彼女は小さな声で、「20点」と答えた。これは、私にも予想外の点だった。
彼女が言うには、「掃除をなまけていたから、小林くんにひどい言葉を言ってしまった」というのだ。
ポイントD
そして、
最後に、互いに、悪かったと思った分をあやまりなさい。
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と言って、互いにあやまらせる。仲直りのしるしとして、固く握手もする。
以上の手順で、指導に要する時間はたった数分で済む。しかも、自己評価した上での仲直りなので、
仲裁の後、尾を引くことは決してない。