「指名なし音読」は、「指名なし発表」を経て、「指名なし討論」に至る最初のステップである。
「指名なし音読」とは、教師が指名しないでも子どもが自分から立って音読するシステムである。
この時、子どもが他の子を指名するのでもない。
子どもが自分から立って音読するである。無論、席の順に回ったりするものでもない。
まず、最初、机を向かい合わせにさせることが大切である。
 向山洋一氏は、「討論の授業をするなら、まず机を向かい合わせにしなさい。」と言う。
このことは、「指名なし音読」の段階から大切な原則である。
 また最初は全員を対象とせず、「班ごと」「列ごと」などと人数を限定してから、
徐々に増やしていく方法もある。
                      

 今日は、先生が指しませんから、自分が立って一文音読してください。一人が音読し終わったら、次の誰かが立って音読します。同時に立ったらお互い譲り合ってください。その時、たくさん音読していた人は、少ない人に譲ってあげてください。では、始めます。誰からでもどうぞ。
 
 
 ここで、2〜3人立って顔を見合わせることになるだろう。そして、さっと一人が座ったとしよう。
ここでは、すかさず座った子を誉める。「A君、よく先生の話を聞いていたね。偉い。」というふうにである。
 それを聞いたB君も座り、C君の音読となる。C君が音読し終わったら、
「今のように三人のようにやるのです。では、どんどん生きましょう。」と起立を促すのである。
 ただし、スムーズに流れていても、全く起立する子がいないで、沈黙が流れることがある。
教師がしゃしゃりですにがまんすることも一つの方法だが、
「今まで1回でも読んだことのある人、立ってごらん。一人で読むのは大変な事なのです。えらい。」
となんらかの刺激を与えることも一つの方法である。
 また、運悪く一文も読む機会がなかった子が出てくる場合がある。
最後の一文手前で、ストップをかけ、「一度も読んでない人立ってごらん。
最後の一文を読んだら座りなさい。」と指示しておくと全員一度は必ず読むことができるのだと、
子ども達は安心することができる。
 
 
 
 学級によって子どもの「指名なし音読」の反応は様々であろう。「指名なし音読」は、
教師の「対応の技術」が重要な鍵になる。音読する子ども一人ひとりの行動や態度をしっかり脳裏に焼きつけ、
音読した後に、誰のどのような行動や態度が良かったのか評価することが大切である。
(意欲的に読めた。人に譲ってあげた回数が多かった。)個別にほめた後、
「いやー。みんな最初にしては、なかなか上手だよ。先生が受け持ったクラスの中では一番じゃないかな。」
とほめると、子どもたちのやる気をさらに引き出すことができるのである。