夏の子どもの皮膚の病気

2014

 子どもたちのお待ちかねの夏がやってきます。水遊び・虫取り・海やプールに花火.....と楽しいことがいっぱいです。しかし一方で夏は肌を露出させるので、外界からの刺激を受けやすく、皮膚のトラブルの多い時期でもあります。特に子どもたちはたくさん汗をかく上、ついかきむしってしまうことも多く、悪化させてしまいがちです。でも、ちょっとした注意でずいぶん防ぐことができます。そこで、お母様に知っていただきたい、夏におこりやすい皮膚の病気をあげてみました。今年(2012年)は例年以上に毒蛾皮膚炎(毛虫皮膚炎)を発症する方が多いように思います。木の下(ツバキ、サザンカ、サクラ、ウメなど)にいたり、木を触ったりするときには毛虫に注意することをお忘れなく!


                                                                                                     
 1) 毒蛾皮膚炎  2) とびひ<伝染性膿痂疹>
 3) あせも  4) あせものより<多発性汗腺膿腫>
 5) 虫刺され  6) 水虫・タムシ・くろなまず
 7) みずいぼ  8) 頭じらみ
 9) 日焼け 10) 植物かぶれ
11) 海水浴による皮膚炎

1)毒蛾皮膚炎(どくがひふえん)


夏に気をつけないといけないものに毛虫(毒蛾の幼虫)による皮膚炎があります。木に登ったり、木の下で遊んだあと、ぴりぴりした症状が出たら要注意です。刺された次の日に赤いぶつぶつとした発疹が生じ、急速に広がります。大人では、木の剪定をしたあとによく悩まされます。また、庭に干した洗濯物に毛虫がついていて、知らないうちに刺されることもありますので、特に小さいお子さんの着るものには注意してあげてください。毛虫に刺されたと感じたときには、セロハンテープなどで毛を取り除き、冷水で冷やしましょう。治療には強力なステロイド外用剤が必要ですので早めに専門医で診察を受けたほうが良いでしょう。(『どくが』のページへ)

2)とびひ(伝染性膿痂疹)

あせもや虫刺されなどを引っかいているうちに細菌感染(黄色ブドウ球菌もしくは化膿連鎖球菌がほとんど)を起こすことがあります。赤い皮膚病変から汁が出てかさぶたがつきます。そこをさわった手や爪に細菌がつき、全身のあちこちにひろがります。7月から9月までがピークです。汗をかいたら、できるだけシャワーをあびて清潔にしましょう。虫刺されも掻かないように、かゆみ止めを塗ったり、虫パッチなどを使って予防しましょう。また、とびひかなと思ったら、できるだけ早く病院や診療所で適切な治療を受けてください。プールには入らないほうが無難です。なお、岡山市立幼・小・中・高校では伝染性膿痂疹は学校伝染病第3種として出席停止の扱いになることがあります。その場合、登校・登園には医師の治癒証明が必要になります。(『とびひ』の項目もご覧ください)

3)あせも

あせもの予防は、高温多湿の環境を避け、通気性・吸水性のよい衣服(綿のものなど)を着せ、激しく汗をかく運動は避けることといわれています。しかし、これでは夏はクーラーのきいた部屋でおとなしくしてなさいということになりますね。せっかくのな夏を楽しむことができません。とりあえずは、汗をかきすぎたらシャワーを浴び、よく水分を拭くだけで十分と思います。ベビーパウダーは喘息を引きを越す可能性があるといわれており、おすすめできません。あせもであっても、かゆみのひどい場合はおでき(あせものより)や、とびひの原因となることがありますので治療が必要です。(『あせも』の項目もご覧ください)

4)あせものより(多発性汗腺膿瘍:たはつせいかんせんのうよう)

汗のでる腺(エクリン腺)に黄色ブドウ球菌などの化膿を起こす細菌が感染し、深部までおよんだもので、ほとんどが乳幼児に発生します。あせもから生じることがあり、額や後頭部によくでます。ただ、最近はクーラーが一般家庭に普及していることもあり、あまり見かけなくなりました。治療はとびひと同様に抗生物質の内服・外用をおこないます。

5)虫刺され

四肢などの露出部に赤いぶつぶつしたかゆい発疹なら「蚊」のことが多く、腕の内側や腹部などのやわらかい場所に生じたら「ダニ」の可能性があります。犬や猫を飼っているお家は、ノミに注意しましょう。虫刺されであることが間違いないなら、市販のかゆみ止めで様子を見て結構です。ただし、湿疹・水虫・やけどなど何にでも効果があるような表現をしている市販の外用剤はお勧めできません。かぶれを起こす原因になることがあります。かゆみを止めて、引っかかないようにすることで、とびひなどを予防することが大切です。
また、山に登ったり、河川に入ったりした時に注意しなければならないものにツツガムシの幼虫によるツツガムシ病があります。刺されても自覚症状はほとんどありませんが、さされた部位が1〜2日で赤い発疹になり、徐々に小さな水疱を作り、4〜5日でかさぶたができます。刺されて10日くらいで発熱し、顔や体にかゆみのない「はしか」のような赤い発疹が生じます。原因はリケッチアで適切な抗生物質を使用すると劇的に効果がでますので、原因の分からない発疹がでた時は早く病院へ受診し、山などへ行ったことを担当の医師にお話ください。またムカデにかまれ痛く、赤く腫れた時にはやけどしない程度の熱いお湯(43〜45℃)で10分くらい温める(シャワーを患部にかける)と痛みが改善するため温熱療法が推奨されています。

6)水虫・タムシ・くろなまず

日本の夏は高温・多湿なので、カビが繁殖しやすくなります。同じように、水虫(足白癬)の発病率も増加します。ただし、水虫に似た別の皮膚変化のこともあり、お子様の足の皮がむけたからといって、すぐに市販の水虫薬を塗るのは考えものです。子どもの場合は靴やサンダルによるかぶれ、プールの水(塩素)の刺激、汗の刺激など白癬以外の原因が多いように思います。こうした場合、水虫薬によって悪化することもありえますので、治療には確実な診断が必要です。タムシは体に白癬が感染したもので、丸い輪のような変化で輪の縁はカサカサします。手や足の水虫からうつったり、犬・猫のカビから感染することがあります。かなり強いかゆみがあります。くろなまずは癜風というカビによる皮膚の茶色い斑点です。胸・背中・首などによくできます。かゆみはありません。これらはすべて適切な治療でよくなっていきますので、水虫・タムシと診断をうけてもあまりご心配はいりません。きちんと治してしまいましょう。(水虫・タムシの項目もご覧ください)

7)水いぼ(伝染性軟属腫:でんせんせいなんぞくしゅ)

小さなお子さんの 首・体・腕や下肢 に生じる細かいぶつぶつで、少し光って見えるものがみずいぼです。これは軟属腫ウイルスによるいぼで、放置していると数が増えてきます。肌が乾燥しやすい体質のお子さんに生じやすく、接触でうつるといわれ、プールの管理者から治療をせまられることがあります。しかし実際は「プールでうつる...」という明らかな証拠はなく、ビート板等を共用しなければ大丈夫だろうともいわれています。治療は、
*ピンセットでつまんでとる。
*硝酸銀を水いぼに塗って腐食させる。
*液体窒素で水いぼを凍結させてとる。.....などの方法があります。
「つまんでとる」のは痛いので局所麻酔薬のついたテープをはって痛みを軽くしてからとることもできます。数の少ないうちに取ってしまうのが一番良いと思いますが、どうしても取りきれなくても心配ありません。そのうち抗体ができ自然に治ってしまいます。

8)頭じらみ

保育園や幼稚園に通っているお子さんが急に頭を描きだしたら頭じらみを疑い、髪の毛を観察しましょう。白っぽいフケのようなものが髪の毛についていたら、指で簡単に取れるかどうか確かめてみてください。簡単に取れないようなら頭じらみの可能性がありますので病院へ受診してください。頭皮をよく観察すると、ゴソゴソ動く虫が見つかることもあります。頭じらみはシャンプータイプの殺虫剤(スミスリンシャンプー)で手軽に退治できますが、頭皮に異常がなくても念のため患者さんのご家族全員治療をしてくださいね。

9)日焼け

以前、子どもたちは夏の間に日焼けして黒くなると冬に風邪を引かないといわれ、せっせと日光を浴びたものでした。これは食糧事情がよくなかったころ、日光浴で紫外線にあたることで活性型ビタミンDをとるための手段の一つだったからでしょう。しかし、栄養状態のよくなった現在、活性型ビタミンDは食物より十分取れるようになりました。太陽光線、とりわけ紫外線は皮膚の老化を早め、発ガン性があることが分かっており、日焼けはできるだけ避けたほうが健康には良いと考えられるようになってきました。紫外線量は5月〜7月にかけて最大になります。夏場に外で遊ぶときはお子様でもサンスクリーン(日焼け止めクリーム)をお使いになるほうが良いでしょう。SPF値は50までの紫外線吸収剤を含まないものがお勧めです。というのも、紫外線吸収剤による皮膚炎がしばしば見られるからです。日焼けしてしまったら、流水で冷やし、カーマインローションなどをつけましょう。症状がひどいときは皮膚科へ。水分補給をお忘れなく...

10)植物かぶれ

夏は登山やハイキングなどで植物と接する機会が多い季節です。子どもたちは特に地面に近いところでいろいろな植物に触れています。様々な植物がかぶれの原因になりますが、有名なのはウルシやハゼノキでしょう。これらにアレルギーがある方が接触すると小さな多数の水疱形成を伴う皮膚炎が当日から翌日に生じます。アレルギーのない方でも接触後1週間から10日後に発疹が生じることがあります。ウルシかぶれは通常激しい皮膚炎になりますので、疑ったら皮膚科で治療を受けましょう。ウルシアレルギーの人はギンナンやマンゴーでもかぶれる恐れがあるのでご注意ください。また『医者いらず』といわれるアロエ(キダチアロエ)もかぶれの原因になるので、やけどなどに使用しない方が無難です。

11)海水浴による皮膚炎

海水浴に行って生じる皮膚炎もあります。クラゲに刺されたり、日焼けなど原因の分かるものも多いのですが、海水浴後皮膚炎といって、水着の中に入り込んだプランクトンなど原生動物の幼虫により生じる皮膚炎はあまり知られていません。これは海水浴の当日の夜から翌日に、水着の下の部分や四肢にかゆみの強い赤いぶつぶつした発疹ができるものです。また、水着のかぶれによるものもあり、海水着皮膚炎と呼びます。このほかウニやイソギンチャクによる皮膚炎や海辺にいる虫による虫刺されなど......楽しい海水浴も、皮膚には危険がいっぱい!特に注意したのはクラゲに刺された場合です。クラゲの触手がまとわりついているときには、海水で洗い流し、ゆっくりとはがすのが良いようです。けっして砂でこすったり、水道水で洗わないでください。これはクラゲの刺胞が破れ、毒が回る恐れがあるからです。クラゲの種類により治療法が異なることがあり、病院へ行くときはできればクラゲの種類を記録してください。また、気分が悪くなったりする場合はできるだけ早く病院へ受診してください。


● home ● ● mail ●