ニューピオーネのできるまで

2月:枝の剪定前の様子
ぶどうの樹は、冬の間は休眠し、樹液の流れが止まっています。このときに、次の年に房をつける芽を,各枝のもとのところに1つだけ残し、その先は切除(=1芽剪定)します。降雪もあり、大変寒いときですが、この時期にしないと、樹を傷めます。大変な数の、硬くなった枝を、剪定バサミで切ってゆきます。切った枝は、病害虫を園内に残さないように集めて、他の場所で3月の終わりに焼却するか、剪定後シュレッダーにかけて堆肥にします。



 

今年度で6年目を迎え、1芽剪定後,幹や延長枝に寄生するカイガラ虫やその他の虫の防除ために、外皮(粗皮)を剥いだ状態。カイガラ虫は果実に害を及ぼすのです。
(平成17.3.21)

3月、剪定後の状態
 前の年に房のついた枝の、1番元の芽を1つ残す剪定作業が終わり、4月下旬にその芽から新芽が出るのを待つ状態です。
 一方、その間、3月中に、木の古くなった皮を剥いで、内側に害虫が住み着くのを防ぎます。 また土盛の部分は、根の乾燥や草が生えるのを防ぐために、茅やなどで覆っていますが、3月下旬から5月初め頃までは、新芽が遅霜の害を受けるのを出来るだけ避けるために除去し、地熱で霜の害を防ぐようにします。5月に、遅霜の心配がなくなると、樹の根元に害虫が住み着くのを防ぐため周囲を少し空けて、再度、茅・枯れ草などで土盛部分を覆います。

4月はじめ、発芽に備えてのビニールの屋根張り
 4月下旬に出てくる新しい芽は、雨に当たると、病害に犯されるので、4月のはじめ、クリップと押さえの紐で、各枝全体にビニールの屋根を張ります。春風に吹かれてたなびくビニールを張るのも技術が要ります。園は、全体で、幅22メートル、奥行き100メートルあります。破れると、後で一つ一つ補修テープを貼って、雨に当たらないようにしま
5月初旬:芽かぎ 無事4月下旬に出た新しい芽は、1日1日と大きくなって行きます。 剪定で残した1つの芽から、新しい芽が2つ(主芽と副芽)出るので、この時期に、強過ぎなくて、中くらいの強さで、房の穂(=花穂)を持ち、あとで外へと枝を伸ばすのに、伸ばしやすい芽を1つ残し、他のものは切除(=芽かぎ)をします。養分を1つの芽に集中させるためです。 新芽は、大変もろいので、根元から取れてしまう危険のある場合は、2つとも残して、1本が上手く外側の支えに取り付けられると (=枝の誘引作業)、残りの1つを切除します。 2つ出た芽が2本とも折れると、そこは、今後一切芽は出ません。そこには、今後房が着けられない状態(=かげ芽)となります。 また、上手く、外の支えまで、取り付けられたと思っても、次の朝、園に行ってみると、風などで、新しい芽が欠けていて、がっかりすることがしばしばです。したがって、 この1つ1つの新芽を、伸びていくに連れて、外の支えに取り付ける作業(=枝の誘引作業)は、困難を極める部分で、全体が完了するまでには、1週間以上かかります。
5月中旬:摘穂芽かぎが、一応出来上がると、1つの芽から出た新芽には、かなり先まで房の穂(=花穂)が着きますが、健全な樹の場合、根元から4つ目か5つ目の節に最初の花穂が着くので、基本的に4つ目の節の穂が、真っ直ぐで、形の良い房の穂であれば、それを1つだけ残します。この辺りの房の穂が、花が咲いた後、果粒が残りやすく、成育的にも丈夫で、これを実際に実らす房にするのです。そして、他の房の穂はすべて摘んで取り除きます。これも、他の房へ養分が無駄に使われるのを防ぐためです。
中旬〜:結果枝の誘引作業
摘穂が一応出来、結果枝の全体の4割程度が、ビニールの屋根ふちに達して来ると、誘引線への取り付け作業となります。誘引は、朝など水分の張り切った状態のときは、結果枝がすぐぽきんと折れてしまいます。枝が萎えて、柔らかくなる晴天の午後から夕方までくらいが誘引し易いのです。折れてしまうと、それでお仕舞いです。
下旬:花穂(=房の穂)の切り込み摘芯
 1つ残した房の穂も長いので、その穂の先端を3.5cmだけ残すよう、上の部分を切り取っていきます。この3.5cmが、最終的に、約500〜600gの完熟の房となるのです。したがって、ぶどうも、実際の房として使うのは、1本の枝について、数ある房の穂の中の1つだけで、しかも、その房の穂の先端部分の3.5cmのみなのです。これら2つの作業も、すべての枝にわたり、更に、残すすべての房の穂について行うので、大変な時間がかかります。
摘芯開花1週間前(5月27日頃)から開花はじめ(6月4〜5日頃)までに、養分が枝の伸張に流れるのを防ぎ、結実を確保するために、残した房の着いた枝の先を,(枝の強弱にもよりますが)普通の枝では房先8枚目の葉のところで切除します。
6月初旬〜中旬〜下旬初め 花穂が満開となると3日以内に、種抜き処理をし、その後、果軸を5〜6cm(=果軸の決定)にし、満開後15日以内に果粒肥大処理を行います。更に、その後、最終的に着ける房の数を適正まで抑える房摘み(=摘房)実施。また、摘芯〜果粒肥大処理までの間に、房を着けている枝の各節目から出る副梢を、房への養分を確保し、他の部分に養分が流れないようにするため、房から基までは葉2〜3枚、房から先は葉1枚のところで切除(=副梢管理)します。果粒肥大処理以降〜果粒軟化期(7月10日頃軟化開始)は、強い副梢のみ先端を軽く摘芯(=めくら摘芯)するにとどめ、他は切除を加えない。根に悪影響があり、枝がいつまでも伸び(=枝の遅伸)、養分の集中が妨げられ、房の品質低下につながるということです。果粒軟化以降も強く伸びる副梢は、満開後60日頃(8月5〜6日頃)腰〜膝の高さで切除します。
6月下旬〜7月中旬:房の仕上げ整形と袋掛け だんだん大きくなってきた房が、最後に完熟したとき、全体として、なぜ肩できれいな円錐形になるよう、房の形を整えていく作業。 (1)摘粒:飛び出た粒や、内向きの粒、小さい粒など不恰好な粒を除去して行きます。(2)玉抜き:最終的に、房が出来上がったとき、粒がお互いに押し合って、潰れたり、変形しないように、粒が大きくなる先の姿を見計らって、粒の間に適度の隙間を作るために、混み合うと考えられる箇所の粒を適度に摘み取っていく作業。  (3)直し粒の間の凹凸や、大きな隙間ができないように、必要な箇所の粒を動かして、果粒の並べ替えをする行く作業。 これら、どの作業も粒が、どんどん大きくなっていくので、時期を失すると、ハサミが粒の間に入らなくなったり、粒が動かなくなったり、他の粒を傷つけることになるので時間との競争です。すべての房について、これらの作業を行い、玉抜きなどは、1度では、不十分で成長につれて2〜3度見ていく必要が生じます。 約3週間の作業で、その間、手と顔は、上を向きっぱなしということになります。 これが終わると袋かけです。  袋がかかると、やっとしばらく手間作業からの解放となるのです。
 7月中旬袋掛けが終わる頃には、粒に着色が始まります。梅雨明けとともに、雨に当たることも少なくなるし、より日光を得るためと、暑さで、房が蒸れるのを防ぐことと、昼間と夜間の温度差を得るために、ビニールの屋根を撤去します昼夜の温度差があればあるほど、着色が促進されるのです。(夜間の温度が24度以下で、着色が促進される。)
お盆前には:袋の中の房が濃紺に着色し、やがてだんだんと糖分が増してき、酸味が抜けてきます 8月下旬から:完熟を迎え始め、10月初旬まで、自然の恵みを味わうことができるのです。
 9月中旬:礼肥え 房を採り終える前に、N・P・Kを含む即効性有機肥料を,それぞれの樹に施し、樹勢の回復と次の年への力を養います。
 10月下旬〜10月末までに:次の年の豊作と良質のニューピオーネを期しての土作り
 房を採り終えると、10月下旬から11月初旬にかけて、約10日間掛けて、次の年に備えての、土作りをします。 最初、苗木を植えたときは、根のための円形の土盛部分は、苗木の外側、半径75cmですが、そのあと成木を迎えるまで以降4年間、毎年50cm幅で、円形の土盛部分を拡張し、根の張りに備えなくてはなりません。また、その土盛部分は、根が張りやすくするために、地面を30cmの深さに耕します。 最終的には、土盛部分は直径6m弱となります。ここで、ぶどうの樹はしっかり根を張り、水分と養分を吸収し、日光の力で、立派な房を着けてくれるのです。 成木になってからは、毎年、直径6mの土盛部分を4年で1周できるくらいの間隔で、深さ40cm・幅40cm・長さ1〜2mの溝を2本ずつ、樹の幹から1.5m部分の外側に堀り、養分の補給や土壌を根に適した状態に保つ土作りをします。 土作りに使用するのは、養分が土中に上手く保持され、適切に使われるように、土壌を適切な状態に保つための堆肥と土壌の酸性度(PHが6.5前後が適正土壌)を和らげるアルカリ分45〜48%の土壌改良アルカリ性有機肥料です。これは、アルカリ成分の他に、マンガンとホウ素などの微量要素をわずかと、リン酸・苦土・けい酸を含む有機肥料で、土盛部分の外周を30cmの深さに掘り起こし、管理機で掘り起こした土を細かくし、堆肥とこれらの土壌改良肥料を混合し、次の年根が伸張する50cm幅の土盛部分を新たに作ります。この土作りが、次の年への第1歩であり、一番大切なところなのです。 ここをきちんとしないで、良い結果を望むことはできません。しっかりとした根を作ることが、一番大切なのです。そして、その後、新しく作った部分を含めて、土盛部分全体に、次の年用の基肥(N・P・Kを含む有機肥料)を施肥します。あとは、落葉が全部終わってから、集めて焼くなり堆肥にするなりして落葉処理をします。

質 問
    ニューピオーネの甘い美味しさは、どのようにしてできるのか。
答 え
   
圃場の場所・土質・日当たり・水はけ・土壌の成分の状態など、さまざまな条件に左右されますが、樹に対する条件が適正に保たれていれば、1本の樹に着ける房の数・大きさ・日照量・土中のマンガンなどの微量要素などが、各房の糖度がきちんと得られる上での一番大きな要因と考えられています。したがって、適正な土壌の状態を保ち、1本の樹に対しての、生育上、適正な房の数と大きさを維持しておけば、日照量が多く、夜と昼間の温度差がしっかりある年には、着色もよく、糖度の高い良質のニューピオーネが、自然の力でできるのです。

                        "園主より”
「あのぶどうは、美味しかったですよ。是非とも、またお願いします。」 と言っていただけるお客さまを、全国に静かに広げたいと思っていますので、よろしくお願いします。

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