東部国境に広がる大湿地帯
中華人民共和国黒龍江省の省都ハルピン市。
ハルピン東駅を出発した列車の車窓には、まもなく、
日本の国土ほどもある大湿地帯が広がります。
旧満州の大地に点在する街々を、
一本の鉄路がしっかり繋ぎとめ、
国境まで15時間をかけて、
列車がゆっくりと走っていきます。
日本関東軍が築造した
旧ソ満国境の「虎頭要塞」(ことう ようさい)は
中国とロシアを隔てる国境の街、
黒龍江省の最東端・虎林市にあります。
大河アムールの支流、
国境線が通るウスリー河を隔てて
中国側の大湿地帯に点在する
標高150m程のなだらかな山稜の地下を
鉄筋コンクリート構造のトンネルが
数kmにわたり貫いています。
戦後半世紀以上経た現在も
当時の様相をそのままとどめています。
一兵士の書いた執念の記録がきっかけとなり、
関東軍の最高機密とされていた、ソ満国境線に広がる
巨大な地下軍事要塞群の存在が明らかにされました。
数次にわたる日中共同学術調査が行われ
両国の市民・学識経験者と報道機関によって
悲惨な戦争の歴史的事実が解明されつつあります。
2000年、現地には博物館が建設され、
日中露三国の恒久平和を願う、国際的な交流が続いています。
中華人民共和国・黒龍江省 東部国境地帯に広がる大湿地帯と旧満鉄・虎林線の軌道