――”エグリゴリ”って天使の名前だったんだ・・・・ 以前武士の家で聞いた言葉。 今はアルがその言葉を呟いている。 ――天使。 とてもではないが、アレだけの虐殺行為を繰り返す組織に 似合うとは思えない単語。 だがアルは半ばウンザリと、しかし何かに納得しかかったような 複雑な表情で、武士の言葉を反復していた。 どうやら先日の“アザゼル”とかいう名の『鉱物生命体』について 色々と考察している途中に思い出したらしいのだが・・・・。 「アザゼルはヘブライ語で『神の強者』を意味する言葉を語源に持ち、 地上の人間を見張る役目を負った“見張る者(Watchers)” もしくは“グリゴリ”と呼ばれる者たちの指導者で、人間を監視することを 使命としながら地上の美しい娘たちに魅了され、地上に降り立ち彼女たちを 妻にめとってしまった――だったかな」 朗々と暗唱するアル。 それをまた、少し伏し目がちに行うものだから始末が悪い。 (・・・・睫毛長いんだよな。意外と・・・) 続く言葉にも軽く頷くことで、さも聞いているような素振りを返すが、 実のところアルの話しは半分も聞いていなかった。 いや、確かに聞いてはいるのだ。 ――アルの声を。 アルは何かを説明するとは、酷く透明感のある、妙にハッキリとした声で喋る。 隼人はそれが聞きたかったのかもしれない、と考えた。 「アザゼルが教えたのは剣や楯などの武具、金属の指輪などの装飾品、 化粧の仕方で、これにより男たちは戦い争うことを覚え、女たちは派手に装い 男たちに媚びを売ることを覚えたという・・・・」 言葉を切って、不審気にこちらを見る瞳。 一瞬。 息を飲むような・・・・そんな反応を返してしまったかもしれないと、 半ば本気で慌てた。 しかしアルはそれに気付くことなく首を傾げる。 そんなたわいもない仕草に、一々見入ってしまう。 「僕の話を聞いているのか?」 珍しく反応の鈍い隼人に訝しげな視線を向けて。 「聞いてる」 一言。 軽い拳骨と共にそれだけ伝える。 (・・・ヤベ。今回は俺から頼んだんだった・・・・) 今更ながらに思い出し、悪ぃ、と謝罪すれば、眉間に皺を寄せて、 わざわざ君が聞きたいと言うから・・・・と文句を言いつつも再び解説を 再開してくれる。 「―――グリゴリ・・・・エグリゴリと良く似た役目を持つあの組織の やっていることは、よく似ていると思わないか?」 「・・・?」 「アザゼルは、地上の人間に戦うことを教えた。その為の武具を教える ことで・・・ね。 ARMSは、アザゼルから与えられたものじゃないのか? ・・・・現にアザゼルは高槻の魔獣に共鳴した」 だからエグリゴリの創設を促したのは、アザゼルだと言いたいらしい。 (・・・・夢のない“天使”だな・・・・) 言葉の裏の意味を汲み取って、渋い顔を見せる。 隼人の浮かべた表情に微苦笑しつつ、アルは更に言葉を綴った。 「まだ続きがあるんだ。 地上の美女と彼等の間に産まれた子供は巨人で・・・・地上を蹂躙したらしい」 嘲るような顔がかんに障った。 隼人の手から放たれる、無言の一発。 「全く。何でそんなに手が早いんだ、君は!」 憤慨やるかたない、と言う声で怒るアル。 頭に手をやって、訴えるその表情。 (・・・・でも可愛いんだよなぁ・・・・) 自分でも末期だと実感している感情。 アルが時折浮かべる、あの嘲るような表情は既に癖のような ものだということも知っている。 それがエグリゴリに所属していたときに身に付いたものだろう、 ということも。 だから余計に、あの表情を見ているとムシャクシャする。 (・・・・嫉妬・・・・・とか言うんじゃねぇよな・・・) 隼人が真剣に悩むように唸ってみせれば、アルも再びモニター に向き直る。 機嫌を損ねたのか、それ以上説明や見解を口にしないアルの 背中を見て、隼人も腰を上げた。 |
「天使・・・か」 今の自分達とは程遠い場所にあるような言葉だと思う。 (別の意味じゃ、近いかもな) 時には物騒な思考も巡る。 とてもではないが天国になど行けないだろうに、と思ったりもして。 我知らず溜息が漏れた。 軽く頭を掻いて、台所へ足を伸ばす。 手元で良い香りを薫らせる紅茶を入れ、アル用のシュガーを 用意しようとして――ふと、思い出した。 棚の中を探って、目当てのものを引き出す。 それは、手の平に何とか収まるぐらいの小瓶だった。 ラベルはフランス語で書いてあり、隼人に読めるものではなかったが 意味だけは知っていた。 ――天使の羽根―― 確かそう言う名前だった。 可愛らしくラッピングされたままのそれを解き、2つセットにしてティーソーサーに 乗せる。 当然それを買ったのは、隼人でもアルでもない。 美沙おばさんが、お土産としてくれたものの一つだ。 「ま。折角だから使わせて貰うか」 その足でまたアルの所へ戻って、声を掛ける。 「・・・・ありがとう・・・・?」 無言で差し出せば、お礼と共に問いかけるような目が隼人を見返す。 「天使の羽根、だってよ。前に美沙おばさんがくれたんだ」 肩を竦めて、答える。 「ふーん・・・。何だか、揶揄的だな。天使には、綺麗なイメージが つきまとってるのに――」 「俺には、お前のイメージだけどな」 皮肉ったことばかり口にするから、隼人はそう言って遮った。 カップに付けた口を離すこともしないまま、呆然と隼人を見上げるアル。 「何だかんだ言っても・・・・・俺は天使のイメージを変える気は、全然ねぇな」 アルの手からカップを奪って、1つキスを落とす。 「・・・ば・・・馬鹿じゃないのか!?」 茫然自失状態から復活して、今度は首筋まで真っ赤に染めて わめき出す。 それが可愛くてたまらない、というように隼人が笑えば、 アルは更に顔を赤くして膨れてしまった。 それでも、隼人の目に映るアルは年相応の子供のままで 天使のままで――― |
は〜〜い、逃げ出したいほど恥ずかしいタイトルでコンニチワ(爆)
何だか相変わらず2人とも別人チックで、本人既に開き直ってます。
そのうちチェーンメールとか来そうデスねー(滝汗)
取り敢えずコレは合同誌に載せる(た?)作品です〜〜。
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