雪と桜





 その日は朝から雪が降っていた。
 暦の上での季節は春。4月も半ばの頃だ。


「雪かよー・・・」
 嫌そうな声が台所に響く。
 隼人は冷える廊下を小走りに駆けてきた。
 暖簾をくぐるように台所へ入ってきた隼人に、これまた冷めた声が届く。
 「雨よりは良い。風もないし花もまだ散らないだろう?」
 慣れた手つきで急須を傾け、アルは言った。
 買い物に出るのに雨は向いていない。だが雪は積もりすぎなければ許容範囲だ。
「まぁな」
 軽く相づちを打って、湯飲みをあおると隼人は一心地ついたようだ。
 それでもまだブツブツと文句は言っているが。
 どうやらARMSには防寒機能は付いていないらしい。
 まだまだ研究が必要なようだ、とアルは内心呟きつつも、窓の外を眺めていた。

 白く粉雪がちらついている。風はほとんど吹いていないらしく、ゆっくりと空から舞い降りてきている。
 積もるだろうか?いや、積もってもすぐに溶けて消えてしまうのだろうけど。
 軽い感傷を憶えて、けれど視線を逸らすこともできなくてため息が零れた。

「この雪、今夜は吹雪くってよ。信じらんねぇ」
 半絶句状態で隼人は頭を抱える。
 TVのニュースは無情にも季節外れの積雪量を報じていた。

「この調子だと、今日の予定はポシャるな」
 吐く息で窓が曇る。そこを手の平で拭って。
 外へ出れば確実に息は白く染まるだろう。
 それを思うだけで身震いもするが、ここ数年では珍しい事だと思うと、異常気象ではないのか?と疑いたくもなったり。
 相変わらず学者肌のアルであった。

 穏やかな時間が流れる。
 うつらうつらとしかけて―――
「・・・・今から、行くか?」
 ぼそりと呟いた隼人に、アルは目を剥いた。
 いくら雨よりましとはいえ、外は雪だ。
 風がないとは知っているが、わざわざ無理を推して行くほどのことではないと思う―――花見になど!!

「花見なんか天気の良い日に行かなくてどうする!?」
「だって今日の予定丸潰れじゃねぇかよ。つまんねぇ」

 驚くアルをほったらかして、隼人はブーブーと文句をたれている。
 そんなに口先を尖らせてまで苦情を吐くことか?

「夜になって吹雪いたら花が散っちまうかも知れねーじゃん」


 おまえと一緒に桜が見たかったんだよ。


 そんな言葉が白く空間に溶け消える。
「・・・・バカ。君は本当にバカだな」
 肩を落としてしみじみと。
 しかしその声には、期待や歓喜も混じっている。決して蔑む感じではなかったのだ。

「昼食は済ませて行こう、散歩程度になるけど。僕だって花見はしたいんだ」
 しょうがない君に付き合ってあげるよ、と笑って。
「おう。任せる」
 ガラにもなく照れながら、隼人はアルの背をポンと叩いた。



to be countenude......?


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