| No title 2 |
会いたいと思ったときに会える幸せ。 会いたいと、思っても会えない人のほうが多い。 当然そういう場合も。 最悪、傍に居るのに会えない事。 それがどれほどの恐怖をもたらすのだろう。 フォート大に特別研究員として招かれて、もう3ヶ月が経過していた。 何だかんだ言っても所詮自分は科学者なんだと実感する日々が続いている。 ――研究が楽しい。 それは正に実感だ。 エグリゴリはやっている事こそ最悪だったが、その為の研究は最高水準だった。 当然、設備も研究の為の人員も。 あの頃よりは劣るものの、やはり研究室は良い。 だけど。 だけどやっぱり物足りない。 原因は分かっている。 たった一つの欠落。 「会いてぇよ」 今日も電話口から隼人の声が届く。 だけどその思いはアルも同じで。 『会いたい』という言葉を寸前で飲み込む。 合衆国に戻って研究を続けるというのは、自分で選んだ道だから。 相談すればきっと困らせてしまうことは分かり切っていたから、黙って出てきた。 泣き言は言えない。 一言でも漏らせば最後、絶対隼人は渡米してきてしまう。 そういう男だから。 多少の辛さは我慢する。 日本での、彼の生活を壊したくないから。 どんなに傍に居ても、すれ違ってしまう日々ならば、いっそ離れていたほうが気が 楽なのではないかと。 思惑は見事に外れた。 『会いたい』という気持ちは日に日に膨らんで、気がつけば電話の応酬になっていた。 取り次がなくても良いのに取り次がれる直通電話。 何でこんな情報ばかり手に入れられるのだろう。 重三爺さんから全て聞き出したのだろうか。 馬鹿のくせに。 バカのくせに。 ・・・・・・・馬鹿だから? きっとあの馬鹿だからこんな事態になっているのだろうけど。 悔しいけどそれが嬉しいのだから困る。 目下、悩みの種だ。 研究テーマでもこんなに困ったことはないんじゃないだろうか? アル=ボーエンともあろう者がなんて失態だろう。 会いたい。 会えない。 だから愛しさは募る・・・なんて結局は言い訳だ。 こんなにも苦しいのに。 胸が締め付けられるのに。 それでも。 傍に居るのに触れられない日々よりは楽かもしれないだなんて考えてしまう。 一体いつの間にこんな考え方をするようになってしまったのか。 何時からこんなに他人に依存するようになってしまったのか。 ジェフに会わす顔がないとは事のことだ。 カシャンと音を立てて受話器を置く。 いつだって電話が途切れた後はしばらく手が震えている。 自分で望んだはずなのに。 追いかけてきて欲しいと思ったことだってあるのに。 だけど来て欲しくない。 隼人の生活を壊したくはなく、それでも情けない依存心が残る。 一人で立つことを忘れた訳じゃない。 それだけは確かな事実。 「ボーエン教授、その歌お好きなんですね」 「歌?僕が何か歌っていたのか?」 資料を運んできた助手の言葉に首を傾げる。 無意識に、何かを口ずさんでいたようだ。 「・・・・・そういえば時々あのバカもそんなことを言ってたな・・・・」 「誰ですか?バカって・・・・」 「独り言だ。気にしないでくれ」 好奇心に彩られた深い追求を避ければ、扉から別の助手が軽いノックと共に顔を覗かせた。 「どうし・・・・」 「教授にお客ですよ。何でも日本から来たとか――」 アルが言い終わる前に、扉のトコロの助手が口を開いた。 ただしそれすらも途中で掻き消すほどの衝撃がアルを襲った。 「このクソガキ!!」 「は・・・・っ隼人!??」 突然の来訪にとっさの対応が遅れる。 しっかりと隼人の腕の中に抱き込まれてから、慌てて状況理解の為にアルはその優秀な 頭脳をフル回転させたのだった。 何でココに隼人が? ・・・・・っていうか、このバカがココに居るっていうことはさっきの電話の相手は?? あぁ、携帯電話とかって手があるな。 いや、それ以前に学校はどうした?! 考えれば考えるほど疑問が浮かんできて、考えをまとめるどころではない。 「ずーっと考えてたんだけどよ。俺そこそこ英語出来るし、このままこっちの大学に移籍したから。 宜しく頼むぜアル教授!」 未だに思考のループを巡るアルを尻目に、肩をポンッと叩き、隼人はサラリと爆弾発言を 残しつつも手近な椅子へと腰掛けた。 日本に居た頃のマイペースっぶりで助手の入れたコーヒーを飲んだりしている。 ・・・・・・? ・・・・・・・・・・・・。 「・・・・・・何だってぇ!??」 アルの絶叫が近隣の研究室を震わせたのは、その数瞬遅れだったという話だ。 |
続いているのかいないのか。 続くんだったら次は合衆国同棲編?(爆笑) |