決定青年

− 青年 隼人の現状把握 −



 結構落ち着いた日常を送ってると思ってた。
 うちに入籍を拒否したクソガキも同居状態で、何だかんだで料理が上手かったり実は家庭的だったり。
 変に意外な一面が見えてきて楽しくなってきたばかりだったというのに。


 折角全部が終わったと思ったら、まだ黒いアリスが残ってやがって。
 あまつさえカツミの中に潜んでたりして。
 ツイてないなんてもんじゃないな、カツミの奴・・・・。
 しみじみそんなことを考えてる自分もずいぶん冷静になったものだと、内心嗤いつつ。
 モデュレイテッドARMSを移植された奴らが宣戦布告してきたりもしやがって。
 あぁ、ホントにまだ決着が付いてねぇって事か。

「ARMSの無いあなた方へ挨拶代わりですよ」
 アメリカでの一戦以来完全に沈黙を守る俺達のARMS。
 それを知ってて喧嘩売ってきて、それで負けてりゃ世話がない。

 ARMSの威力に笠を着るだけじゃARMSは扱いきれない。
 それが俺達の学んだこと。
 ARMSを移植された者の悲しさとか、そういったモノも判らない、まるで新しい玩具を与えられた子供のようなコイツ等には腹に据えかねるモノを感じる。

 久し振りに会ったキース=バイオレットはどうやら高槻のオヤジと連絡取ったりしてたらしい。
 オイオイ美沙おばさんに怒られんじゃねーの?
 なんて他人の心配もしてみたり。

 軽口叩くのもこれで最後。
 気を引き締めて、じじいに最後の手合わせを頼んだら、意外とあっさりOKが出て。
 夜が明ける頃にはボロボロにされてたけど、これで活も入った。

 プログラム バンダースナッチがどんなもんだろーが、全力で叩き潰してやる!!


 じじいと早めの挨拶を交わして、玄関を抜ければそこには見慣れた生意気面が待っていた。
「よぅ、はえぇな」
「朝一番は『おはよう』だろう?挨拶もまともに出来ないのか、君は・・・」
 片手を上げて簡単に挨拶をしたら、清々しい朝一番だというのに重苦しい説教を頂いた。
「オハヨウゴザイマス」
 ムカツキついでに棒読みしてやったら、それだけで満足そうに頷くから、釣られて相好が崩れた。
 折角入れた気合いもどっかに飛んでいきそうだぜ・・・。
「プログラム バンダースナッチだっけ?」
 浮かべる笑顔の中の、アル特有の冷え切った声。
「あぁ」
 短く肯定してやれば、そうか、とだけ返される。
 ついてくると、前のように抵抗されるかと思いきやそんなこともなく、ちょっと拍子抜けではあるけれど。
 今度ばかりは庇いきれないだろうから。
 今度ばかりは前回のような犠牲を払いたくないから。

 いつもと変わらない言葉遊びをした。


「じゃ、行って来るぜ」
「勝手に行け」
「冷てぇ!ちゃんと大人しく待ってろよクソガキ!!」
「待っててやるからさっさと行って済ませて来い。馬鹿」
 しょうがないから待っててやる、と。
 相変わらず生意気な態度で手を差し出してくるから。
 お互いの手を叩き交わして、隙をついて唇を奪う。
 軽く啄むようにキスをして、腹への一発を受け止めながらもう一度『行って来ます』の言葉を残して。


 必ず帰ってくるとは言えないのが現状だけれど。
 それでも1人にしてしまうのは忍びないから。
 愛しい少年の心を孤独にしない為に、ここへ戻ってくることを心に誓う。

「さぁ、行こうぜ!!」

 たった5人の兄弟姉妹だから、誰一人欠けることなく戻ってこれるように最善の努力をしよう。



推定少女  −少女 キャロルの恐怖−

仮定少年  −少年 アルの未来予測−



一歩前へ