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七夕。 それは年に一度、引き裂かれた恋人・・・・もとい織り姫と彦星が会うことの出来る日。 これは、とあるパラレルワールドでのお話です。 「やっっっっっっっとこの日が来たかっ!!」 蕩々と流れる天の川の岸で、一人の男が握り拳を固めて気合いを入れていた。 男の名は隼人・・・・ではなく彦星。 愛しの織り姫から引き剥がされて牛・・・・の世話をせっせとこなしていた一年を振り返り、今年こそはっ!!と無駄な決意を固めているところであった。 エグリゴリのボスと称する正体不明の人物に、アル・・・・・織り姫とのラブラブ生活を奪われてから早幾年。 何だかんだ言って研究心・・・・という名の機織りに心血を注ぐ織り姫と一緒に居たいのは、やはり恋する男の性なのか。 今年こそは、今年こそは・・・・と願いつつも、ついつい時間の経つのを忘れていちゃついて仕舞う二人は、毎年一夜の逢瀬のみで一年を過ごしていた。 「今年も一年。長かったよな〜〜・・・・けど、なんだかんだ言ってアルのやつ、向こう岸でちゃんと待ってやがるしなっ!今年は雨も降ってねぇからカササギにも邪魔されねぇし!!」 雨で天の川が増水した年にはカササギの扮装をした武士・・・・・白兎が橋渡しをしてくれるのだが、そんなカササギに恩を仇で返すようなセリフを吐きつつ、足早に天の架け橋へと向かう彦星の後ろ姿はいっそすがすがしい。 一方、対岸でアル・・・・もとい織り姫は考えていた。 「あのバカは今年もまたボスに剣を向けるだろうな・・・・でも僕は研究もしたい・・・・。けど僕だって・・・・」 先ほどから堂々巡りの思考を続けつつ、しかしその足はやはり天の架け橋絵と確実に進んでいた。 ―――所詮はラブラブの二人であった。 その頃のエグリゴリ。 「僕はカツミを渡さない!!」 「ストーリーを間違えているわよ、グリーン。今は彦星の暴挙をどうするかという事よ」 「毎年毎年懲りない奴だな・・・」 「そんな男に兄弟宣言しておいて、今更だろう?レッド」 「確かに今更だが、今年の対策はどうするか、ということの方が問題だ」 会議室では、キースシリーズが雁首揃えて話し合っていた。 その割には今一内容は薄いようだが・・・・。 一人原作から離れられないグリーンを無視して、対彦星作戦は着々と進んでいった。 「アルッ!!」 「・・・隼人・・・・」 天の架け橋の中央部でしっかりと抱きしめ会う二人の姿は、とても地上からは見えない。 世のハヤアラーには涎ものの光景が繰り広げられていた。 よくよく目を凝らせば、エンジェルジューゾーが笛を吹いて祝福。 すでに誰にも邪魔できない世界が展開されていた。 「アル・・・俺、一年じっくり考えてみたんだけどよ。やっぱりオマエと一緒に居ないと駄目だ・・・。本気で・・・・・」 少し身体を離して、彦星が囁く。 「・・・・・それは・・・・僕だって!でも・・・・・・でも僕は・・・・!!」 言葉を吐き出して織り姫は、俯いて彦星の胸元を強く掴む。 白く細い指が、彦星の衣に深いしわを刻んでいた。 細かく震える肩を改めて抱き締め、落ち着かせるように背中を叩くと、ひとまず織り姫側の対岸へと移動する二人。 その動きを、逐一チェックする者が居た。 「若いな・・・・」 人物の名は高槻巌。 特に意味のある行動ではなかった・・・・・。 「たのもーっ!!」 まるで道場破りだ・・・・、などという言葉は空気と共に嚥下して、織り姫は彦星と共に場違いなビルの入り口にいた。 周囲はまるで雲の上と言った風情なのに、このビルだけが自棄に空々しく存在感を主張していた。 彦星曰く『遠慮しろ』。 ビルとしてもさぞ不愉快だっただろう。 ―――しかし一向に入り口が開く気配はない。 「この自動ドア、飾りか?」 訝しむ彦星の隣で織り姫はまだ考えていた。 ・・・・アル・ボーエン―――とにかく考える少年であった。 「毎年のことだけど、二人で居ると仕事をしないから駄目だそうよ」 ピーガーという特有の音と共に、ヴァイオレットの声が響いた。 どうやらスピーカーらしい。 「エグリゴリが何言ってんだ!元々真面目に仕事してただろーが、俺たちはっ!!」 鼻息も荒く喚く彦星。 確かに原作に沿えば引き裂かれるべきは高槻涼と赤木カツミだろう。 しかし二人は至って平穏無事に暮らしている。 ・・・・何処でとは言わないが。 「ふふ。その辺りはブラックにでも掛け合って」 意味不明の一言を残しつつ、スピーカーは切れた。 織り姫は溜息も出ない様子で眉根を寄せるしかなかった。 「・・・・・考えたんだけどよ・・・」 改めてラブラブワールドを展開しつつ、彦星は呟いた。 「何だ?」 「別に、俺達ここに居なくてもいーんじゃねーかって。一緒に地上にでも降りるか?」 「・・・・・・・」 突然の提案に、言葉も出ない織り姫。 しかし世界は大らかだった。 ――――某月某日藍空市。 「・・・ガキがえらそーに・・・」 「子供子供ってバカにされても困るなぁ・・・・」 それは運命の出会いだった。 |