a virgin consecrated
to a deity


「物凄い賑わいだな」
 些か感心したような、それでいて呆れているような声でアルは呟いた。
「まぁな。一種のイベントみたいなもんだしな」
 同じく辟易とした呟きを漏らす隼人。

 二人で過ごす貴重な休日――お正月――は、重三爺さんたっての頼みで
見事潰されたのであった。

「僕も別に信仰心があるわけじゃないけどね。あっちとは違う盛り上がり方を
すると思っただけだ」
 あっちとは当然ステイツのことで。
 アルは決まり事のように教会で過ごしていた年の初めを思い出していた。
 ――まだ家族4人が揃っていた頃の、古い思い出ではあったが。
「アメリカの方がよっぽど賑わってんじゃねーのか?」
 率直な感想。
 隼人のアメリカのイメージは如何にもお粗末なモノらしく、TVで流れている
情報を鵜呑みにしたような言葉に、アルは眉間に微かに皺を寄せた。
「敬虔なクリスチャンはそうでもない。日本ほど宗教への関心が薄い国じゃ
ないのは知っているだろう?」
 返す言葉は厳しかった。
 隼人の疑問を軽くいなしつつも、選ぶ言葉は嘲るようなそれだ。
 瞬間顔を引きつらせつつも隼人も何とか受け流す。
 正月早々下らないことで喧嘩するのはお互いに願い下げだった。

 お互いに顔を見合わせて、改めてゆったりとした裾を掴んで御神籤の
整理を再開する。
 ちらりと泳がせた隼人の視界に、朱袴が鮮やかに映えていた。

 重三爺さんの頼み・・・・・それは巫女さんのアルバイトだった。
 何でも、近所の神社で巫女さんとして雇っていたバイトが1人風邪で倒れ、
人手が足りないと泣き付かれたらしい。
 げに恐ろしきは家長の人徳。

 ――当初手伝いに行くのはアルだけだったが、朱袴を履いて欲しいという
先方の提案に慌てていた隼人も、いつの間にか人数に入れられていた。
 結果。2人揃って仲良く御神籤整理に勤しむことと相成ったわけである。
 とは言え、正月も3日になると参拝客も減ってくる。
 元旦などは正に息を付く暇もないほど扱き使われたため、流石のアルも
最後には英語でしか喋らなくなっていた。

「それにしても意外だった」
 片付けの手は止めることなく、破魔矢を抱え上げるアルを眺めて隼人が
ぼやいた。
「主語と述語はハッキリと言えと何時もいっている」 
「ぁあ・・・・。いや、袴が・・・・・違和感無いなって思ってよ」
 意図を測りかねて、抱えた破魔矢を押し付けつつ先を促せばそんな言葉が
返ってきた。

 ―――それは僕が女顔だって言いたいのか・・・・・?

 青い服は男の子、赤い服は女の子。
 そんなイメージを彷彿とさせれたアルの機嫌は一気に急降下した。
 不機嫌そうにしかめられた眉間に隼人は気付かない。
 既にアルに背を向けて歩き出した隼人が身につけているのは、神主と
同じ形式の袴だ。
 色は白ではなく紺に近い感じではあったが、少なくとも“巫女袴”でないのは
確かだろう。
「なーに難しい顔してんだよ」
「別に」
 ある種男としての自尊心を傷付けられたアルは、隼人を置き去りにして
その場を足早に立ち去った。
「ぁっ!お・・・オイって!!」
 後に残された隼人は、破魔矢を放り出して追い掛けることも出来ず、途方に
暮れることとなった。
「・・・・・・これ片付けとかないと、きっともっと不機嫌になるんだろうしよ・・・・」
 傍らをすり抜ける北風は酷く冷たかった。


 結局隼人が割り当てられた分担を全てこなして戻ったのは日の沈んだ
あと。
 薄明かりの灯る本殿の扉を勢い良く滑らせる。
「オイ!いい加減に機嫌直せよっ・・・・・て、ぁ」
 一足先にアルが戻っていると聞いた隼人は、開口一番硬直することと
なった。

 仄かな蝋燭の明かりが、儚げな表情のアルを彩る。
 微かに赤みのさす頬が、微かに生気を感じさせていた。
 それは隼人の目に、まるで完成された一つの絵のような世界に映る。

 言葉もなく立ち尽くす隼人に気付き、アルは訝しげに眉を顰めた。
 瞬間。隼人は現実へと引き戻されて、ビクリとする。
「何だ?終わったのか?」
 蝋燭の火を吹き消しながら、アルはそう聞いた。
 不機嫌そうな言葉の中にも、心配げな響きが混っている。
「ぁ・・・あぁ。もう帰るぜ」
 呼びかけに曖昧に答えながらも、隼人は足早にその場を離れた。
「まいった・・・」
 口の中だけで呟いて少しでも距離を取ろうと焦る。
 後ろから少し慌てたような足音が聞こえるが、今は並んで歩くわけにはいかない。
 しかし、流石に早足と駆けるのでは速度が違う。
 この場合はリーチのさも大した助けにはならなかった。

 追いついたアルが衣の裾を引く。
「隼人?」
「何でもねぇ」
 顔を覗き込まれて、天を仰ぐ。

 ―――巫女さん姿がツボに入ったなんて言えるか〜〜!

 真っ赤になった顔を見られまいと足掻く隼人と、何事かと慌てるアルの姿は
帰宅まで続いたという・・・。

                            
オチて無し(爆)

あ・・・・アナタ達一体何がしたいんですか?(涙)
出来れば私に教えてプリーヅΣ(>△<)
以前みのりさん宅のお風呂場でも言っていた
ヘッポコ『朱袴』でした!お粗末〜〜。
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