宵 待 草


 暗くなるまで待ってから歩く。
 夕焼けの赤さが目に染みると感じながらも、その瞬間の際立って鮮やかな橙色に染まる空間に
言葉も無く酔いしれる為に。
 まるで絵画を鑑賞している時のように、現実感が薄れるのが良い。
 どうせ無価値な世界だから。自分にとっては。
 所詮ゲームだから。自分にとっては。

 だけど、ここに来ればアイツが見れるから。
 だからこんな、平素の自分には似つかわしくない時間を歩く。


 あの時―――
 神龍石を持って裏球から出るために大量のドラゴンを呼び出したあの日。


『ふざけんなっ!』

 有らん限りの憤りの込められた言葉が投げ付けられた。
 カンパーとかいうドラゴンの背にに乗って、戸岐まで届かない攻撃に苛つきながらも。
 群雲のごとく集まっていたドラゴンの集団の中にあって、それでもただ一つ
自分の所まで届いたコトバ。
 他のヤツらだって似たような事を喚いていたけれど、所詮は雑音。
 ドラゴンの羽ばたき一つで掻き消えてしまう程度の音のはずなのに。


「信じらんないよねぇ、あんな状態で聞こえるなんてサ」
 ただ一つだけ自分のもとに鋭く届いた言葉。
 そしてあの一途な瞳が・・・・・今でも胸に残っている。
 恋するヲトメでもあるまいしさ。気持ち悪いったらないんだけど。
 馬鹿みたいに街中でキーキー騒いでいる人影を眺める。

「何であんなのが気になるんだか・・・・」
 豆粒のように小さく見える町の住人の中でもハッキリ区別が付いてしまう。
 パーカーのフードが風に揺れているのが見える。
 こんな所、ダークスや純柴なんかに見られたら何て言われるか分かったもんじゃない。

 溜息すら漏れないこの状況の打開策を、自分は知っている。

 ハギワラ ダイスケだっけ?
 別に恨みがあるって訳じゃないけど、何だかアンタ見てると苛つくからさぁ―――
「この落とし前は付けさせてもらうよー」



 戸岐の身勝手な決心を、この瞬間の萩原は知る由も無かった。





無責任に終わる。



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