真実此処には救いが無い。





05 反乱組織








 一波乱あって、ネルが反乱組織に持ち帰った宝石は 透けるような蒼い髪に片目がケルベロスと同じ金色をした瞳の少女によって魔王の魂に一欠けらと認定された。
 そして、報告に上がった ケルベロスに奪われた宝石が魔王の魂の欠片だったという事も出先のニックスからの報告で明らかになった。

 ニックスがボスの元に報告に行っている間に、既に報告を終えたネルはケイニーとともに通路にたむろしていた。
 特に何をしているわけでもなく、ただ無駄口を叩くだけの無駄な時間潰しだったが。

 何でも屋との交渉から戻って以来 ケイニーは神経質そうにウエーブの掛かった毛先を指でクルクルと巻き続けて居る。
 それはイライラから来ているものだと気付いてはいたけれど。

 けれども、今日もあの愛らしくも小生意気で愚かなお犬様が どんな様子で一日を過ごしたのかが知りたくてしょうがなかったのだ。
 ネルにしてみれば『仕方の無いこと』、ケイニーにしてみれば『傷口に塩を塗る』とでも言ったところだろうか。


 ケルベロスには近付くな、だなんて厳しい事云うよね?


 壁にもたれながら、ネルは猫のように口角を吊り上げて笑う。


「で。ノラ君に泣かされたんだって?」
「泣いてなんか無いわよ!アンタも眼が悪くなったんじゃないの!??」

 物言いにも、内容にも表情にも腹が立つ と癇癪交じりでケイニーは反論した。
 しかし 髪を弄る手を止めて、噛み付く様は肯定しているようなもので ネルの眼は糸のように細められる。
 酷く、楽しそうに。


「その割には、今日の服。朝と変わってるよ?」
 髪型もね?

 チョンチョンと、指先で側頭部を指してみせれば 瞬間ケイニーの表情は固まる。
 外出時に着用していた購入したばかりのワンピースをボスに見て貰うのだと笑っていたのはまだネルの記憶に新しい。
 しかし、そんな記憶の中の表情と 今の表情は全くと云っても良い程重ならない。
 一体何を見てそんなに機嫌を悪くしたのやら。

 ノラ君 どうやらかなり戦い方を憶えてきたみたいだねぇ。
 まだまだ未熟なんだろうけど。
 まぁ、彼の場合 基本能力が馬鹿高いから 力押しでも相当なものだし。
 

「服も髪も、ちょっとしたトラブルよ!・・・・・それにしても、あのマガリ カズマっていう人間一体何なの!?」

 もう一つ二つ ネルが聞き出したかったノラの近況の代わりに、不機嫌さを隠すことなく むしろ怒りを滲ませてケイニーは彼の契約者の名前を口にした。
 彼女はその属性に良く似た性格をしていて、ボスに関わること以外の事は大概笑って済ませてしまう。
 女性らしいヒステリックさはあるものの、よっぽどの事がないと此処までは激高しない。


「何って・・・・カズマ君はケルベロスの契約者でショ?多少人間離れした感じだけど」

 今 ノラの一番近くにいて ケルベロスの魔力を一手に引き受けている、ネルにとって最も邪魔な位置に居る人物だ。
 当人同士は気付いていないようだが、ノラに対して相当の執着が見て取れる。
 唯の人間、と言い切ってしまうには多少肝が据わりすぎている感のある少年の姿を思い浮かべ ネルは苦笑した。

「あんな奴嫌い!大ッ嫌いっ!次に会ったら絶対殺してやるわ!!」
「まぁ、確かにノラ君への仕打ちを見ててもサドッ気たっぷりだもんねぇ。カズマ君ったら」
 だけどボスの命令も無視出来ないしね、と付け加えるのも忘れずに。

 腹立ちが治まらないというように、ケイニーは殺害宣告までして 拳を握り締める。
 そのあまり女の子らしいとはいえない姿を宥めて、自室へと見送った。
 反面ネルは自分以外にも『ケルベロスには拘わるな』というボスの指示を無視するメンバーを見付けたことに計算高く笑みを作る。



 反乱組織と銘はうっていても 決して一枚岩ではないし、思惑はそれぞれにあり また口にはせずに互いを欺き続けている。


 救いなど、本来 悪魔には必要はないのだ。

 ただ、自分が最後の勝者でありさえすれば。



「覚悟してよね、ノラ君。俺は君を手に入れるよ?・・・・どんな手を使ってでもね・・・・・」



 鳴呼、真実此処には救いがない。
 そして此処には救われるに値する者すら存在しないのだと、ネルは一人 通路の暗がりで伊達眼鏡を押し上げた。











反乱組織の内部構成ってどうなってるんでしょうね?
それにしてもキングは惜しいことをしたなぁ。
いっそ一磨さんに憑いてくれれば・・・・・・・・・という美味しい妄想もしたのに(涎)












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