「多磨緒」
「はい」

 名を呼ぶと同時に卓上へ置かれる湯呑み。
 いつの間に用意していたのか年季というやつか、間髪置かず差し出された其れに頷くでもなく手を伸ばす父。
 にこやかに笑ってその様を見守る母。

 ―――日頃から良く目にしている遣り取りだと思う。


 夢見がちな性格でもなければこれが普通だと思うほど幼くも無い。
 だが確かに、その距離感は一つの目標にはなっているのだ。

 食後の茶を啜りながら一磨の視線が横へ泳いだ。

 居心地悪そうに隣で足を伸ばすノラと築き上げるには、もう一手間 二手間どころではないのだろうが。

「……何だよ」

 不機嫌そうに顰められた顔が一磨の方を向く。
 わざとらしく吐いて見せた溜息への反応だが、それは決して注意を払っているからではない。

 ノラは一磨が苦手だからだ。
 嫌い、というよりも苦手 なのだ。

 そして一磨の両親も同じく苦手なのだが、双方へ共通する根の所は『理解の範疇を超えている』からなのだろう。
 同じ人間同士の認識ですら、一般の目から見れば一風変わっている真狩夫妻のこと ノラが理解出来るはずも無く。
 何だかんだで一緒に食卓を囲む状況が成立している今でも、初対面の時に感じた二人への得体の知れなさがノラへ不必要な緊張と居心地の悪さを強いている。

「……何だよ……っ」

 頭の中で一磨がくるりと思考を弄ぶ間、凝視されたノラが尚更落ち着かないように問いを吐く。

 ―――寧ろ問いに近い、のだろうが。

 しかしその表情の中には僅かに羞恥の赤が浮かんでいる。

 もう一息、という気はするのだが……。

 後は時間の問題としても、もう一歩先へ進んだ関係になっても面白いかもしれない。
 魔界と人間界の律を維持するために括られた契約など関係のない所で。

 躾け終わった犬になど興味はないのだけれど、これからそれを成して行くのは、面白いのだろう。きっと。


 だから今はもう少し―――躾不足で丁度良い。






躾不足です











寧ろ躾不足な所が可愛い盛りなんだと思うんですがどうでしょう。
躾完了で腹晒すノラ様も可愛いけどね☆(夜トークのノリで)

と、いうわけで『リライト』様にてお借りしていますお題でした。

躾不足って云うより―――馴れてなさ過ぎって感じやんなぁ(笑)








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