| 種の無い果実。 |
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そんな話をしたのは小学の頃だったかと思う。
「種無しの柿を貰ったんだ」 季節を表す果物を弁当に入れる親は、感じることの少なくなった季節感を必死で主張しているようにも見える。 果たして子供にそれが通じているかは甚だ疑問だったが。 「最近は多いな、そういった物が」 人工の産物。 人の手により異質に変化させられたそのオレンジ色の物体は、クラスメイトの箸に摘まれた生贄のようなものに感じた。 何故なら其れは、自然の摂理に逆らって 子孫を残すことも出来ないただ一代だけの存在だからだ。 「種無し? あぁ、そうだな。種無し葡萄とか種無しスイカとか・・・」 宙を眺めながら羅列していくクラスメイトを、揶揄するでもなく眺めていた。 深い意味は無かったのだ。 確かにその時、その問いには。 深くぬかるむ様な夜。 濡れた空気が室内を濃厚に埋め尽くしている。 纏わりつくような感覚は、事後だというのに ふとした瞬間に意識に滑り込んでくる。 消して、甘やかなモノばかりではないけれど。 「早く、どけっ!」 散々叫んだ後の掠れた声が、躯の下から響いてきた。 つい先ほどまで溺れていた解放の余韻など 全て打ち捨ててしまいたいと吠える声に、ワザとらしくため息など吐いて見せれば癇に障ったのかキャンキャンと吠え立てる。 自力で這い出すことも出来ないほど疲労しているくせに、口だけは相変わらず可愛げがない。 完全に退路を絶ってトコトン追い詰めるまでは、いつまで経っても自分の置かれている状況が理解出来ないようだ。 もう一度、高く啼かせてやっても良いかとも思ったが 流石にこれ以上は明日の行動に支障をきたすだろうという事は、恐らく当の本人よりも自分の方が正しく理解している。 「・・・よく吠える犬だ」 仕方なく退いてやれば、それでも耳聡く聞きつけたのか 視線が此方の動きを追った。 「ふざけんなクソボケ!オレ様は犬じゃね・・・ぃって!!」 反射的に威嚇しかけて、上半身を支えることすら出来ず再度ベッドに沈み込んだ。 くぐもった苦鳴にはそっと目を瞑る。 屈辱からか痛みからか涙の浮かぶ目、自重すら支えられない腕、捻ることも出来ない腰、若気の至りで片付けるには どうにも言い訳が効かない程の下肢のドロドロ具合だとか意思の伝達などとうに放棄された脚だとか。 そうしたのは自分の意志で、こうなる様に躾けてきたのも確かに自分で。 其れなのに時折 他人事のように感じる瞬間がある。 確かにあの時思った、まるで生贄の様だと。 人の手により齎された変化は、果たしてあの果実を食物以外の何かたらしめたのだろうか。 種を消されたせいで自力で増えることすら出来なくなった植物と、在っても何も産み出さす無駄に消費されるだけの種と。 果たしてどちらが より不幸だというのだろう。 「馬鹿犬、不幸か?」 傍らに腰を下ろして、思考遊戯の結果だけを言葉に乗せる。 しかも視線すら合わせずに。 「幸せに見えるのかよ!?・・・って言うか、考えたことねぇよ そんなの。バーカ」 答える駄犬も 嫌悪感丸出しで犬歯を覗かせるくせに、改めて酷く律儀に答えるものだから。 本当に馬鹿馬鹿しい事に頭を使っていると、妙に冴えた気分になった。 結局、種があろうと無かろうと人間に食われてしまえば同じ。 ならばせめて、この手に為る物だけは 何も産み出さない虚を埋めてやりたいとガラにもなく考えた。 「・・・・・・カズマ?」 不審気に上がる声に、生返事を返して。 思慮の足りない頭で それでも此方を伺う様子に愛おしさは募る。 伸ばした手に触れるのは、あの日の答えと 柔らかな熱。 −了
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ダイアリの方に晒しっぱなしにしていたブツです。 どうしよう………何か色々考えすぎて変な内容です。 それも何時ものことですが、ぐはー(;´Д`) 脱稿[2005年11月24日(木)] |