「・・・・・・・あぁ。そういえば、キスなどまともにした事がなかったな」 下世話な話題を提供していた好奇心旺盛な教室内が、空気を凍らせた。 「どんな物か試してみよう」 軽く室温が2度は下がったであろう問題発言に、当の本人は更に爆弾発言を投下。 何事もなかったように席を立つ颯爽とした後ろ姿に、誰とも無く呟いた。 「生徒会長・・・・・・・・誰か都合つく相手居るの!?」 「・・・・・・・・真狩・・・・・・・・・・・まだ日は高いぞ・・・・!!」 好奇心旺盛な中学二年生、彼等の人生は波乱に満ちていた。 |
2度目のキス |
たまたま教室で休憩時間を浪費していたら、思春期特有の下世話な話題を振られた。 キスとはどんなモノか。 どんなキスが好きか。 聞かれた瞬間は呆れたものだが、よくよく考えればあまり意識してみた事はない。 何せあの馬鹿犬相手ではどうにもそういった状況に雪崩れ込みにくいというか、持ち込みにくいというか。 特に、一度だけ弾みで口がぶつかった事件の後などは乏しい記憶力のくせに妙な警戒心の強さを見せて長い間距離を取って行動する素振りも見せていた。 照れ屋なのか、単なる潔癖性なのか判断は難しい所だが。 改めて聞かれれば気にもなるというものだ。 アレが、どんな反応を示すのかだとか。 言われてみれば知らない事は多すぎるほど多い。 そういう所がまた、好奇心をそそるのだろうけれど。 日中は全く人の出入りの無くなる生徒会室に足を踏み入れる。 中央のテーブルには乱雑に置かれた冊子と鉛筆、そして消しゴム。 視界の隅には其処を所定の位置とする、大型犬。 珍しく大人しいかと思えばうつらうつらしていたらしい。 冊子を手にとり、ページをパラパラと流すように捲って、進歩のない内容に既に溜息すら出はしない。 いっそ、ワザとなのではと疑ってしまう事すらある。 「野良犬、好い加減この程度の問題ぐらい解けるようになれ」 生徒会室に小学校低学年向けのテキスト共に監禁していた犬は、確かに回答を書き込んではいるがどうにも答が見当違いで。 会話が成立している以上、問題文が読めない訳でもないだろうにと考察を繰り返す。 実際“一から教育し直す”とは言っても、流石に遡りすぎのような気もするし。 そして、コイツの受けてきた英才教育の内容が知りたくてウズウズするのも確かだ。 「知るか!!てめーこそ、好い加減そーゆーの止めろ!!」 そういうのと云うのが、問題集なのは指摘されなくとも判る。 唸る駄犬は、ぐったりとソファーに仰向けに沈み込みながら牙を剥く。 迫力がない事おこがましいが、お互いに効果のない脅しだという事は自覚済みで。 野良犬の方も言うだけ言うと、諦め気味に目を閉じた。 そうやって、大人しくしていれば只の毛並みの良い犬に―――いや、それなりに整った外見なのだろう。 テキストから手を離すと、ソファーへと移動する。 微妙に曲げられた足をゆったりと組んで、野良犬は微睡んでいる。 真っ直ぐ伸ばせば完全に足がはみ出てしまうらしい事が見て取れた。 見ている間に文字通り、あっという間に眠りに落ちていく。 改めて様子を伺えば、規則正しく呼吸を繰り替えす音が聞こえる。 真上から覗き込んでも開けられる事のない瞼は、此方を許容している証なのか判断に迷うが、普段の言動や行動を鑑みるに単に警戒心不足なのだと思う。 一時期に見せた激しい警戒心は、一体何に起因するものだったのか。 「ん〜・・・・・・」 覗き込めば歪む眉間。 しかめられた眉が気配を察知している事を知らせるが、しかしそれでも目を覚ます事はない。 今目覚めたら、それはそれで騒がしい事になるな・・・・・・と判ってはいるのだけれど。 貪欲にもっと色々な表情が見てみたいと心の何処かが囁く。 そんな風に感じた相手は、今まで存在しなかった。 『悪魔』というカテゴリーに属する中では、やはり特殊なのだろうと思う。 言動も行動も他の奴らよりも遙かに幼く、人間を騙したり出来るようなタイプでもない。 うっかり本当の事を喋ってしまって失敗する、自爆型だ。間違いなく。 だから、今回も本音を聞かせてみろ。 閉じられた唇に軽く自分のソレを合わせる。 意識のない口元は触れられた事で無自覚に薄く開き、易々と口腔へと舌の進入を許した。 蹂躙と云うほど激しくはなく、しかし確かに情動を掘り起こす動きにうっすらと反応が返る。 「・・・・・・・ぅ?」 疑問系に彩られた呼気が漏れる。 息苦しいと背けられる頬に手を添え引き戻し、力無い舌を捉え絡め取る。 状況を掴めないのか、何度か瞬きを繰り返す眼が驚愕に見開かれた。 途端に引き離そうと暴れる身体。 「何す・・・!!・・・・・・・・・・・っっ!?ん、んぅっ、んぅうっ!」 そう。ハッキリと意識が覚醒すれば力の限りの拒絶を示す。 貪るように舌を動かせば、追い詰められたように伏せられる色違いの双眸。 従順でないが故に、より自らを追い詰めるという自覚のない瞳が至近距離で俺の顔を映し出す。 抵抗を示す腕が、力無く縋る手に変わった頃揚々と解放してやれば息も絶え絶えと、後頭部が再びソファーへと沈み込んだ。 「ふん。成る程な・・・・」 潤んだ目を見られるのも癪だと力無い腕で視界を遮る駄犬を見下ろして、一人納得する。 眼下に横たわるのは整わない呼吸に揺れる肩と、キスのせいで赤く濡れた唇。 もう一度重ねたキスは、むしろ絶対的な拒絶と殺意に染まった血の味がした。 「―――くたばれっ!」 獣じみた咆哮が聞こえる。 吐き捨てられた言葉には、しかしぶつけるほどの力は残ってはいなかったようで。 2度目のキスでは、滑り込ませた舌に有らん限りの害意をもって噛み付かれた。 肌で感じた殺気に咄嗟に舌を引いたものの、あの鋭い犬歯によって傷つく事は避けられなかったらしい。 「そう簡単には死なないな。生き汚いのも人間の性分だ」 不敵な笑みを浮かべて視線を合わせれば、ギリギリと射るような眼で睨み返された。 何て面白い奴だろう、といつ見ても思う。 ここまで接触に激しい嫌悪を露わにするのは初めて目にする。 単なる駆け引きと云うよりは、一種命の遣り取りのように脳髄の芯から沸き上がる支配欲。 征服と云うよりはまだ蹂躙といったイメージだが――― どうやら、コイツとのキスは存外楽しいらしい。 我知らず浮かべていた笑みを知ったのは、硬直したノラに気付いてからだった。 |
ちょっとは躊躇って下さい生徒会長。 そしていくら何でも据え膳食い過ぎ。 ノラも危機感欠片ぐらいは持って下さい。 パン屑ぐらいミニマムで良いから.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆ ・・・・・・・・・進歩無くてスミマセン・・・・・・ショヴォンヌ(´Д`) |
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