―――猫はね、嫌がる相手にほど寄っていくんだよ?





猫のきまぐれ









「やぁ、偶然だねぇ〜」

 ヒラリと手を挙げて掛けられた軽口。
 ブラブラと公園を歩いていたノラに正面切って挨拶をかましたのは、先日の衝突も記憶に新しい『反乱組織』のメンバー ネルだった。
 相変わらず唐突に、それでいて偶然を装った風に声を掛けてくる軽薄そうな笑みを浮かべた男は、そう周囲に印象づけながらも抜け目なくノラの方へ距離を縮めて来た。

 了承した訳でもないのに隣に並んで歩く。
「日中はいつもこの辺ブラついてるの?」
「関係ねーだろ、うせろ!」
 ウキウキと大袈裟な身振りを交えながらまとわりつくネルに、ノラは取り付く島もなく手を打ち振るう。
 噛み付かんばかりにぶつけられた台詞は周囲に多少脅威を与えたものの、目的の人物はノーダメージ。

 特に何処かへ行こうという宛があった訳でもないノラは、あまり好きではない人通りの多い園内を、正に時間潰しという感じで彷徨いていた訳で、当然のごとく単独行動だ。
 深く考えなくとも分が悪い。
 殴りつけたい衝動を押さえ込みながら、どうやって撃退するかを考える。



 ここで『取りあえず何とかして一磨と合流』という判断が出来ない辺り、ノラは今一自分の状況を理解しきっては居なかった。




 しかし、ピリピリと神経を逆立てるノラの考えを察知したかのようにネルは胡散臭い笑みを浮かべた。
「そんなに警戒しなくてもダーイジョーブ!今日は別に喧嘩しに来たわけじゃないからね」
 これまた大袈裟に肩を竦めて見せる。
「今日は自由行動の日なんだよー♪」
 続く発言に、胡散臭さは倍増した。

「じゃあ、テメーの好きな女でも追っかけてろ。ついて来んな」
 眉間に皺を寄せて、邪険に扱う。
 しかしそれすら全く意に介さぬ様子でネルはノラの腰に手を回してきた。
 パッと見た感じでは優男風にも関わらず、思いがけない力強さにノラの足が止まる。
 いや、止まると云うよりは強制的に止められた感が強い。

「げ・・・ッ!」

 気が付けばサイドから完全にホールドされていた。
「うわぁ。もしかして嫉妬してくれてる?嬉しいなぁ!」
 それはそれは見当違いな発言で、なのにネルの表情は本当に嬉しそうにホクホクしたものになるからタチが悪い。
 訳の分からない歓声を上げながらノラへと擦り寄る。

 思わず、周囲に視線を向けるノラ。

 ラッキーな事に―――大変微妙だが―――周囲にあった人気は限りなく疎らで、青年同士が行うにはちょっと異常なネルのスキンシップに気付いている者は居そうにない。

 安堵の息をつくノラに、ネルは口を尖らせて抗議した。
「酷いよノラ君〜。そんなに心配しなくても、君が嫌がるようなミスは致しません!」
 物凄く人目を引いて、後で君がカズマ君に怒られるような凡ミスはしないよ〜♪ と口にしながら、抱きつく腕に力を込める。

「ギャァァ!俺様が嫌がる事しないって云うんなら、今すぐ放せっ!!」
「だぁかぁらー、君の嫌がるような“ミス”って言ったでショ〜?」
 暴れるノラを放すまいと、更に腕に力が籠もる。

「ねぇ、ノラ君――――――」
 腰に固定されていた腕が徐々に位置を降下させていく。
 胸元で囁くような声に、ほんの少しだけノラの動きが弱まった。

「・・・・・・君、もう少し肉付けないと抱き心地悪いよ?」
 カズマ君は何も言わないのかい??







 次の瞬間、ネルの身体がノラ渾身の一撃により軽く空を舞った。





「さっさとくたばれクソボケ!!!!」
 無抵抗に宙を舞ったネルに怒鳴りつけると、ノラは酷く不機嫌にその場を立ち去る。

 その後ろ姿には“不愉快”という文字が張り付いていた。



「あ・・・・・ィタタタ。まさかあそこまで怒るとはねぇ」
 どんどん離れていくノラの後ろ姿をぼんやりと眺めながら、ネルは身体を起こし服に付いた土を払う。
 手酷い目に遭わされたというのに酷く愉快といった表情を浮かべながら、側に姿を現したアストに声を掛けた。
「今のって、どっちに怒ったと思う?」

 抱き心地が悪いという言葉と、カズマ君の名前を出した事。

「後者だったら、かなり脈有り?」
 笑いながら首を傾げて、自分の使い魔を見上げる。
 そこには相変わらず何の表情の浮かベずに佇む姿がある。
 寡黙な彼は口頭では何も返事を返さなかった。

「どっちにしても、ちょっかい出すのは止められないね。うん」


 ただ、見上げるネルの瞳に喜悦の色が滲む。
 そして、次はどうやって接触を図ろうかなー、などとノラが耳にしたら毛を逆立てて怒り狂いそうな事を画策しつつ歩き始めた。





 ・・・・・・・・・・何となく、カズマとノラの平穏な日々は遠そうだ。















ネルさんって、ものっそい猫のイメージなんですがその内原作で封身解放した時、
全然別の生き物主体だったらどうしよう・・・・とか、今更のようにどきどきハラハラ。

しかし果たして、うちのネルさんはノラが好きなのかどうなのか・・・・。
単にちょっかい出したいだけのような・・・・・味見したいの?(@△@;)
書いていて非常に微妙な所。
そういえば月ジャン11月号でスーツでしたね?(ネタバレ)
胡散臭さ倍増☆
いや、そんなネルさんも大好きです(笑)




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こちらは『10TITLES』のサイト【ピックアップデイズ】様より頂いてきました。