吹きさらしの屋上で一人、ノラは魔王からの差し入れを開封していた。
 低くなってきた人間界の気温に合わせて 防寒具なども入っていたらしい『マカイ便』と印刷された段ボールには魔王の顔が描かれている。

 そして、時間も空間も無視した魔王様特製のステキ携帯電話で交わされる会話は 交渉決裂の様相を呈していた―――


『えっアンタ 魔法のコツを知りたいってやる気出してたんじゃ・・・・・・』
 前回の電話では確かに カズマ君から流れ出している魔力がどういったものか、どうすれば上手く掴めるのかを聞いてきていたじゃないの!と口にしかけた魔王に、ノラはもっと端的で短絡的な否定行為を繰り出した。

 ガツン!

「そのコツが問題なんだよ!!」
 癇癪に任せてコンクリートタイルに投げつけられた携帯電話が 痛々しい音を立てた。





勝手に捏造 第10話
−こんな愉快な展開だったら
『月刊少女ジャンプ』に改名希望−







『何か分かったの??』
 普通に人間界で取り扱われている携帯電話であれば 故障しかねない衝撃であったにもかかわらず、S666iからは何事もなかったように魔王の声が流れる。

 先に促すような魔王の言葉に ノラの眉間に深く皺が刻まれた。

「アイツのテンション次第で魔力の量が増えたり減ったり・・・・・・・・・・・・・・っ!冗談じゃねぇ!!」
 面倒くさそうに苛々と自ら投げ捨てた携帯を拾い上げると 八つ当たり気味に吐き捨てた。

 それは正に 鼓膜よ破れよ とばかりの勢いで怒鳴り上げた為、画面の向こうでは魔王が角の下辺り・・・・耳を押さえるようなジェスチャーで顔を背けている。

 戻された顔はブリブリと怒ったような表情で 一言だけ言い返し、そこで改めて 首を傾げた。
『もぅ!スピーカーに怒鳴らないで頂戴! そこまで解ってるならカズマ君のやる気をアップさせる方法を考えればイイじゃない』

 ―――が、すぐにその言葉は魔王の度肝を抜くような展開を招くこととなった。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アイツの機嫌取るなんて冗談じゃねぇ・・・・・・・・」
 地の底から響くような声が ノラからこぼれ落ちた。

『相変わらず仲悪いわねぇ・・・・』
 どうしようもない駄々っ子を見詰める母親のような溜息が魔王から零れる

 初対面時から かれこれ数ヶ月が経過するが、ノラとカズマの間に歩み寄りは見えない。
 どちらかと云えば ノラの方が避けているのは誰の目から見ても明らかな事実で、二言目には『主従契約を解除しろ!』と叫び倒す勢いだ。


「 イ イ 訳 ね ぇ だ ろ ぉ が ・・・・!」

 途方に暮れたような魔王の声に気付いているのかいないのか、ノラの方はノラの方で絞り出すような声を出す。
 うっかりその手に力が籠もり ギリギリと握り締めた携帯電話が機械的な悲鳴を上げるが、そんなものは聞こえてはいない。

 ノラにとってこの携帯電話はさほど重要なものではないという認識がある。
 その為 先程のように簡単に投げ捨てたりされるわけだが―――


 しかし果たして『禁止コマンド』で強制服従を強いられるノラと、その権利を十二分に行使するカズマとの間にどれだけの歩み寄りが可能かは現段階では予測不能だろう。
 魔王が何処まで知っているのか誰にも分からないが 二人が仲良くしている場面など、容易に想像出来るものではない。

『仕方ないわねぇ・・・・・。そうね、例えばカズマ君のキョーミをそそりそうな話題で盛り上げてみるとか―――』
「アイツが興味あるのは 悪魔 についてだろ。そんなもん一々説明してられるかよ」

 折角の提案も即座に棄却された。
 ヒドいわー!とモニター向こうでブーイングする魔王自身も確かにノラの発言には同意出来る部分があったため、さして大声を上げる気はなかったらしく 次の提案のため頭を捻る。

『ン〜、じゃぁねぇ・・・・・』
 次の提案のため開き掛けた口は、そのまま驚愕に開かれることになった。


 ノラの一言によって。



「アイツ本当に悪魔じゃねぇのか?ココ最近変な交換条件突き付けてくるようになりやがったんだけどな」
 嫌そうな表情で紡がれた言葉に、続いて魔王の3つの目が見開かれた。

「『俺にやる気を求めるなら、貴様からキスでもしてこい』とか何とか・・・・・・・・・何考えてんだかサッパリ分かりゃしねぇ・・・・」
 心の底から理解不能、と眉をひそめるノラとは対照的に 魔王は肌荒れを見付けた瞬間の あの衝撃的な表情を、その表面に貼り付けていた。


 『俺にやる気を求めるなら、貴様からキスでもしてこい』?????


『ちょ・・・・・・・・ちょっと待ちなさいノラちゃん!カズマ君そんなこと言ったの!?それでノラちゃんしたの!??』

「んぁ!?何だよ!!カンケーねーだろ!!」
 モニターかぶりつきの勢いで問い返された勢いに、ノラは思わず身を引いた。

「ノラちゃんから キスしちゃったの!??????!!!』
 しかしモニターに映る魔王の顔はいつになく動揺しており、またその剣幕に気圧されるように 口ごもりながらもボソボソと答えた。
「・・・・・・・・・・・・・い、一回だけ・・・・・・・」 


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



 どうしようも無いほどの痛い沈黙が降りる。


「仕方ねぇだろ・・・・・どうしても試したいことがあったんだよ・・・・・!!あんな口くっつけるくらい大した事ねーじゃねーか・・・・・」
 魔王の沈黙に耐えかねて、ノラが舌打ち混じりで口を開く。
 ノラにとって大事なのは 強くなることであり、そのためにここの所は慣れない頭を使ったりしてきたのだから。

 カズマの考えることは理解出来ないし 興味も無いが、やる気を出してもらはない事には 強力な魔法は放てない。
 その為には 交換条件を飲むのは癪だが、たかが『口をひっつけるだけ』の行為ぐらいは大した事じゃない。



 ―――と、ノラは考えたが 魔王はといえばそんな単純な結論に辿り着くわけがない。

 ノラからキス。

 例え質の悪い冗談だったとしても、それでテンションが上がるということは 幾つかの可能性がある。
 ノラ自身は全くと言っていいほど理解していない、幾つかの可能性が。

 

「そう・・・・・カズマ君たらそんなことを・・・・・・」

 一磨の真意を探るべく新たに幹部階級を人間界にお使いに出すかどうか、魔王は真剣に頭を抱えた―――







なーんちゃって第10話。
月ジャンネットのプレビュー見てムフフ展開を希望してみました。
っつか、本当はもう一つ会長がマニアな内容を考えてたんですが
そっちはまた何処かで・・・・・げへんげへん。



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