「ああっ・・・・・・・ みんながアタシのハートを狙ってるのね・・・・・・・!!」

 乙女の悩み。

 何やらキラキラしたモノを背負いながら、魔王様は頬を染めた。

「―――って・・・・」
 しかしそれも一瞬の姿で。

「言ってる場合じゃないわよ ノラちゃんったら!!!」
 きぃ〜っ!!とヒステリックな叫び声が上がった。

「どこで育て方間違えたのかしら んもー!!!」

 その内容に、皆 表情にこそ出さないが『アナタです。アナタが育成の方針を決めたんです、魔王様!!』と心の中で
ツッコミを入れたのは間違いないだろう。

「ちょっと誰か文句言ってきてよあのバカに!!」

 お怒りモードのまま叫ぶ魔王様に、将軍階級は一様に押し黙った。
 先程まで居眠りをしていたリヴァンも目を覚ましたのか、含みのある表情で沈黙を守っている。

「・・・・・・・だ・・・誰が行くんだろ・・・・・・」
 オセルが動揺したように発言した。
 まさか自分には白羽の矢は当たるまい、と思う反面 もし行く事になったらどうなるのか という不安がチラ付いている。
 その横で、既に1度ノラの元に派遣された経験を持つバリクが苦々しげに呟いた。

「俺は もう2度とごめんだ・・・・・・」





勝手に捏造 第11話

−出来れば『月刊腐女子女ミャンプ』とか創刊希望−









 かくして人間界。


「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
 何やら物言いたげな沈黙が降りる中、向かい合う一方は訝るように また正面切って立つ方は眉間に青筋を立てるほど不機嫌丸出しで。

 あーもうっ!!とでも叫びた気な表情で顔が背けられる。
 しかし その立ち姿を見たノラから、最早条件反射のように罵声が飛んだ。

「また てめーかよバリク!!」
「それは こちらの台詞です・・・!!!」


 先に沈黙を破って毛を逆立てたノラから視線を逸らしつつも、バリクは己の状況を心から呪った。

 なぜ俺ばかり・・・。
 渋い表情のままバリクが切り返す。
 彼の背負う空気は限りなくドンヨリと濁って重い。



 原因はノラ達の立ち位置だ。


 ――― 一瞬、どっかの家族じみて見えたんですよ!!

 不快そうな表情の下で、バリクは自分の見間違えた光景に泣きそうになった。
 ノラと契約者――― 一磨との間にいる 2人より更に小さな・・・アレは悪魔だろう。

 恐らくは犯罪悪魔。

 しかし 動揺のあまり『ノラ様っ 何時の間に・・・・・・!?』とかなんとか、とち狂ったことを口走りそうになったバリクは自らの行動に深い溜息が漏れるのを聞いた。


「今度は何の用だ」

 そんな水軍副将の葛藤など歯牙にも掛けず一磨が問い掛けた。
 思わず人生に挫折した様に地に手を付きかけそうになる衝動を何とか自制して、バリクは声のした方へ向き直る。

「ノラ様に、魔王様から伝言です。これを・・・・」
「あぁ?」
 苦虫を噛み潰したような表情のまま、それでも職務を全うするために取り出したのは 透明度の高いガラス玉だ。

 掌中の玉に視線が集まる。

 ノラからは嫌そうな、一磨からは興味深そうな。
 犯罪悪魔はバリクが魔王軍の所属だと 気付いているのかいないのか モノには興味を示しつつもノラの陰に隠れるようにして、覗き込んでは来ない。

 バリクはノラの足下にソレを投げると 短く魔法を唱え―――

『ノラちゃん!アンタ何考えてンのよ この忙しい時に!!折角カズマ君のトコロに預けて少しはマシになったかと思ったら・・・・・、よりによってアタシに脅しかけてどうすんのよ!!!』

 突然湧き上がった立体映像に 一同後退った。

 ノラの足下で 魔王の姿を目にしたケトケトから『ひにゃーっ!!』と情けない悲鳴が上がるが それも仕方のない話で。
 むしろ他の二人が注目すべきは ノラの足に縋り付くように腕を回して隠れるアイテム屋の動きと、特に何か文句を
言うでもなく その行動を許容しているノラ自身だった。

 バリクの投げた物は 一見ただのガラス玉にしか見えないが、れっきとした魔法のアイテムになる。
 ほぼ使い捨てに等しい代物ではあるが 単一の内容であれば簡易な魔法一つで何度でも再生は可能だ。

 更に魔王の叫びは続く。

『全くもう!!レナードちゃんなんか絶句してたわよ!?少しは気遣ってあげなさいよ!!!』

 唐突に出た名前に、ノラの顔が顰められる。
 どうにも痛い所を突かれた という表情を浮かべる飼い犬の様子を横目に見ながら一磨はバリクに声を掛けた。

「レナード とは何者だ?」
 その問いに、魔王様の使いっ走りと化している水軍副将は さも嫌そうに答えた。
「レナード様は地軍の将軍だ。ノラ様にとっては頭の上がらない方の一人のようだが」

「頭が上がらない?・・・・・・・・・アレが誰かに頭を垂れるトコロなど 見たことがないがな」

 ふん、と鼻で笑いながらも 一磨の中で新たに魔王軍の階級構成が構築されていく。
 確かにノラにも説明するように求めてはいるモノの、彼はあまり軍の内情を語りたがらない。
 表情を見る限り 決して、知らないわけでも解っていないわけでもないようなのに。

 クセのように胸元で組まれた腕に力を込める。
 まだまだ続きそうな魔王のお小言に些かげんなりしながらも 今度はバリクが一磨に声を掛けた。

「確かに今、ノラ様は貴様の使い魔だ。―――しかし『アレ』などとは呼ぶな」
 それは一見すると窘めているようにも聞こえる。
 だが、一磨にはちょっと違うように聞こえた。

「・・・・・・そんなに馬鹿犬が誰かの所有物になるのが不快か?」
 多少の愉悦を含んで ニヤリと口角に笑みを乗せる。

「ノラ様は 貴様の所有物ではないだろう」
「少なくとも、契約で括られている間は俺の物だと思っているが」
 一磨の声に混じる優越感のようなモノを感じ取り顔を顰めれば、更に切り替えされた。
 その内容にバリクの不快感は倍増する。

 そもそも人間は嫌いなのだ。
 非力なクセに口ばかり達者で、その割に有り余る力を欲し自滅していく。

 お互いを視線で威嚇し合いながら、意識の端で魔王からの伝言に耳を傾ける。

 実の所、アイテムの中の伝言内容はバリクも知らない。
 妙な緊張感の中 魔王からの一方的な叫びは終焉を迎えたらしく、比較的穏やかな声になったと・・・・・感じた途端に爆弾は落ちた。

『あんまり聞き分けがないと、アンタ本当に バリクちゃんにでもお目付役でそっちに残って貰うから』

 じゃぁね、と爽やかに言い残して立体映像は消えた。

 直後。

「なにぃっ!?」
 もっとも激しく反応を返したのは当のバリクで、寝耳に水です と顔に書いてある。
「いらねーよ、ドブス!!」
 次に反応を返したのはノラで、云いたいことだけ言って姿を消した立体映像を罵った。

「冗談じゃない、魔界でだって忙しいのに・・・・・・・・」
 動揺の2文字を貼り付けながらも バリクは用途を終えたガラス玉を回収し、早々に立ち去る用意を調える。
 ただの伝言のハズがやけに疲れたように感じるのは、彼の気のせいではないだろう。

「てめーもキッチリ断れよ!!」
 グッタリとした様子のバリクに、ノラが叫ぶ。
 発言の裏にある 人間界は嫌いなんだろ!? という単純な意図は掴めるし、確かに断れるものなら断りたい。
 しかし。

「魔王様直々のご命令とあれば断りも出来ませんよ!!」
 哀しきかな中間管理職。
 上司のリヴァンはあぁいうヒトなので むしろ自分が出ていってしまいがちだが、別に魔王様からの直の命令ではなくとも指示が出れば嫌も応も無い。


 そしてこの後カインに提出しなければならない『ノラ様近況報告書』の作成に頭を抱えたバリクであった―――




ホントはバリクさんにいかがわしい妄想グルグルして貰ったり
ノラの腕の傷に回復魔法かけて貰ったり、
ケトケトのこと問い詰めて貰ったりしたかったです。
ていうか、この捏造っぷりは個人的に美味しいなぁ(笑)



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