「反乱組織は人間界の各地に数多くの拠点を有していマス」
 ひらり、と取り出された紙は男の掌中で揺れる。
「各ユニットごとに複数の拠点があって、点々と行き来しているわけデース」
 上手……というべきなのか、理解力の低いノラの為なのか デフォルメされたレジスタンスの絵が描かれたモノが渡された。
「何だよ その……ユニットってのは」
 ペラい紙を手に問い返せば、頷いた情報屋は説明を続けた。




勝手に捏造 第17話

−あの黒い人が一磨さんなのかどうなのか
悩んだ結果、出て来ませんでした(吐血)−






「ユニットというのは、ちょっとしたグループのようなものデス。数人の悪魔からなる集団は、各ユニットに一人ずつ居るリーダーに従う形で行動しています」
「……魔王軍の分け方とは違うって事か…」
 理解には至らないまでも、反乱組織の組織図と睨み合う。
 ノラの言うように編成こそ違えど、体制に大きな差はない。
 ただ、彼がそれを言葉程に理解出来ているかは 怪しいところだが。

「―――で?」
「以上デース」
「……はぁ?!」
 先を促すノラに、情報屋は告げた。
 そしてその横では、正義のヒーロー ダ・ゴーンが全く同じ動きでもって肩を竦めて見せた。
「今のじゃ全然分からねーぞ てめぇ!!」
「これまでにアナタから頂いた対価では、ココまでしか話せまセン」
 いきり立つノラの掌中で紙が無惨に握り潰される。
 放り出され、くしゃくしゃのソレを伸ばしながら 額に酒と書かれた男は口元で笑う。
 等価交換の原理に従っているのか、扱う物が情報だけに 単に気分なのか、頑としてそれ以上の情報を漏らしそうにない男に ノラはギリギリと歯を噛み締めた。


「対価って、何だよ……金は持ってネェからな!」
 無言での交戦の後、白旗を揚げたのはノラの方で。
 元々交渉事は苦手なのだから当然の結果なのだろうが、悔しいことには違いない。
 しかしこれ以上の情報を手に入れる為には何か支払えというのだから 必然的に聞くしかないのだ。
 何が要るのか、など。
 ただし金銭的な物は一切所持していないのも事実で、先にそれだけは宣言して カウンターに肘をつく。
 いつもは手の早いノラも この情報屋には未だ手を挙げたことはないが、サングラスの奥にあるはずの見えない目が 店内で暴れないように監視しているようで気分が悪い。
 その実、学校に行けば比良坂達に掴まってしまい色々問い詰められたり、かといってうっかり一磨の家にも覗きに行けない(行きたくない)ノラが今お世話になっているのは、何を隠そう この店の一室で。
 そういう意味では頭が上がらないのだ。
 しかも今のところ宿泊費というモノは請求を受けていない。
 今のところは反乱組織のボスとの対面の時にノラが見せた『面白いモノ』というヤツで賄われているらしい。
 その価値はいつまで持続するのだろうか―――

「料金は金銭とは、限りまセンヨ。ケルベロス殿」
 薄暗い店内で、それでも比較的明るいはずのカウンターに濃い影が落ちる。
 ぼんやりと考えていたノラの耳元で、湿った音が耳朶を打った。

 ピチャリ、という音は酷く近くから聞こえた。

 弾かれたように肩が揺れ、慌てて立とうとした反動で椅子が酷い音を立てて転がる。
 金属とリノリウムがぶつかって、悲鳴を上げた。
 巻き添えを食って無様に倒れることだけは回避したものの、床の上から情報屋に向けられるノラの瞳は呆然と見上げるものでしかない。
 数回 ぱくぱくと金魚のように口が動いて、伸ばされた手は耳に。
 ―――触れた感触に、手が震えた。
「………・っ!??????」
 耳を押さえて、訳が分からないと言うように言葉が凍り付く。
 悲鳴すら上がらないほどの動揺が、ノラを襲う。
「いっ、今っ?!?」 
 どもりながら立ち上がるノラの睫毛にはうっすらと濡れた跡があり、内心の動揺を隠そうとすればするほど 彼自身の顔は赤く染まっていく。
 それは怒りからか、羞恥心からか。
 睨み付ける先の人物は動揺した様子もなく、ノラの方を向いたまま何かを弄んでいる。

 ベロが出た。

 突然の行動に、ノラのなけなしの忍耐力は プツリと切れた。
「馬鹿にしてんのか!!」
 情報屋の伸ばされた舌に向かって、むしろその顔面に向かって手近な椅子を投擲する。
 怒り混じりの一撃はかなりの威力を持って放たれたが、避けようともしない男。
 仕留めたか! と、ノラの表情に浮かんだ笑みは次の瞬間に霧散した。
「ナイスキャッチデース」
「危ないぞ☆」
 横合いから伸びた黒い腕が、がっちりと椅子の足を掴んでいる。
 情報屋の眼前で静止した椅子は何事もなかったようにダ・ゴーンの手で元に戻された。
「酷いことをしますネー。アナタが『今、何をした』と聞きたがったからお答えしただけなのに」
 隣で頷く黒い奴。
「だからって、何で舌が出るんだクソボケ!!」
 馬鹿にしたような肩の竦め方に、ノラの苛々は急上昇していく。
 怒りに染まる双眸は輝きを増して、室内の薄暗さをはねつける。
「舐めた、と言いたかったんデスガ」
「舐め……た?」
「えぇ、そうデス。そういう支払い方もあるのですよ、ということだったんデスガ」
「ンで、そんなのが対価になるんだよ」
 訳が分からない、と怪訝そうに見返す瞳には既に怒りの色は見えない。
 代わりに当惑するような表情が浮かび上がる。

 コロコロと変わっていく表情に、強い光が瞬いた。
「うわ!」
 伏せがちにしていた為、直撃ではなかったものの 光が瞳を焼く。
 数度繰り返される発光に 薄暗い店内に慣れていた目が痛む。
 反射的に伏せた瞼は それでも残る残像に、なかなか上がってくれない。
「今度は何なんだよ!」
 袖口で擦りながら それでも何とか目を開ければ、先程までと同じく何かを弄ぶ情報屋の姿。
「もっと分かり易い取引デスヨ。カメラはご存じですネ?」
 示されるのは、黒い変な形をした箱。
 以前一磨が持っていた物を思い出して頷けば、目の前で箱から厚めの紙が吐き出された。
「アナタに関する情報は、高値で取り引き出来マス。今回はそれで手を打ちましょう」
 同じような紙が、数枚カウンターの上に並べられた。
「真っ黒じゃねぇか。こんなモンで……ン?」
 じわりと浮き出した画像に、動きも止まる。

 カウンターに肘をついて考え込む顔。
 動揺した顔。
 耳を押さえて呆然としている顔。
 怒りに染まって椅子を掴んだ瞬間の顔。

 正面からの物はほんの僅かしかないが、確かに其処に写っているのはノラ自身の姿で。

「ポラロイドカメラ。良く写っているね!」
 フレンドリーに写真を回収していったダ・ゴーンが写した物もあるのだろう。
 どう考えても情報屋がカメラを構えたのは最後の数回だけだから。
「………………」
 言いたいことがない訳でもなかったが、新しい情報が提出されそうな空気に流されて ノラはカウンター席に腰を下ろした。
 

 
 その後、写真がどういう扱いを辿るかも知らないで。







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「今回の仕入れ商品デース」
「ノラの兄貴の隠し撮りでヤンスね!反乱組織のダンナ方垂涎で……」
 嬉々とした道具屋との取引が行われる裏で、ノラの赤面写真をゲットしたネルの常軌を逸脱した機嫌の良さに 流石の幹部メンバーも声が掛けられなかったらしい。










なーんちゃって第17話。
ここの所UPが発売後なので、原作確認してから狂喜乱舞しております。
それにしても、最近アナログ書きが多いので書けてはいても
打ち込むのにやけに時間がかかります。
そしてうっかり☆書き上げてみればあの黒い人のことが
全然内容に載ってませんでした!!(爆死)
反省!!┏(|||`□´|||;;)┓ ゴニャア。
それにしても、実際に17話は『ここに来てあんな展開だと、
夏コミ突発入稿増えるんじゃね?』と思ったのは私だけですか?
そうですか・・・・・( ´∀`)σ)Д`) 





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