あっち と こっちの 間の『、』 |
ちまり、と座りこけている様は一見ぬいぐるみと大差ない。 短い手足に小脇に抱えやすそうな胴体部分、そして円らな瞳。 百歩譲ることなくとも十分に愛される外観なのだろう、という辺りには異論はあっても反論は無い。 ノラからすれば譲るも何もなく、別個体だからだ。 周囲に何と言われ様とも、そこだけは譲るつもりはさらさら無かった。 「何時もの事だが、何故そこまで強固に否定するのか疑問ではあるがな」 「てめーにも同じ様な奴がいれば分かるんじゃねーの」 間髪入れずに返って来た返答は、如何にも刺々しく吐き捨てるかのような調子で。 その割には別に小さなノラを邪険にするでもない。 とにかく『産んだ』『同じ存在』ということだけに酷く反感を覚えるらしい、と判断を下した一磨ではあったが 其処はやはり成長しても変わらず言葉遊びが好きで、混ぜっ返すのは特技の一つ。 「そうだな。お前が俺の子を産めば少しは理解出来るかも知れんな」 「はぁっ!?」 あぁ納得した、と真顔で頷く一磨にノラの裏返ったような叫びが被さる。 「何でそうなるんだっ!てめー馬鹿じゃねぇのか!?」 「少なくとも貴様にけなされるほど馬鹿ではないと自負しているが?」 「問題はそこじゃねぇぇぇっ!!」 「そう興奮するな。骨をやるから落ち着け」 「そんなモン要るかクソボケ!オレ様は犬じゃねぇっ!あとソレ何処から出しやがったいっつも持ってんのかてめーどれだけ質悪ぃんだっ!!」 憤りも露に差し出された骨を叩き落す。 一応袋に入ったままだったその骨には『ワンちゃん大好き骨っ○』と例の商品名が印刷されていた。 丸っきり犬用のカルシウム補強剤は一磨の四次元ポケットから取り出されていたが、その事実がまたノラのテンションを上げてますます収集が付かなくなりつつあった。 ぎゃんぎゃんと吠え立てるノラに軽く眉を顰めつつ、食べ物を粗末にするなと至極真っ当な事を口にする割には一磨のやっていることは結構酷い。 ノラが確実に怒ると分かっている事をわざわざ行っている辺りが特に。 どれもこれもいつもの遣り取りではあるのだが、一磨が楽しみ出したらその遣り取りはノラの息が上がるまで続く というある意味耐久レースに突入する。 胸中の薄ら笑いを億尾にも出さない一磨の深層を本能で嗅ぎ取るノラだからこそ流す事も出来ない。 最終的にはどちらも子供でしかなかった。 「〜〜っ!どうせ出すなら骨じゃなくて肉出――、っんだよ」 一磨の胸倉を掴み上げて、身長が足りない分は腕力に物を言わせて何とかっ……。 そんな勢いで力を込めた脚を、下の方から誰かが引いている。 誰か、とは言ってもそんな事が出来る相手は酷く限られているのだ。 (これ、ほしいの) 骨っこが喋っている……。 一見そうとしか思えない、袋の後ろに期待に目を輝かせた小動物が立っている。 つい先程まで一磨とノラの口喧嘩に怯えていたくせに、と思うのは一磨もノラも一緒だ。 特にノラの怒鳴り散らす声に萎縮するきらいがあるようだが、それでも最終的にはノラと同じものなのだ。 何よりも食欲が勝つ。 (ほしいの……) 突如放り出された骨に興味を示したのだろうが、拾い上げても勝手に口にしないだけマシなのだろう。 ダメ?と視線で問われれば別に断る理由もない。 「構わん。食え」 (ありがとうなの!) ノラに掴まれた胸倉を解く事もせずに頷けば、素直に喜びが満面に浮かぶ。 人畜無害だ。 やる気を削ぐという意味でも、満点を与えても良いぐらいかも知れない。 少なくともノラの手は中途半端に緩んでいるのだから。 「で。続けるのか放すのかどっちかにしたらどうだ」 どちらに転んでもわざわざ振り払うまでもないと言外に問えば、やけに疲れた溜息を吐いてノラが伸ばした手を下ろした。 「……、バッカくせぇ」 唇を尖らせて呟く。 しかし一磨に改めて突っかかるでもなく向かう先は小さなノラの元。 袋を開けようと悪戦苦闘している割には努力が報われてはいないらしく、ジェリーと共に何やら考え込んでいるようだった。 そもそも手が短いのだから器用に開けるには魔法を使うしかないのだろうが、アレはあくまで小さなノラにとっては生き延びる為の最終手段である。 結果どうにもならない現状に行き着くわけだが、えぅ と小さくしょげ返る姿は見捨てるには忍びない。 「貸せ、ほら」 可哀想、と言うよりは見ていられないという表情でノラがよれよれになった袋を引き千切る。 ついでに取り出した骨を渡せばバランスを取り損ねて床にころりと転がる、があまりこたえていない様子で立ち上がると嬉しそうに端を銜える。 小さな口元には大きすぎるせいではっきり言って傍目には『食べている』様には見えないが、それでも一週間ももたないだろう事は過去の経験から一磨には予測がついた。 ――『子は鎹』とは良く云ったものだ。 喜びにてちてち腕を揺らす姿に生返事を返す後姿を眺めながら、一磨はまた一波乱呼びそうな言葉を脳裏に翻していた。 |
十束様へ レッツチャレンジ『ちまい様』! という訳で頑張ってみましたが如何でしょうか? 不発ですか。そうですか。 済みません逝ってきます!!((((;゜Д゜)))ガクブル 和樹 拝 |
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