ざわり、と廊下に異様な緊張が走ったのは 決して気のせいではないだろう。 天稜学園において 今期の生徒会長は他校に誇れる者であり、同時に畏怖の対象でも有るからだ。 |
02 主従関係 |
成績優秀、文武両道、容姿端麗、品行方正、他多数。 形容する言葉は無数にあれど、彼の冷淡さはそれらを全て尽くしたとしても埋まらないだろうと 陰で噂している者は多い。 出来る奴は疎まれやすい。 無論、ただの逆恨みや妬みだったとしても。 だが同様に慕う者もやはり多いのだから、世の中よく出来ているものである。 その、真狩 一磨が何やら片腕で引きずっている人物 ――― 印象的な瞳の色をした銀髪の青年が、常ならぬ状況をより鮮やかに際立たせていた。 アルビノというわけでもなく、染めているにしても鮮やか過ぎる 白というよりは光沢のある艶やかな髪。 猫や犬に多く見られるものだが、凡そ人間が持つはずの無い 左右の色を異にする瞳。 それは、カラーコンタクトなどの人工では出せないであろう深みのある金と赤。 おまけに制服指定の学校だというのに私服着用で。 なぜか首元には大型犬を思わせる首輪がやけにしっくりと嵌っている。 しかも一磨がその首輪に指を引っ掛けて引き摺っているのだから目立たないわけが無い。 その上放せの何のと騒ぎてながら移動しているのだから尚更だ。 「放しやがれっ!てめーいい加減に……っ!!」 「黙れ馬鹿犬。キャンキャンと吠え立てるな」 「吠えてねぇっ!!」 喉が締まるのだろう。 時折意味不明な音が混じるものの、妙な体勢で連行されていくノラへ周囲の視線は生暖かいながらも同情的だ。 だが誰も助け舟など出せよう筈が無かった。 何せ会長様はえらく御機嫌な表情を浮かべていらっしゃるので。 「苦しいって言ってんだろーがっ!…っこの、うげっ!!」 キュ、ッと締め上げられたのか、それ以降の反抗の声は聞こえない。 代わりに聞こえるのは、なにやら重量にあるものを引き摺る音ばかり。 「SPって大変そうだよな」 「……真狩会長のSPだから、じゃないの?」 「それは言わないお約束だろ」 今更ながら生徒会長の(あらゆる意味での)凄さに 皆一様に深い溜息を余儀なくされた、夏も間近なある春の日の昼休み。 |
一磨さんの周囲から見た主従関係、という方向で。 ところで「SP(用心棒)」扱いはいつまで認識されてたんですかね? って言うかそれで納得出来てる一磨さんの同級生も凄いよ。 一番凄いのは一磨さんだけど。 そしてこちらは 『NORA - ノラ - 題』様の所からお借りしてきました 『ノラ受派さんに10のお題』でございます。 |