野良猫や捨て犬を手懐けるのはそう難しいことではない。 一度は人の手から餌を貰って生きていたことがあるからだ。 しかし 野生動物の警戒心を解くのは、かなり難しい。 |
03 馬鹿者 |
最近は、漸く餌を手から食うようになってきた。 かなりの進歩ではないかと思う。 それでもまだ、手入れの行き届いていなさそうな、おざなりに伸ばされている毛並みを撫で付けるには至らない。 触れようとすれば逃げられる。 恐らく、本人は逃げているつもりは無いのだろうけれど。 尾のように揺れる後ろ髪を見る。 人の形を取るわりに、その髪の動きはまるで犬の尻尾だ。 警戒をあらわにしている時は 全身の毛を逆立てる様にギャンギャンと喚き立てる。 近頃はそういう姿すら『らしい』と感じてしまう己の偏執具合に、自分自身で驚きながら。 内心の思いとは裏腹に、一切変化の無い鉄面皮に少し感謝する。 「―――何ジロジロ見てやがんだよ、気持ち悪ィな・・・・」 若干の警戒と、困惑を混ぜたような声で 野良犬が眉間に皺を寄せていた。 手元に落ちてきた当初は『困惑』では無く『嫌悪』が滲んでいたものだったが、まぁ 思えば随分馴れたものだ。 「見られている自覚は、有るわけか」 「はぁ?いつも見てんじゃねーか、テメェ」 揶揄するように問い返せば、観察するみてーな視線はウザイ、と切り返される。 どうやら慣れた視線らしい。 ―――皆、目を惹かれるのだろう。 余りに人馴れぬ獣だけに。 「そうだな。貴様の良く動く後ろ髪が目につく」 気負わぬ様に手を伸ばせば、軽く指先に触れる毛先。 もう少しで掴む事が出来るかと思ったが、向こうも無意識の動作なのだろう 不思議そうな表情で身を翻し、こちらの宙を切る手を見た。 あぁ、確かに。 注視されるのは気持ち悪いものだな、腹の底だけで言葉を紡ぎ やり場の無い指先を更に伸ばして、テーブルの上の本を手に取った。 そんな些細な行動の延長に、安堵を見出しているのだろう。 ふつりと肩の力が抜けたのが見て取れた。 ―――それほど警戒するなら、最後まで気を抜くな。 付け入る隙が、随所にある事に全くといって良いほど自覚が無い。 目につく所にしか気が向かないのだろう。 新しく何かを得ようとする気概が薄いが故に。 馬鹿者め。 そんな事だから貴様はいつまでも『犬』なんだ。 油断した後姿にそっと手を伸ばし、気配を悟られないように指を絡める。 気付いた時には 既に遅い。 逃がす気など欠片も無いのだということを、思い知れ。 |
BLOGの方で更新してました駄文です。 脱稿 [2004年11月07日(日) ] で、御座います(´Д`)ノ うちの一磨さんはえらくノラにご執心。 もっと髪フェチ具合を醸し出したかったです.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆ そしてこちらは 『NORA - ノラ - 題』様の所からお借りしてきました 『ノラ受派さんに10のお題』でございます。 がむばりまーす。 |