夜空を焦がすような火柱が立った。 人間を殺すのは ただの嗜好だと言った、反乱組織の一人が断末魔の叫びを上げる。 追い討ちを掛けるように投げ付けた酒がより火力を強めたように感じるのは、燻る怒りのせいだけでは無いはずだ。 いつまでも残る怨嗟の声すら聞き流して その場を後にすることに決めた。 それは火災に気付いたパトカーのサイレンが聞こえたからであり、巻き添えを食って気を失った少女を送り届ける為であり、 冷めぬ怒りの矛先を定める為でもあった。 もっとも、最たる理由は 馬鹿犬の真意を突き止めるためだったが。 |
何時か見た夕日 |
「―――人間なんて、悪魔が手を出さなくても 簡単に死ぬのにな」 燃え上がるスーパーの駐車場を背に、その犬は呟いた。 吹き付ける熱風と、先ほどまでの戦闘で破壊された照明は 既に役目を果たしていない。 逆光でどんな表情を浮かべているのか判別不能なその顔は、どれだけ素の表情を晒しているのだろうか。 意図せず零れ落ちたその声は 『何故わざわざ殺す必要があるのか?』という素朴な疑問が滴り落ちた様のものなのだろう。 あまりにも、認識が低過ぎる為に。 ついさっきまで手の平を眺めながら ボンヤリとしていたと思ったら、突然そんなことを口にする。 どうも最近は変な知識ばかりを仕入れてきている様子もあった。 ・・・・・・全く 一体何を見たのやら。 今回の被害者とも云うべき少女を自宅まで送り届けた帰り道、野良犬は俺の3歩ほど後ろを歩いている。 特にそうしろと教育した覚えはないが 普段は真横〜1歩下がった辺りを歩くように癖を付けさせた。 犬の躾に関する本に確かそんな記述があったのを覚えていたからだが、大概において無意識に前へ出ようとする犬が 今日に限って振り向かねば表情も確認出来ない所にいるのは 腑に落ちない。 故に、少々歩速を下げて問いかけた。 「さっきの言葉は、どういう意味だ?」 声色から読み取れたことはあくまでコチラの想像の範疇でしかなく、予想よりも遥かに幼稚な思想しか出て来ない この犬が果たしてどのような意図で発言したのかを。 「ん・・・・・ぁ、あ?なんだ?」 掛けた言葉への反応ではなく、声を掛けられた事への 反応。 向けられた視線は純然たる問い掛けの色に染まっていて、他意は感じられない。 「さっきの言葉は、どういう意味だったか と聞いた」 同じ質問を2度口にするなど普段では有り得ない行動だが、ここは一つ譲歩してやろう。 その問い掛けに馬鹿犬は言葉ではない生返事を返し、自分が言ったことは何だったか を思い出すべく首を傾げた。 「『人間なんて、悪魔が手を出さなくても 簡単に死ぬ』とは、どういう事だ?」 埒の明かない展開に焦れて、先程耳にした言葉を口にする。 それをどうとったのか、ハッとした表情を過ぎらせた顔が硬く強張った。 「・・・・・・そのまんまだろ」 発する言葉も短く不明瞭だ。 別に咎めているわけでもないというのに、逸らされる視線が腹立たしい。 相変わらず真意の伝わりにくい遣り取りに 溜息が漏れた。 根気よく聴くということは美徳だ。 あまり好きな行為ではないが、必要とあれば何事も辞さない。 「簡単に死ぬ、というのも心外だが 『悪魔が手を出さなくても』というのは何だ。悪魔には病気や事故は無いということか?」 具体的な言葉を出して再度問うが、野良犬の浮かべる表情は酷く困惑したモノだった。 歩速を下げたとはいえ、歩きいていれば移動は続く。 「悪魔にだって事故や病気がねぇわけじゃねぇけど―――」 点々と存在する街灯の下で見えた顔は、普段とは違い言葉に迷うような珍しい表情を浮かべていた。 「・・・・・・・・・『自滅行為』は無いからな」 概念的に存在していないのだ、と口にする。 「自滅・・・・・?」 「この間テレビでやってただろ。テメーと同じぐれーの人間が、ジサツミスイ とか何とか・・・・・」 言って、自らのリストバンドを掴んで見せた。 あぁ。 成る程。 「確かにそういう者もいる。だが、所詮は一部だ」 わざわざ悪魔が殺しに興じなくとも、人は勝手に命を絶つということが 不可解なのだ。 自ら死を望むモノを救って何の意味があるのか、と。 「テレビなどは、とかく誇張したがるものだからな」 人間 という存在に少しは意識が傾いてきたという事だろうか。 「深くは考えるな。貴様には理解不能だろうし、理解する必要もない」 むしろ今は、その存在を理解すべき時期なのだから。 「それに、人間は悪魔の嗜好物ではないからな」 反乱組織や犯罪悪魔の行為を許容するつもりも更々無い。 「俺を怒らせた罪は重い」 「・・・・・・だろうな・・・・・」 沈み込むような返答に今度はどんな馬鹿面をしているのかと 振り返れば、遠い空の下 明々と立ち上る炎の揺らぎが空を染めている。 それは 古い記憶の中の夕焼け空に似た色をしていた。 懐かしい、何時か見た夕日の朱に――― |
心意気だけで読んでいただけると、大変有り難い感じです。 一磨さんの幼少のみぎりを観てみたい今日この頃。 きっとステキな修行っぷりだったんでしょうねぇ・・・剣道とかとか*:.。.゜(n‘∀‘)η゜・*: 原作で日本刀持ち出してくださったら、ウチの一磨さんにも 是非使って戴きたいトコロです゚+。(・∀・)゚+。゚ |