calling on God when in distress




「いやや」
 キッパリ。
「どーしても!?」
「どーしても」
 ハッキリ。

「か・・・・・神様のバカぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 脱兎。
「バカはオドレやろ、クソトンガリ・・・・」

 それは果てしなく周囲の注目を集めつつ、真昼の食堂で行われた夫婦漫才だった。
 ――と言うのは食堂のオバチャン談。
 話の内容は聞こえずとも、その二人のやり取りは周囲に水を打ったような静けさをもたらしていた。
 聴衆も真っ青。
 ただ、泣きながら駆け出していく赤コートの男が哀れだということだけは満場一致の見解であったという。



 場面は移り安宿の一室。
 相も変わらず懐具合の寒い二人は相部屋ツイン。
 時間は深夜帯に入ろうかというのに、今だ昼間のことで揉める男が二人。
 進歩がないのか大人気ないのか。

「いつもいつも思うんだけどさぁ。君ってすっごくケチだよね」
「かつかつやからな。いっっっつも」
「金銭的なことだけじゃなくてさ!もっとこう・・・何て言うの?スキンシップのこととか!!」
 ベットの上でジタバタしだすヴァッシュ。
 それに冷ややかな視線を向けつつウルフウッドは紫煙を薫らせた。
 視界がゆらりと霞む。
 深呼吸をするように肺にニコチンを送り、吐き出す。
 一連の動きはもはやウルフウッドにとっては習慣のようなものだ。
 いつ頃から手放せなくなったかをぼんやりと考えていると、ホロリと灰が落ちた。
「・・・・・・・ねぇ。僕の話聞いてるの?牧師様」
「せやからイヤや、っちゅーたやろ。この人間台風が!」
 微かな皮肉にしっかりバッチリ反撃を加えつつ睨みまで利かせれば、溜息をつくような表情が返ってくる。
 眉が八の字を書く。

 なんちゅー情けない表情やねん・・・・。
 情けなさ5割り増しや。

 無情にもそう切り捨てて、ウルフウッドは早々にベッドに潜った。
 当然の如く寝煙草。

 一昼夜飛ばしてこの街に辿り着いたものの、ヴァッシュとの口論のせいでのんびり休むこともままならなかったのだから、しょうがない。
 それをこの人間台風ときたら交代すらしなかった挙げ句、食事開始早々に『今晩シタイ』と言いだしたのだ。
 しかもウルフウッドの拒否に対して『ケチ』だの『スキンシップが足りない』だの現在言いたい放題。
 ウルフウッドの心情推して知るべし。

「あぁん!ちょっとー、寝ないでってばぁ!!」
「ワイ今日お疲れやねん」
「うわーん!神様の意地悪ー!牧師さんがお願い聞いてくれないよ〜〜!!」
「五月蠅いわ。もう黙っとり」
 キュッとナイトテーブルの灰皿に煙草を押し付ける。
 ふと。
 ウルフウッドの疑問が頭を掠める。
 実は常々ヴァッシュの言動で気になっていたことがあったのだ。

「そう言えばオドレ、昼間もそないなこと言いよったけどな、何で神様のせいにするん?」
「へ??」
 寝返りついでに視線を合わせ、問う。
 唐突な発言にヴァッシュは首を傾げた。
「『神様のいけずー』とか『神様のアホー』ってな、別に神さんが意地腐れな訳やないやん?」
「・・・・うーん・・・・。言葉のあやってヤツかなぁ?嫌だった?君の神様が侮辱されてるみたいで」
 首を捻って考えて。出てきたのはその程度。
 元々ヴァッシュは神様を信じているわけではないので、単なる勢いで口にしていたのだが、良く考えればテロ牧師でもやはり牧師。
 旅の相棒のお気に召さなかったのだろうか。
 ・・・・・などと考えたヴァッシュを尻目に、ウルフウッドはきょとんとした目をする。

 ・・・・・・そーいう顔は子供っぽいよね・・・君って・・・。

「何で?そんなんワイの神様ちゃうよ?」
 やにさがったヴァッシュの面を訝しげに眺めつつ、ウルフウッドは逆に聞き返す。
「え?!何で??君の神様とは別物なの?」
 慌てて聞き返せば、とーぜんやんとのお答え。
 しかしどうやら問題にしていることの主旨が食い違っているようで。

「そーやなくて。何で神さんのせいにするん?て。今日オドレの相手せーへんのは・・・・まぁワイ本気で疲れとるし、オドレの誘い方が下手やったからで、あくまでそれってオドレのせいやん?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
 ニヤケ顔から、一気に脱力してしまう。
 いつだってウルフウッドの言葉はさり気なく失礼だ。
「せやのに、何で神さんのせいにするんかなー・・・と思ったんや」
 しかしウルフウッドは肩を落とすヴァッシュを一瞥しただけで先を続ける。
「ワイの仕えとる神さんは運命なんぞ定めとらん」
「未来への切符は白紙だもんね!」
 何処か遠くを見据えて、ウルフウッドは呟く。
 自他共に認める地獄耳を持つヴァッシュは、かつて自分を育てた女性の言葉を繰り返す。


 ヴァッシュの言葉は希望を。
 ウルフウッドの呟きは、むしろ自嘲を含んでいるような響きだった。


 知らずウルフウッドの口元に笑みが浮かぶ。
「むしろ一寸先は闇・・・やろ?」
 曰く、嘲笑のような嘲りのような。
 視線を天井に定めたままウルフウッドは嗤い続ける。
「・・・っ!何でっキミは・・・・!!」
 カッと激情に駆られたヴァッシュがウルフウッドの胸ぐらを掴みあげた。
 だが逆にウルフウッドは冷め切った表情で詠うように囁く。
 かつての聖女と正反対の言葉を。
 ―――――絶望と諦念を。

「なぁトンガリ。切符が白紙っちゅうことは、何処にも行けんっちゅうことも含むんやないか?」
 なぁ。
 近づいた唇が触れそうな距離で繰り返し囁き続ける。毒。
 ジワリジワリと精神を蝕んでいくような響きに、ヴァッシュはきつく唇を噛んだ。

 『未来への切符は白紙なのよ。
  何処へでも行くことが出来るように。
   自分の未来は自分で切り開いていくの』

 かつて母であり姉であり、最も慕わしかったニンゲンの言葉。
 150年間大事に守り続けていた言葉を掻き乱される苦痛。
 心に穿たれた穴は、それでも大きいもので。
 じわじわと流れ込む毒が、地表にばらまかれた人々を狂わせる。


 神の死んだ星。
 乾ききった大地。
 不安定な明日。
 寄る辺無きこの砂の星で、それでも人は生き続ける。
 彼女の守った命は。
「やり直しは利くんだよ。ウルフウッド・・・・・・未来は決まってない。何処へでも行ける。生きたいと思うかぎり」
「・・・・・・・・・・・オドレは綺麗事ばっかしやな」
 絞り出すような声。
 お気に召さなかったかもしれないが、少なくともウルフウッドの表情は平生のものに戻っている。
 溜息と、諦めと、そして・・・・・呆れたような。
 ウルフウッドの表情は常に混じり合って微妙なイメージを作る。
 今の表情には疲れと、呆れと・・・・・それと・・・?

「まぁええ。今日の所は見逃したるわ、はよ寝ぇ。明日も早いんやから」
 ぐいっと接近したままのヴァッシュを押し返しつつ、再び布団に潜り込むウルフウッド。
「んー。じゃ、明日は絶対サセテもら・・・・ぐはっ!」
 いそいそとベッドに戻るヴァッシュを金属の塊が襲った。
 軽い音を立てて頭に衝突したそれは灰皿。
 ウルフウッドもまた、自他共に認める地獄耳の持ち主だった。





 ――――旅は続く。

 打算と欺瞞の日々でも、楽しいと感じられるのは喜ぶべき事だ。
 いつか、この旅が終わる日が来たら、きっと白紙の切符に行き先が記入できるのだろう。


end
ハーイしゅーりょ〜〜 ドンドンパフパフ。
初インテの勢いで書き上げ書き上げ(爆)
むしろ意味不明ですお客様!
二人もと偽物この上ないです。エセシリアスです。
文才無いです。諦めましょう(合掌)
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