目が覚めて、気が付くと無意識のうちに握り込んでいる。
左胸。
掴んでいるのは十字架。
ただし、入れてあるのは左の内ポケットで――
安堵のように息を吐き、祈るように目をきつく閉じる。
祈っているのかも解らない。
何も映さない瞳がゆるりと開かれる。
心の闇を溶かし込んだような黒。
――何を祈ったのか――
――何に祈ったのか――
我知らず漏れる吐息に疑問を乗せ、重い体を持ち上げる。
「また、今日もあつーなりそうやな・・・」
まだ暗い空に向かって紫煙を薫らせる。
―――夜明けはまだ遠い。
【FIN】
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