day after day |
「ここに居たか適性者・・・・・って、生きてますか?ノラ様!?」 ガラリ、と開かれた入り口もそのままに、軍服姿のバリクが驚いて足元の物体に声を掛けた。 「何の用だ、不器用副将軍ヒレ耳男」 轟沈したままのノラに代わり、生きているぞ一応 と返して、バリクの突然の登場に驚いた様子も無く一磨が声を掛けた。 しかし平坦な声とは裏腹に、その背後にはどす黒い物が渦巻いている。 「好い加減にしつこいぞ人間!水軍副将のバリクだと何度言えば―――」 「知っていて呼んでいる。貴様こそ何度言わせる気だ?」 子供らしさの欠片も無い 冷徹な切り返しに、バリクの額に青筋が浮かぶ。 しかし一磨の腕は胸の前で組まれているというのに、ビシリッ と指を指されたような気分になって、バリクの肩が僅かに揺れた。 「・・・・・・心配しなくとも、他の生徒には封身姿に見えている」 「なら構わん」 数瞬躊躇った後に返した答えに満足したのか、一磨は手近な椅子を引いて腰を下ろした。 その空気の変化に 内心胸を撫で下ろした自分を、これまた内心叱咤しながら バリクは一磨にいつか何処かで見たような紙袋を手渡した。 「リヴァン将軍から適性者に、との事だ」 何で俺がこんなお遣いのような真似を・・・・・と思わないでもないが、交換条件で今日が締め切りの書類を全て片付けてもらう事になっている。 多少の苦悩も平生の胃痛よりはマシ―――だと思いたい。 「ほう・・・・・」 「ギャァ!いってぇ!!」 中身を確認して、ようやく復活しかけたノラの上へと落下させた。 悲鳴と共にボニャリという奇妙な音が響くが誰も気にしない。 狙い違わず頭でキャッチしたノラには目もくれず、当の一磨は二人に背を向けて歩き出した。 十歩も進んではいない。 ファイルの詰め込んである棚の、スチールケースを引き出し その中身を一つ掴みあげた。 折り返し戻ってくるかと思いきや、その場で振り被って・・・・・・・・・・・・・・・・べしり。 「ッたっ!!何をする、人間!!」 他の生徒をして『鉄人真狩』と呼ばしめる一磨の豪腕が唸り、バリクの顔面に白い塊を叩き付けた。 へろり・・・・と落ち行く白い物体に続いて、避ける事すら出来なかった自分に嘆くバリクが膝を折る。 ―――正直、本当に痛かった。 そんな本音=泣き言など口にできる筈もないバリクに、畳み掛けるように一磨が宣告を下した。 落ちた白い、礼装用の手袋を指差して 「それを、貴様の腑抜け上司に 俺と全く同じフォームでぶつけておけ」 ドーン、という効果音でも付きそうな漢らしい物言いに 流石のバリクも開いた口が塞がらない。 確かに覚えている。一磨のあの体勢は人間界の野球というスポーツのものだ。 あぁ知っている。 だがそれで誰に何を投げつけろと? 上司?俺の上司といえば、当てはまる人は一人しか居ない。 あの、リヴァンに。 「私に死ねというのか、貴様は!?」 「安心しろ。屍は俺の飼い犬が拾いに行く・・・・・かも、しれんぞ?」 「それの何処に安心があるんだ!第一ノラ様は貴様の物ではない!!しかも『かも』とは何なんだ?!」 驚愕と憤りに打ち震えるバリクの動揺も仕方がないほどの提案だった。 と、言うよりはむしろ命令口調だ。 精神的ダメージは甚大だが、バリクの記憶が正しければ 出掛けにリヴァンが『適性者から預かり物とか託けとかあったら、ちゃんと持って来いよ。タコ』というような事を言っていたはずだ。 いっそ忘れてしまいたい、という願いは彼の性格上叶えられるはずもなく。 未だに床と仲良くしているノラとまともに会話することもないまま、バリクは力なく教室を後にした。 「重・・・・・コレ早く退けろよな・・・・」 どんよりとした空気を纏って退場したバリクの背を見送ってから、ノラが自らの頭上を指す。 何とか座るところまで姿勢を正したノラを一瞥して、 「フラフラ出歩いた仕置きだ。もうしばらくそうしておけ」 一磨は紙袋の中にカードだけを抜き取った。 「キモチイーから、いーけどよ・・・・・」 座ったままブツブツと文句を連ねるノラの前で、一磨の掌中のカードが踊る。 『イタリア系マフィア式』と記入されたそのカードには、かつて目にした事のあるリヴァンのサインが。 ―――じゃぁ、これリヴァンからか? 重いが ひんやり、という半凍結状態の可哀想なジェリーを紙袋ごと手に取り 涼をとるために抱え込む。 その 夏の暑さを解消する贈り物に、気持ち良さそうに目を細めた。 しかしノラは、二人の男の間で交わされた行動の意味を全く予想もしていなかった。 リヴァンからの贈り物、それは『イタリア系マフィア式』の殺意を隠して贈り物をするという殺意の予告。 一磨から(バリク仲介での)リヴァンへの白い手袋投擲、それは中世ヨーロッパにおける貴族式の果たし状。 どちらも本気で流血沙汰にする気はない。 ただ単に お互いの意思表示という程度のお遊びだが、十中八九巻き添えを食らうだろうバリクの今後がこの時点から想像出来そうで。 「・・・・何が楽しいんだよ、キモイぞてめー」 くつくつと恐ろしい笑みを浮かべる一磨に 怯えて距離を取ろうとするノラの襟首を引っつかんで、リヴァンの付けた反対側の首筋に口付ける。 「ぅわ・・・・・ぃつっ!」 暴れる身体を押さえ込んで、きつく吸い上げれば 鮮やかな紅い跡が付く。 色濃く刻まれたその印に、ふんっと鼻を鳴らして。 解放されたノラは、再び床に尻餅をついた。 「サイ、アク・・・・・ッ」 顔も首も朱に染めて、忌々しげに呟くのは痛みにか その濡れた感触にか。 首輪に隠れるギリギリのラインに残された紅い所有印が二つ。 本当の所有権を宣言出来るのは、果たして誰になるのか――― ノラの受難は続く(笑) |
夜来様へ
after day のオマケのようなものです。
宜しければお控え下さいませ。
本当に「これでもか!」と言うくらいにお待たせして
申し訳御座いませんでした!!(((((ノ;;)ノ
これからも当サイトを宜しくお願い致します!ヽ(*´▽`*)ノ
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