・御手洗のパロディ本についての考え・

御手洗の「小説パロディ本」について、光文社の方にお問い合わせいただき、ありがとうございます。あの時には詳しくお話できませんでしたので、以下で、これについて当方が持っているイメージを、多少詳しくお話したいと思います。

この企画は、ふたつばかりの目的を持っているように考えています。ひとつは、先に出した御手洗パロディ漫画本が、多くの方々から批判をいただいたということです。その要旨を簡単に言うと、あれでは御手洗さんが女性たちだけのものになってしまい、男性読者が入れなくなってしまう、という危惧です。
これは確かに、おっしゃるような面もあったかと思います。そこで今度は小説のパロディ本を考えました。これなら男性参加も可能でしょう。同人漫画の場合、男性の作家人口は少ないように思いましたので、むずかしかったですが、小説パロディなら、男性作家半分も目指せるように思っています。実際には六・四程度に女性の方が多くてもいいかとは思いますが。現在女性の時代で、個人的には女性作家の台頭に期待していますから。
もうひとつは、この不況が深刻なおりに、死刑問題とか冤罪問題、日本人論などで、売れない本の出版に無理に協力をいただいている南雲堂出版に、たまには売れそうな本の企画を提供したいという気分からです。以前の漫画、「御手洗君の冒険」もそうでしたが、ですから今回、発売元は南雲堂とします。しかしごく近い将来、どこかメジャー出版社の文庫への収録はあり得ます。一次出版の体裁は、ノベルス装丁にしたいと考えています。

内容に関してですが、まだデビュー前の、まったくの新人の名前が並んでいるというだけでは、なかなか読者の手も伸びにくいであろうと思います。まるきり売れなくては南雲堂に逆に迷惑をかけてしまいますから、御手洗もの(石岡君もの?)の新たな一編としても読めるような、構成上の工夫をします。 具体的には、私が小編「A」を書いて冒頭に置き、中間にも自作(ということは隠しますが)の小編「B」を配置、結末最後にも短編「C」を置いてしめる、という構成にします。

この三編の小編の内容に関して、以下で簡単にイメージを言いますと、例えばですが、<A>は、里美ちゃんが属するセリスト女子大・ミステリ研の仲間が、不思議な事件に遭遇し、失踪してしまうという事件経過がまず語られます。あるいは、この人の知り合いが怪我をする、などというものでもいいですが、犯人は、どうやらインターネットにHPを持っていて、自作の「御手洗パロディ小説」を公開しているらしい、ということが解ってきます。そしてこのパロディ小説の中に、事件の真相を知るキーが埋まっているらしい、と知れます。
ところがこの人の名前も素性も解らない。そこで里美ちゃんが、手当たり次第インターネットを用いて御手洗パロディ小説を収集する、という事情が語られます。収集したパロディ小説の、どれかひとつの中に、事件の謎を解く鍵が存在するわけです。でも、どれであるかはこの時点では全然解りません。
以下、里美が収集したパロディ小説が、延々とランダムに並びます。この部分は、パロディ小説の読書を、そのまま読者に楽しんでもらいます。<B>、この中に、当方が書いた小編も一編さりげなく入ります。これが<B>です。犯人の書いたパロディということにしますが、実は私が書いたものです。そしてこの中に、真相を探るキーが埋まっています。
しかし集まったパロディ小説の中に、この部分に使えそうな内容のものが発見できたなら、それはこれをそのまま<B>として、ここに使用したいものです。キーを埋めることができそうなものなら、そういうお願いをするかもしれません。
<C>は、解決編ですね。<B>を用いて犯人の素性、住所などを二人がとうとう探り当て、事件が解決する、そういう事情の説明です。
これはざっとのイメージで、実際には変わるかもしれません。集まった小説を読ませてもらってから、柔軟にストーリーを決定していきたいと思っています。

以上のような性格の本ですから、望ましい条件について若干述べると、あまり濃厚な同性愛の性描写は、なじまないと思います。しかしプラトニックなもの、あるいは若干なら、かまわないのじゃないでしょうか。
あまりに激しい誹謗、中傷もの、主人公や作者への嘲笑をもくろんだもの、こういうものは心ある人の気分を暗くしますから、排除していいと思っています。
しかしこうすると、またぞろ自分を持ちあげているものばかりを選んでいる、とする陰口が出てくるでしょうが、これは嘲笑ものをあえてとりあげても本の出来がよくはなりませんので、黙殺とします。
要するに、読んで明るく笑えたり、楽しい気分になるような種類のものですね。これが一番です。続いて論理志向もいくらかあり、謎解きも楽しめたらさらによい、といった順番でしょうか。しかし後者はなくてもかまわないでしょう。笑いが明るく、ストレートで、湿った嘲笑とか、無意識での暗い威張りが滲んでいないもの、といったことが一番重要です。この本はエンターテイメントであって、純文学ではありませんから。

締め切りは特に定めませんが、できれば今年中に本を発売できたらいいと思っています。しかし、大々的に公募するというような形式は取りたくありません。自然発生的な作品の方が、生命力があると思うからです。集まりが悪ければ、あるいは私の方が異常に忙しかったりすれば、発売は来年、または再来年になってしまったりする可能性も、ないではありません。
このような企画で才能ある人と知り合えれば、近い将来、当方に何か協力できることもあるでしょう。小説の枚数制限は特に定めませんが、今回の企画では、長くても五十枚以内というところがよいと思います。ただ、連載中の一部というものはどうするかですね、悩むところは。できれば完結している方が単行本の読者には親切でしょう。

ではそんなところで。何か質問あったら、南雲堂出版の編集者、大井理江子さんの方に連絡してください。彼女で解らないことは、彼女がこちらに転送してくれるでしょう。どうしても必要なことあるなら、電話番号を書いておいていただけたら、直接私が電話します。

平成十一年七月八日 島田荘司


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