カイツブリの子育て記録

kunio miyamoto

カイツブリはため池や河川に適当な範囲のテリトリーをもって棲んでいる。鳩よりもやや小さい体をときおり水面に浮かべては、水中にもぐってはもっぱら魚を補食して生活している。冬場には暖かい地方へ多少移動して生活するが、春から秋にかけては一羽又は一番(つがい)で孤独に溜め池などで生活している。子育ては7−8月の暑い夏に水上で行われる。

 暖かい春になるとカイツブリのカップルが出逢い、
ピィーヒョ、ピィーヒョと可愛い愛のハーモニーの合唱が池の水面に輪を造りながら伝わってくる。
 やがて夏になると子育てが始まる。水面に水草を集めて浮巣を作り、その上に産卵をする。このカイツブリ夫婦は池に廃棄された発泡樹脂製の箱を利用して、その中に水草をせっせせっせと詰めて浮巣を作った。真夏の浮巣は孵化に最適な温度を保っている。暑くなり過ぎたり、上空からの外敵から卵や孵化した雛を護るために、水中から水草を取ってきて覆うこともしばしばあった。
 雛は三羽孵化した。親鳥は交代で巣を護る。
 時には背中におんぶして子守りをする。背中では雛がピッピッと鳴いている。遊泳の途中でも雛の体温が下がると両方の羽を少し広げて背部を下げて後方からおんぶすることを雛に促す。
 雛は孵化すると間無しに泳いぎ、親と一緒に浮巣から遠くまででかける。雛の体長は5cm程度。遊泳しながら親鳥はときおり小魚を捕えに潜る。そして小魚捕まえると浮きあがってくる。ここで、次のような親鳥の教育が始まるのをみた。
 親鳥は浮きあがってくるとすぐには雛に小魚を与えることなく、向きを変えて3mほど離れ、雛が再び接近するのを待つ。
 そして再び三羽の雛が泳いでたどり着くと、その中の一羽の雛に魚を与えた。
 一匹の魚を与えられた雛は他の雛から少しでも逃げようと必死に泳ぐ。孵化して間もない雛に生存競争をまなばせているように見えた。

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宮本邦男