マンガレビュー
好きな漫画について、好き勝手に語る。
Last update 01/7/4

●馬頭ちーめい ブレイクエイジ 01/7/4up
アスキーコミック。全10巻。

『−いつの時代も、子供たちが日々楽しくあるように−』
西暦2007年。通信対戦ゲーム『デンジャープラネット』(D.P)のプレイヤーである高専生、仁村桐生は、 桁外れの強さを誇るV.P(バーチャルパペット≒ロボット)『ベンケイ』と、そのパイロットの女子高生 高原彩理に勝負を挑む。『俺が勝ったら付き合ってください』…と。
やがて付き合い始めた2人だが、彩理の死んだ兄で、D.P開発者でもあるディードリッヒ・高原の遺した 『ゲーム』は、やがて彼らと、その時代そのものを、数奇な運命に導いて行く…。

話の根幹は恋愛モノ(それもかなり王道)なのだが、それに色取りを添えるのがD.Pという仮想ゲーム。 専用ディスクの容量が許す限りのデータとプログラムをパソコンで作成し、物理シミュレーションを行う マスターシステム上で走らせると、仮想空間にオリジナルのV.Pを出現させることが出来る。それを専用の 大型体感筐体で操作し、全国のプレイヤー達と対戦やバトルロイヤルを行う…というもの。
こういったゲームマンガは、たいがい設定上において『そりゃないやろ』とツッコミを入れたくなるような 不条理な点(明らかに悪いゲームバランスや、夢みたいに不条理なシステム)が目立つものだが、このD.Pに 関して言えば、そう言った点は殆ど見当たらない。作者本人がかなりのゲーマー(1児の母にも関わらず…)で、 バックにゲーム屋がついているというのが大きいのだろう。物語の流れや演出上の理由でか、いくらか不条理な点も 見うけられるが、分かっていてつく嘘というのは説得力がある。しかも、費用面での折り合いがつけば、 現実の200X年には本当に実現できそうでもある。こんな設定を、チャロンどころかスト2しか出てなかった頃に 考えついたと言うのは、有る意味凄い先見だと思う。(バトルテックはあったが)
マニアックな設定の緻密さというのは、時としてマンガを読みにくくするが、元が王道恋愛マンガで、登場するキャラも なかなか味があるため、マニア以外の人間も楽に読めるのでは無いだろうか。結果としてかなり痛快な娯楽作として 仕上がっている。(ただ、やっぱりちょっとゲーマーの論理に肩入れしすぎかな?)
戯言(ネタバレ有り)
●植芝理一 ディスコミュニケーション 01/4/23up
講談社。全13巻+学園編(全1巻)+精霊編(全3巻)。

『ワカラナイカラ好キニナル。好キニナルカラワカラナイ』
女子高校生の戸川は、ある日突然、クラスの変わり者である松笛を好きになってしまった。
やがて付き合い始めた二人だが、松笛は戸川に『涙を飲みたい』とか『襟足を剃らせてくれ』 といった、変な注文ばかりをするのだった。また時に戸川は、松笛の手で、妙な儀式を行ったり、見えるはずの無いものを見たり、異界の住人とコンタクトを取ったりといった、不思議な体験をすることもあった。
そんな松笛の接し方すらも、好意を持って受け入れてしまう戸川だったが、それでもなお、 ある疑問を抱えずにはいられなかった。

『わたしはどうして松笛くんを好きになったんだろう?』

友人ruvel氏に借りて読み、一瞬でハマった。それまでに読んだどんな漫画とも違う、異質な要素というか、 変な魅力を持った漫画だった。コピーに曰く、『摩訶不思議恋愛漫画』
以下に、その特徴(?)を挙げてみる。

 ・扉絵や背景が、物語の筋とは全く関係無い落書きで、やたらと埋められている場合がある。
 ・その落書きには作者の趣味(YMOや特撮ヒーロー等)が爆発している。
 ・初期のエピソードは、戸川と松笛のちょっとだけ奇妙な日常を描く。恋の障害になりうるキャラも現れる。
 ・が、あるエピソードを境に、二人の精神世界(?)を舞台に、まるでバトル漫画の様な展開を開始する。(冥界編)
 ・その後、舞台を学校に移し、コメディだったりちょっとHだったりシリアスだったりする色々な事件を、二人が解決する話になる。(学園編)
 ・さらにその後、思い出したように初期のような展開に戻り、二人の奇妙な体験を描くようになる。(内宇宙編)
 ・このようにバラバラな構成で、絵柄もコロコロ変わるが、作品の持つ『雰囲気』は、一貫して変わっていない。
 ・主人公、松笛は狐のお面を被っており、戸川はメガネをかけている。(重要)

他にも挙げたい点は多々あるが、文章でいくら説明しても、この作品は語れないように思う。
基本的には恋愛漫画ではあるので、興味のある人は1巻から読んでみて欲しい。
(単行本『学園編』は本編10巻〜11巻の間くらいに相当する話。『精霊編』は次作『夢使い』へのイントロダクションに相当する。)

戯言(ネタバレ有り)
●冬目景 ZERO 00/12/3up
スコラ or ソニーマガジンズ。1巻のみ。

事件は突然起きた…。
全校集会に遅れてやってきた主人公、釘町が体育館で見たものは、物言わず横たわる、生徒と教師達の死体だった。 …3話完結。

前述の『変拍子』と同時に購入し、その日に読んだこの作品は、自分がそれまで持っていた 冬目作品に対するイメージを、多少なりと変えてしまったような気がする。
(まあ今にして思うと、この作品も非常に冬目作品らしいとは思うのだが)

内容は、簡単に言うとパニックホラーである。現代より少しだけ、機械化の進んだ学校を舞台にした脱出劇。 ある意味では非常にお約束通りの展開が待っており、案の定、殆どの登場人物は死んでしまう。 そのせいか、あるいは他の冬目作品とは一線を画した陰惨さのためか、ネット上で見る限り、この作品に対する 評価は、非常にバラけているようである。
自分も最初、この作品の「パニックホラーとしてのありがち感」が目に付いてしまい、あまり好感は持てなかった。 だが、今現在はやや評価が変わっている。

キャラが良いのである。皆、どこかに弱さと脆さを持つ登場人物達。 また、キャラの心情や、それを反映する情景描写も巧みで、美しい。こういった要素は、他の冬目作品にも共通して いる点だが、パニックホラーであるが故に、キャラ達の心情はより直接的に、時には痛々しいほど強く表現されている。

始めて冬目景を読む人にはあまりオススメできないが、逆に冬目景を語る上では外せない作品だと思う。
●冬目景 僕らの変拍子 00/10/30up
スコラ or ソニーマガジンズ。1巻のみ。

冬目景の初期短編。デビュー作を含めた6作品を収録。

自分は冬目景の作品が大好きである。元々、ギガウイングのキャラデザで興味を持ち、 何気なく古本屋で手に取った『羊のうた』でハマり、『イエスタディをうたって』でKOされたというのが、 これまでの経緯だったりする。
この短編集はそれらを読んだ後、『ZERO』と一緒に購入したのであるが、そのあまりにバラエティ豊かな 作品群には、正直、前に読んだ2作以上の感動を覚えた。

基本的には現代を舞台に、学生〜就職期の頃の少年達を主人公にした恋愛モノや、軽いファンタジー調の 物語を描いているのだが、場面描写や展開が巧みで、ちょっとした映画を見ているような気にもさせられる。 またどの作品も、短い中に作者のメッセージがしっかりまとまっており、それでいて「押しつけ感」やクドさを 感じさせないスマートさを持っている。絵柄はまだ固まっていないので、読み手の好みによっては合わないかも しれないが、軽い読み物をちょっと読んでみたいという人には、気軽にオススメできるかもしれない。

個人的にはどれも好きだが、あえて1本挙げるなら『銀色自転車』が好き。自分が自転車好きなのもあるが、 この作品のホロ苦さとラストシーンの美しさには、マジでため息が出たものだ。

しかし、冬目作品のレビューは難しい。愛深き故に…(汗)
●藤子・F・不二雄 SF全短編 00/10/17up
中央公論社。全3巻。

昭和48年〜58年くらいの間、ビッグコミックやSFマガジンに載っていた短編の全集。 地元の古本屋で3巻セット\3000円にて購入。「絶対に損の無い買い物」だと確信していた。その通りだった。
大半の物語の舞台は、普通の藤子F漫画とさほど変わらない。ドラえもんのように日常を舞台とした物が 中心で、中には21エモンやモジャ公のような、未来や宇宙を舞台とした物もあるという程度。しかし、この短編集は ある一点で、その他の作品と一線を画す。…毒が強いのである。ブラックといってもいい。

子供向けの作品には描けない、暴力、犯罪、セックス、欺瞞、強欲…。そういったアクの強い要素を諸所に盛り込みつつ、 基本的にはドラえもんと大差ない『日常と少しだけ違う世界』を、ある時はブラックに、ある時は風刺的に、また ある時はコミカルに描ききっている。コレはもう、流石としか言いようが無い。

・1巻『カンビュセスの籤』:
『全ての生命あるものの行動の目的は、一転に集約されるのよ。 生命を永久に存続させようという盲目的な衝動……ただそれだけ』
最終戦争後、草木一本すら残らなかった地球に、僅かながら生き残った人々の取った行動とは。
非常に重い表題作の他、基本的にややブラックな作品が多い。

・2巻『みどりの守り神』:
『行けるところまで行くさ…止めないでくれ』
老年期に入った人類。廃棄される星ラグランクから、新たな1歩を踏み出す少年と少女を描いた『老年期の終わり』他。
前巻とは少し雰囲気が変わり、比較的後味の良いSF作品で固められている。

・3巻『征地球論』:
『…地球人はしばしば目から水を流し、さまざまな問題をウヤムヤに終わらせている』
地球は征服すべきか否か。討議する宇宙人の視点から、現代人を風刺した表題作。
他、2本のシリーズ物を含んだ、非常に読み応えのある最終巻。

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