個性競う百種類三百株


 津山市内西部、吉井川に近い院庄の田園地帯に「牡丹寺」として知られる清眼寺が静かにたたずむ。ゴールデンウィークの前後、手入れの行き届いた境内一帯は福々しいボタンの花で華やぐ。
 色とりどりの花は百種類、三百株にも上る。住職が昭和48年頃、島根県にある大根島の行商人から二株ほど買って植えたのが始まり。薄紅の大輪をつけた「八束獅子」、珍しい黄色の花の「ハイヌーン」など、どれもが見事。(ぼたんギャラリーへ)
 「色も違えば、八重や十六重もあり、一つ一つの個性が楽しい。世話は大変だが花は正直。手を抜けば花への影響はてきめん。」と住職。平成八年、寺では「福徳、富貴なボタンを地域の花に」と苗木を檀家らに配り、あちこちの庭先で花をつけた。

 当山は、もと極楽山雲清寺と号し、淳和天皇の御代、高祖弘法大師が開山したと伝わる。
 元弘二年、後醍醐天皇 隠岐に御遷幸の砌、御駐輦になられたと伝わる古刹 山名時氏の祈願所 後年災禍にあい諸堂焼失せるも長禄年間(1457〜1460)に今の地に宥尊上人が再興し、極楽山清眼寺と改号。
 貞享五年、森家家老 長尾勝明が、後醍醐天皇、児島高徳の由跡を後世に伝えるため、ゆかりの当山に「院庄貽文(いんのしょうのこしぶみ)」(市重文)を託した。

 本尊は阿弥陀如来、美作国七福神の毘沙門天を奉る美作八十八カ所の五十六番札所でもある。

 毎年、花に合わせてぼたん祭が開かれ、檀家の婦人らが抹茶や菓子などで参拝者をもてなしてくれる。
また、清眼寺は「岡山花の名所100選」「津山ふるさと景観賞」にも選ばれている。