迷惑メール 送信停止命令

ドコモの申請認める

横浜地裁

業者に規制

初の司法判断

(日本経済新聞2001年10月30日12版38面)

 

【見出し】

 NTTドコモの携帯電話にインターネットを通じて大量の迷惑メールが送られてくる問題で横浜地裁(板垣千里裁判長)は29日、同社が横浜市内の業者に送信をやめるように求めていた仮処分申請を認める決定をした。

携帯電話を使った迷惑メール送信を規制する司法判断は初めて。

この決定を受けてドコモは他の業者にも法的措置を取り1日9億通近く送信されている迷惑メール問題に歯止めをかけたい考えだ。

【本文】

 送信停止を命じられたのはグローバルネットワーク(横浜市、菊池越・元代表、解散)。

ドコモの申立書や横浜地裁の決定によるとグローバル社は今年6月、「出会いサイト」に勧誘する迷惑メールなどを合計140万通強を送信した。

ドコモでは通常のメール送受信が12時間以上遅れるなどの被害があったとして、7月に送信停止を求める仮処分を申請していた。

 板垣裁判長は決定で「営利目的の電子メールを送信して、ドコモの所有する電気通信設備の機能停止をもたらすような行為をしてはならない」として送信行為の停止を命じた。

ドコモは今後も送信側のプロバイダー(接続業者)などと協力して送信業者を特定し、法的措置をとる考え。

 ドコモによると同社の携帯電話ユーザーあてに1日に送られてくるメールの総数は約10億通だが、このうち少なくとも9億通は迷惑メールの可能性が高いという。

利用者からの苦情、問い合わせは今年6月に13万件に上った。

 このため同社はメールのアドレスを複雑にするように呼びかけたり、メール受信費用を100通までは無料にするなどの措置をとっている。

 

【ツッコミ】

 今や日本で最大のプロバイダーはドコモだとも言われています。

言わずと知れた「iモード」の普及がその要因ですが、最近では「迷惑メール」の弊害が大きく取り上げられることも頻繁になってきました。

「出会い系」と呼ばれるサイトで見ず知らずの人間同士が会い、そこから重大犯罪に発展したというのも記憶に新しいところです。

 また、本人が送信を希望していない「迷惑メール」であっても、自分の携帯電話に取り込む以上は受信者自身が通信料を負担する必要があり、これがドコモへの苦情にもつながっています。

その対策として、記事にもあるようにドコモ側で一定数の受信料は無料にしたり、受信者自身も電話番号をそのままアドレスに使うのではなく、アルファベットを組み入れるなど「乱数計算」で簡単にアドレス抽出されないような防後策をとるなどの方法が徐々に進んでいます。

 

 この仮処分決定の抑止効果やグローバル社側弁護士の「受信者が料金負担する課金システムそのものが悪い、消滅会社に対する命令処分も実効性がない」という反論にも興味のわくところですが、何よりも新鮮な情報だったのが「携帯メールの約90%は迷惑メール」というドコモの発言です。

交差点の信号待ちや駅のホームなどのちょっとした時間に携帯でメールを見ている人をよく見かけます。

ネットに接続して受信したメールを確認しているその作業のうち、9割が迷惑メールの受信とその削除に追われているという計算になります。

なんてムダな作業でしょう…。

ほかにやることがあるだろうに・・・・・・。

 

 メールのメリットは「複数あて先への同時配信」「低コストでの情報伝達」「電話のように相手の時間のじゃまをしない」というところにあります。

同時配信と低コストの弊害が迷惑メールということになるのでしょうが、それはともかく、メール愛用者でも緊急の要件であれば、やっぱり電話を利用するのではないでしょうか。

ということは、「緊急ではないけれど伝えておかなければならない要件」がメールのメッセージだとも言えます。

だとすると、出張中はともかく、毎日家や会社にいるのに、その出先でメールをチェックするほど速報性の高い情報というものが、今自分が受信しているメールの中にいったい何件あるでしょうか?

あくまでも私自身の話ですが、朝届いたメールを夜になってやっと開いたからといって、それで重大な問題が発生したという経験は今のところありません。

だって、緊急の要件は携帯に電話がかかってきますから。

 

 とはいえ、携帯電話を使ったメールシステムがこれだけ普及しているのも事実です。

記事にも「迷惑メールの大量配信によってサーバーの能力が低下して、最大12時間配信が遅れた」という実害も紹介されています。

でも、これは単なるあいさつ代わりのメールが遅れるという程度ならともかく、携帯を使って銀行振込をする場合などは大問題になったことでしょう。

まれなケースかもしれませんが、もしも手形の決済日に当座預金の残高が不足していて、慌てて出先から携帯を使って口座への送金を指示したとしても、12時間も遅れて指示が届いたのであれば完全にタイムオーバーです。

その手形は「不渡り」ということになってしまい、会社にとっては取り返しのつかない損害をこうむることになるでしょう。

この責任はドコモにあるのか、それとも迷惑メールを配信していた業者にあるのか?

 さらに政府の電子化が進み、納税をはじめ行政への届出が携帯で可能になったとすると、その配信情報量は今の迷惑メールどころの騒ぎではありません。

それだけの情報量を処理できるインフラが果たして整っているのでしょうか?

整備中とすれば、将来的な設備投資負担にそれぞれの企業や自治体が耐えられるのでしょうか?

 考えれば考えるほど深い問題のような気がします。

 

 

無料タクシー エムケイ訴訟

不受理取り消し命令

名古屋地裁

「運送法の限定なし」

(日本経済新聞2001年10月30日14版39面)

 

【本文】

 タクシー大手のエムケイ(京都市)が、名古屋市周辺で運行を計画している無料タクシーの営業用ナンバー申請を受理しなかったのは違法として、中部運輸局愛知陸運支局長を相手取り不受理処分の取り消しを求めた訴訟の判決が29日、名古屋地裁であった。

 加藤幸雄裁判長はエムケイ側の主張を全面的に認め、「道路運送法上の無償運行事業に当たり、申請の不受理処分は違法」として不受理処分の取り消しを命じた。

 加藤裁判長は判決理由で、「無償運行事業は旅館などが行う送迎バスに限定される」とする被告側の主張に対し、「運送法はそのような限定は加えていない」と指摘。

「有償であるタクシー事業に関する法規制を逸脱する事業で、法律上認められない」との被告側の主張に対しては、「マスメディアでは『無料タクシー』と呼ばれているが、本件自動車は法律上の『タクシー』に該当せず、出発点に誤りがある」と退けた。

 

【ツッコミ】

 名古屋地裁はこの決定に先立つエムケイからの仮処分申請を認めただけに、今回の決定は予想された結論だとも言えます。

 改めて道路運送法を見てみると、「無償旅客自動車運送事業」とは「無償で旅客を運送する旅客自動車運送事業」と定義されており(第3条第3号)、「旅客自動車運送事業」とは「他人の需要に応じ、自動車を使用して旅客を運送する事業」と定義されています(第2条第3号)。

どこにも「送迎バスに限る」などとは書かれていません。

 

 この決定に対して国交省の小幡政人事務次官は「無償タクシーは究極のダンピングで控訴を検討している」とコメントしています。

エムケイとしては今回の無料運行を「広告宣伝の一環」としています。

私としてはダンピングの問題よりも、タクシーが地域均一料金であることの方が問題ありと感じます。

安全運転で愛想がよい運転手でも粗っぽい運転手や無愛想な運転手と同じ料金というのは、利用者としてどうも納得がいきません。

無料の問題性よりも、2種免許さえ取れば顧客志向がなくても道に迷っても(ホントにいるんですよ)タクシー運転手として正規料金を払わなければいけない現在の制度の問題性を、国交省は察するべきでしょう。

今の世の中、「不良品と優良品の価格が一緒」なのは公共運輸事業くらいなものです。