判定ミス428人中220人が入学辞退

山形大

(日本経済新聞2001年6月6日13版38面)

 

【本文】

 山形大工学部の入試判定ミスで、過去5年間に誤って不合格とした428人の半数以上が、同大に入学を辞退することを伝えていたことが5日、分かった。

 山形大によると、5日夜までに入学しない意思を確認したのは220人。

 内訳は、今春入試の受験生が30人で、2000年が40人、99年32人、98年54人、97年64人だった。

入試が行われた年をさかのぼるほど多い傾向で、すでに他大学に入学していたり、就職していたりするのが理由とみられる。

 一方、入学希望者は71人で、未定は137人だった。

 

【ツッコミ】

 そりゃ、今さら「どうぞお入りください」と言われたって、「ハイ、そうですか」と簡単にはいかないでしょう。

特に5年前に不合格扱いされた人なんかは、場合によると別の大学をきちんと4年で卒業して就職していれば、すでに社会人2年生になるわけですから。

 「学費は全部うちが持ちます」と言われても、工学部なのにコンピュータのバグに気づかないレベルでは、「大したこと教えてくれるはずがない」とかんぐられても仕方ありません。

交差点でウィンカーと間違えてワイパーのスイッチを入れるタクシーに乗るような気分でしょうから。

 

 6月に入った現時点でも「態度保留」が137人というのは、大半が入学の意思がないということかもしれません。

気を取り直して別の大学を目指して予備校に入るケースが続出することも予想されます。

 

 主人公となった受験生は全員「一生忘れることのできない」キズになるかもしれず、なんとも気の毒という言葉しか浮かびません。

 

山形大が「おわび金」

追加合格者428人に

(日本経済新聞2001年6月7日14版39面)

 

【本文】

 山形大学工学部の入試判定ミスで同大は6日、過去5年間の追加合格者428人に「おわび金」として一律10万円を、工学部の教授らでつくる基金から渡すことを決めた。

同大によると、基金は1億円を目標としており、工学部教授会を構成する教授や講師など133人が、役職に応じた金額を一括、または分割で来年3月までに拠出する。

 

【ツッコミ】

 そもそもこの判定ミスは、コンピュータのプログラムミスから発生したものです。

大学の教授や講師は入学が確定した人に対して責任を負うのが筋ですから、この「基金拠出」は一見すると「無過失責任」のような印象を受けます。

 

 しかし、すでに1度予備校から大学側に判定に関する疑義の問い合わせがあって、その時点で特に突っ込んだ調査をしなかった以上、工学部側に責任があると言えます。

 

 ここでちょっと気になる点があります。

この「おわび金」、性格上はどのような位置づけになるのでしょうか。

 私が被害者であれば、明確にその性格を確認します。

何も確認せずに受け取ると、そのまま「示談成立」と扱われる可能性があるからです。

少なくとも1年を棒に振って、さらに精神的ダメージを受けたのに10万円で「解決」とされては、被害者も納得できないでしょう。

おわび金はあくまでも大学側の自発的な拠出によるもので、示談や和解の意図とは別である旨を明確にしておく必要があるでしょう。

そうすれば、別途損害賠償請求の裁判を起こす余地があります。

具体的な損害が認められれば、おわび金は「賠償の前渡し」という扱いで賠償額から控除されるだけですが、なんとなく示談めいたものにしてしまうと、すべてが10万円で済まされることになるからです。

 

 金額の問題ではなく、責任の明確化を図るうえでも、詳細を明らかにすることが山形大復権の道でしょう。