保険基礎セミナー

定額保険と変額保険

 生命保険を単純に区別すると「定期保険」「終身保険」「養老保険」の3種類になることをお話ししました。

これは、「保険会社が契約者である我々をどのように面倒みてくれるか」という観点で分類したものです。

 

 これとは別に生命保険を分類する観点として「定額保険」「変額保険」というものがあります。

 

定額保険とは

 定額保険は我々が「普通に」契約している生命保険のタイプで、「受取保険金」が「定額」であるものを言います。

契約時に「死亡保障2000万円」であれば、保険が適用される期間のいつ死亡しても2000万円を受け取るのが定額保険です。

 

変額保険とは

 変額保険は、保険会社の資金運用成績や死亡のタイミングによって受取保険金が変動するものを言います。

この場合、毎月支払う「保険料」は契約時に合意した「定額」です。

 ところで、「受取保険金が変動」ということは、当然期待していた金額よりも受取保険金が少なくなることもあります。

ということは、保険会社が運用に大失敗すれば、受取保険金は「ゼロ」になってしまうのでしょうか?

 

 そうではありません。

死亡時の保障については「基本保険金」というものが定められていて、保険会社の運用成績がどんなに悪化しても「最低限これだけは死亡時に必ず支払います」という金額が契約時に決められます。

逆に運用成績が好調であった場合には、定額保険よりも多く死亡保険金を受け取ることもできます。

つまり変額保険における死亡保障は、基本保険金以下になることはありません。

 

変額保険@ 終身型

 変額保険をさらに2つのタイプに分類します。

その1つは「終身型」と呼ばれるものです。

これは次のような特徴があります。

終身型変額保険は定額保険の「終身保険」に類似するものです。

 ちなみに終身型変額保険のシクミをを図にすると次のようになります。

 

変額保険A 有期型

 変額保険の1つは「有期型」と呼ばれるものです。

これは次のような特徴があります。

有期型変額保険は定額保険の「養老保険」に類似するものです。

あるいは、償還期限の定められた「投資信託」に通じる点もあるといえます。

これを図にすると次のようになります。

上の図は運用成績好調のうちに満期を迎えた「ハッピーエンド」の場合であって、もしも満期時に運用成績が振るわなければこんな感じになります。

 

変額保険のトラウマ

 変額保険そのものは、つい最近登場したものではありません。

この保険はバブルの頃からありました。

実はこのバブル期に変額保険を利用して、かなりの痛手を受けた資産家の人々が少なからずいます。

この弊害が強調され、「変額保険は危ない」という情報が流れたため、一時下火になりました。

 

 当時資産家が変額保険で大被害を受けた原因は、その契約形態にあります。

当時の利用動機は「節税」が目的でした。

簡単に説明すると、「基本保険金ウン億円」という変額保険を法人名義で契約し、銀行から借金をして初回に一括してバンッ!と保険料を払ってしまうのです。

こうすると、支払保険料は経費計上できます。

一部が資産計上されても、それは数年で「減価償却」されて、最終的には全額経費で落とせます。

これに借入金が加わるわけですから、資産の圧縮効果はさらにアップします。

しかも当時はすべての資産価値が右肩上がりでしたから、「ほぼ間違いなく」見込みよりもたくさんの満期金が受け取れる……はずでした。

つまり、「死亡保障」というよりも「投資」として変額保険を利用する色合いが濃かったのです。

 

 ところが1990年の「土地取引の総量規制」をきっかけとしてバブルが崩壊しました。

株も土地も軒並み値下がりしていきました。

変額保険の運用もモロに影響を受けて、満期を迎えた頃には基本保険金を大きく下回る「満期金額」が続出しました。

しかし、銀行からの借金は資産価値とは関係ありません。

つまり、受取金は減ったのに、多額の借金だけが残ったという「最悪の結果」になりました。

 

 それからしばらく、この変額保険をめぐる訴訟がありました。

「契約時には資産が減るかもしれないという説明がなかった」などといった「売主の瑕疵担保責任」を問うものが大半ですが、これについては今回のメインテーマではないため、詳細は省略します。

 

変額保険の利用法

 ここまで説明してくると、変額保険の抱えるリスクは株式や投資信託とかなり共通するものであるということがご理解いただけると思います。

たしかに過去の一時期、投資環境や一般国民の知識が十分でなかったため、大きなトラブルを発生させた変額保険ですが、だからといって「絶対ダメ」というわけでもありません。

 

 定額保険の宿命は「インフレに弱い」ということです。

今日の2000万円が、30年後も同じ価値を持っているとは言いきれません。

これは「明治の1円と今の1円は価値が同じか」を考えると分かりきっています。

 変額保険はインフレにつれて運用成績も変動するため、完全とは言いきれませんが定額保険に比較すると「インフレリスク」をヘッジしてくれます。

 

 また、バブル期の資産家が失敗した教訓や株式投資に似た正確という点から、「ドルコスト平均法」つまり、掛け金は毎月払うことで「投資リスク」を軽減することが大切です。

 

 さらに、変額保険本来の目的である「死亡保障」を重視すべきでしょう。

そう考えると、満期金を期待する「有期型」は避けた方がいいと思います。

インフレに強い死亡保障として変額保険を利用し、資産運用は別の手段をミックスして検討するのが賢い利用法でしょう。

 

 

Next