『 今どき しょうがい児の母親物語 』
ぽれぽれくらぶ:著 ぶどう社 定価:1456円 + 税
ISBN4−89240−116−1 C0095 P1500E
なにしろ、元気になれる本です。しょうがいを告知され、気分的に落ちこんでしまっているお母さんには、一番にこの本をお薦めしています。
専門書でも、療育方法を書いたものでも、カウンセリングの本でもありません。
東北の仙台市に住む、しょうがい児をもったお母さんたちが「ぽれぽれくらぶ」(“ぽれぽれ”とはスワヒリ語で「のんびり、ゆっくり」という意味だそうです)という会を作って集っています。「ぽれぽれくらぶ」のお母さんたちは、とても元気でした。お母さんたちは、いろいろなことをしていました。勉強会もしました。映画会もしました。お泊まり会もしました。でも、お母さんたちが一番好きだったのは、おしゃべりでした。お菓子を食べながらおしゃべりするのが、とても好きでした。
しょうがい児といわれる子どもをもってから、いろいろなことがありました。いろいろなことを考えました。いろいろな人と出会いました。そんなことを、たくさんたくさん話しました。そうして、そんなおしゃべりの中からでき上がったがこの本です。
“ふだん着”の、“等身大”のお母さんたちの本音のおしゃべりです。とにかく、楽しい本です。それにひと役かっているのが渋谷真理子さんのイラストです。表紙を見るなり「あるある!」と笑ってしまいました。
お母さんの子育ての日常、大変なんだけど、みんな集れば・・・そうそう! と笑えてきますね。(小野家の場合) 夜泣きがひどく、おぶって一晩中 部屋をぐるぐる歩いた。何かに気をそらそうと夫のセーターを編みながら歩き 地獄のような夜が続いた。 そんな私はA型さっ!
(目黒家の場合)「夜泣き」そう、こんな時は、外に出るもんよね、ドラマとかで・・・と、外に出ると、アパート中に声が「大反響」してしまった。私はO型 (^_^;)
もちろん、本音の部分ですから、真面目(?)な会話もでてきます。
「みんなつっぱってたよ」「すっかり乗り越えてなんかいない」「今でも、これが夢だったらって」 ・・・でも
「しょうがい児の親だからって、世間の皆様のご期待にこたえるように、つつましく暗めを保つなんちゅうことができるかい! まったく、疲れるったらないのであります。」
両方、本音の部分ですね。同じしょうがい児をもつ親の方だったら、すぐにわかると思います。言える言えないは別にして、どちらも自分の中にある正直な気持ちですね。
そんな思いを「ここまで、言っていいのかしら」「言ってしまった、どうしよう」 そんな本です (^。^)最後に、玉井真理子さんの巻頭詩の一節と、この本らしいつっこみを紹介してお薦めのことばとします。
なお、「あなたは偉大な魔女、みんな素敵な魔女よ!」とたたえられた(?)玉井真理子さんのHPは
http://square.umin.ac.jp/~mtamai/Welcome.html
http://www.arsvi.com/0w/tm01/0.htm玉井さんチの子育てを1冊の本にしたのが、「障害児もいる 家族物語」(こちらも渋谷真理子さんのイラストです)です。あわせて紹介します。
『 私はあなたの母になったばかり 』 玉井 真理子
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あなたが
弱々しくはかなげなその命を
それでもなお生きようとしているのなら
その命に
私はせめて寄り添ってみましょうか
あなたが自由にその命を生きられるように
少しはたすけることができるかもしれない次の瞬間には
あなたの首を絞めてしまうかもしれない
あなたを床に叩きつけてしまうかもしれない
そんな私の腕に抱かれて
寝息をたてているあなたの
期待に添えるかどうか甚だ自信はないけれど
とにかくそう思うのですせめて私を見て笑うようになってくれたら
そんな素朴な願いの傲慢さを
あなたのかすかな寝息が語っています
命の質を問うてはならぬ
命の質を問うてはならないとあなたが私を見て笑うようになっても、ならなくても
あなたが生きようとしている命の重みは
変わらない
変わってはいけない私はあなたの母になったばかり
あなたは私の子になったばかり
私はあなたの寝顔を見ています・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
私が玉井よ きめるときゃ、きめるわ!(^。^)
(2003.2)
目次
私はあなたの母になったばかり ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 玉井 真理子
ようこそ! “ぽれぽれ・わーるど”へ!
生きてゆくっていうことは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 目黒 久美子
私はどうして泣いているのかな?
目カラウロコって、このことね!
保母さんって、けっこう誤解してるよね
療育って、ナァ〜ニ?
その後、まあ君とお母さんはどうしたか
私もかおりも、世界がちょっぴり広くなった
女はおしゃれだ!
つつましく暗めを保つなんて、やってられないわ
かおりの心
効いたのかもしれない、効かなかったかもしれない
私たちの人生は
“重荷”は自分で軽くできるんだ
【 アンケート調査 ― 障害児と家族 】
お母さんたちに聞きました最も身近で切実なテーマ
家族内の人間関係に焦点をあてて
母親の視座から、母親にアンケート
一番の相談相手は誰?
夫婦生活でトラブッたことは?
おじいちゃん、おばあちゃんとは?
きょうだいたちとは?
心がけていることは?
家族までを視野に入れた支援が欲しい
「しょうがい」って、いったいなんでしょう?
【 ぽれぽれママたちのおしゃべりタイム Part1 】
ここまで言っていいのかしら今でも、これが夢だったらって
100パーセントって不気味ね
そう、試されるときなのよね
お母さんはみんなのアイドル
私たちの人間観・しょうがい観
お父さんたち、わりといい評価ね
「支えられてる」っていう実感
お父さんはうらやましがってる
職場の理解を得ることも大事
一人じゃ背負いきれない
おじいちゃん、おばあちゃんもね
実家に帰ると、なんだか・・・・・・
そりゃ、究極のお告げだね
先生に言ってもらうのも、いいよ
ちょっと変わった子だなって
孫もかわいそうだけど、娘も
「えらいね」って言われるけど
全部まとめて大変なわけじゃない
ホントは働きたかったのね
集団の中で育ててもらうのもいい
しょうがい児と母親は一体?
「お母さんガンバレ!」の大合唱
元気の出るアンケートにしよう
外に向かって自分がひらかれている
子どもに背中をおされてる
【 ぽれぽれママたちからの伝言 】
こだわりを溶かしてくれたのは息子 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 島田 美代子
のんびり、ゆっくり、かめさんのように ・・・・・・・・・・・・・・・・ 吉田 文恵
幸せの価値観がグルッと ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 若林 俊克・千波
うちのなあーちゃん ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 渋谷 真理子
「ひと」は、たからもの ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 井上 澄子
わたしの元気の素 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 高橋 康子
幸恵が一番めんこい ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 加藤 増美・千恵子
【 ぽれぽれママたちのおしゃべりタイム Part2 】
言ってしまった、どうしようみんな、つっぱってたよ
すっかり乗り越えてなんかいない
「産む性」として欠陥が?
まわりの人が無知なんだって
私のせいなのだろうか・・・・・・
第二子を産むには勇気が
羊水検査を受けなかったのは
やっぱり普通の子なんだって
「負い目」ってなんだろう?
この私が産んだのよ!
子どもに? それとも自分に?
まだ、ことばにしたくない
「孫自慢」に出してみたい
こんな孫がいてよかったって
プラスマイナス、差し引きプラス
そのたびに確認させられるんだね
だれかに出会って、自分が
私もなれそうかなって
苦労してる姿だけじゃ
普通の家族なのにね
たいして強くもない、たいして弱くもない
「私」からの手紙 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 小野 恵子 + 玉井 真理子「友達がいっぱいいる」快感って麻薬みたい
迷いながらも普通学級を選んだ、親たち
「しょうがい」も自然の一部、じゃ「自然」ってなに?
ビビットな世界になったんだなぁ、わが家も!
人間て「かかわり」の豊かさだって思いません?
弱さをかくさず生きるほうが楽、できないことは人の手をかりてさ
あなたは偉大な魔女、みんな素敵な魔女よ!さあ、フィナーレです
イラスト ・・・・・・ 渋谷 真理子