各種課題分析手法(アセスメント手法)における口腔ケアの位置づけについて   

 課題分析(アセスメント)は,介護サービス計画(ケアプラン)とともに介護支援サービス(ケアマネジメント)の中枢をなすものであり,これにより個々の要介護者に特有のニーズを明らかにすることなしに,個別化された適切な介護支援サービスを提供することはできない。このニーズを明らかにするための道具(tool)として,各種の課題分析手法(アセスメント手法)が用いられているが,注意すべきは,課題分析票を用いれば要介護者の生活状況がすべて把握できるべきではなく,ケアマネージャーは要介護者との関わり合いの中でこの不足部分を埋めることが求められる。口腔ケアにおいても,各課題分析手法において,口腔ケア関係の項目に不足があれば,口腔関係のニーズを充分に把握できないことも予想される。そこで,各手法に取り上げられている口腔ケア関連の項目を検証した。

1)MDS-HC, CAPs方式
2)日本版成人・高齢者用アセスメント(日本訪問看護財団方式)
3)日本介護福祉士会方式
4)日本社会福祉士会方式
5)包括的自立支援プログラム
6)居宅サービス計画ガイドライン


1)MDS-HC, CAPs方式における口腔関連項目

口腔衛生関連項目として
 ・咀嚼に問題がある
 ・嚥下問題がある
 ・食事中に口の中が「かわいている」と感じる
 ・歯みがきや入れ歯みがきに問題がある
の4つをあげ,上記に1つ以上該当すれば,より詳細にアセスメントする必要があるとしている。



2)日本版成人・高齢者用アセスメント(日本訪問看護財団方式)

「栄養状態と口腔ケア」という項目の中に
 「食べ方の状況」として
 0.固いものも普通に噛める
 1.刻み食なら噛める
 2.軟食・ペースト状なら噛める
 3.歯がない,歯や口腔が痛い,動かせない等のため咀嚼できない
 4.胃瘻,腸瘻,経管栄養のため咀嚼していない

 「嚥下の状況」として
 0.何でも普通に飲める
 1.流動食や軟食・ペースト状なら飲める
 2.水や流動食はときどきむせるが飲める
 3.水や流動食はむせる/誤嚥する
 4.胃瘻,腸瘻,経管栄養等や歯・口腔・喉の痛み等のため嚥下していない

 「歯・口腔内の状態及び病気の予防」として
 a.自分の歯や入れ歯がない
 b.治療をしていない虫歯がある
 c.歯が折れている,ぐらぐらしている
 d.歯ぐきの炎症,腫脹,出血,口腔内の膿,発疹,痛み等がある
 e.食べカスが口腔内に存在する
 f. 歯又は入れ歯を毎日磨かない,口臭,うがいをしない

以上の口腔ケアの関連項目がみられる。



3)日本介護福祉士会方式

記述式のためチェック項目はないが,記入マニュアルにより,
 アセスメント1 フェイスシートの「口腔ケア&整容」の欄に
 「口腔のケアを自分でやっているのか,ブラッシングや洗面はどうか」を記載するとしている。
 アセスメント2 体の健康の「口腔」の欄に
 「義歯の有無や手入れの方法,嚥下困難の状態等を記載する」としている。



4)日本社会福祉士会方式

「口腔内の状態および食事内容の状況」として
 1)口腔内状態  1.口腔の炎症 2.むし歯 3.義歯不良 4.咀嚼困難 5.口臭・口腔の不潔  
              6.その他(   )
 2)1日の食事回数     回
 3)食欲         1.ある(普通)2.あまりない 3.全くない
 4)1日にとる水分量 約    ml
 5)脱水傾向      1.ある    2.ない
 6)嚥下         1.できる   2.見守り(介護側の指示を含む)  3.できない
 7)食事の種類     1.普通食  2.きざみ食  3.粥食 4.ミキサー・流動食 5.その他(   )
 8)食事量やバランス 1.良い     2.問題がある(     )   3.不明
 9)食事療法・治療食 1. なし     2.あり(         )    3.不明

「入浴・衛生の保持」として
 口腔清潔        1.自立     2.一部介助        3.全介助

以上の項目がみられる。



5)包括的自立支援プログラム

要介護認定の介護サービス調査票がプログラムの一部であることが特徴であるが,
「介護サービス調査票」(基本調査)として
  7.嚥下           1.できる  2.見守り(介護側の指示を含む) 3.できない
 22.清潔について 口腔清潔(はみがき等  1.自立   2.一部介助  3.全介助
 23.食事摂取について  1.自立  2.見守り(介護側の指示を含む) 3.一 部介助 4.全介助

「ケアチェック表」 洗面,口腔清潔,整容,更衣に関するケアとして,口腔ケアの項目に
  ・口腔清潔の必要物品準備
  ・口腔清潔の使用物品後始末
  ・口腔清潔(歯みがき等)
  ・うがいの介助
  ・入れ歯の手入れ
  ・口唇の乾燥を防ぐ

以上の項目がみられる。



6)居宅サービス計画ガイドライン

アセスメント項目の基本構成は,
 第T部 生活全般アセスメント部分
  1.フェースシート 
  2.家族状況とインフォーマルな支援の状況 
  3.サービス利用状況 
  4.住居等の状況 
  5.本人の健康状態・受診等の状況) 
 第U部 ケアアセスメント部分
  6.本人の基本動作等の状況と援助内容の詳細
   (この部分に要介護認定項目を組み込んでいる)
 第V部 総括アセスメント部分
  7.全体のまとめ・特記事項) 
よりなる。

口腔ケアに関連する項目としては,第T部の5.本人の健康状態・受診等の状況の中に,歯の状況として,
  □ 歯あり   □ 歯なし   □ 総入れ歯   □ 局部義歯
の項目がある。
第U部ケアアセスメント部分6.本人の基本動作等の状況と援助内容の詳細が,要介護認定調査項目を組み込んでいるため,口腔ケアに関連する項目としては,
  ・嚥下                   1.できる   2.見守り(介護側の指示を含む   3.できない
  ・清潔について 口腔清潔       1.自立   2.一部介助                 3.全介助
  ・食事摂取について          1.自立   2.見守り(介護側の指示を含む)  3.一部介助
                         4.全介助
がある。


 以上,各課題分析法における口腔ケアに関連する項目を列挙した。
 口腔領域に問題ありと判定された場合に,問題領域を選定するには不十分であるため,口腔ケアアセスメントを追加して行うことが望ましいと思われる。一般的なアセスメントを行った後に,さらに詳細な何10項目にも及ぶ口腔に関するアセスメントを追加して行うことについては賛否両論があるが,私は最低でも10項目程度の口腔に関するアセスメント票を追加したほうが,口腔領域に関する問題領域(1.食物摂取 2.咀嚼嚥下機能 3.口腔清掃 4.口腔疾患 5.発音機能 6.口腔ケアを妨げる要因など) が浮かび上がり,望ましいと考えている。