摂食・嚥下障害における理学的,神経学的検査のポイント

摂食・嚥下障害における理学的検査のポイント
全 身 状 態 @体重測定 A皮膚の状態(脱水の有無) B栄養状態 C体温
口 腔 @入れ歯,虫歯の有無 A舌苔の状態 B歯槽の状態 C口臭 Dアフタ潰瘍の有無 E唾液の量,流唾の有無 F発声
咽 頭 @腫脹,発赤,汚れ,白苔 A食物の残留など
声 門 @発生時の動き,閉鎖 A腫脹,発赤など
呼 吸 @努力性呼吸 A呼吸数(特に食前・食後の比較)
聴 診 @肺雑音 A飲水Dの頸部の雑音の有無
摂食・嚥下障害における神経学的検査のポイント
部 位 検査のポイント 支配神経
咬 筋 (1)完全に開口,閉口できるか
(2)抵抗を加えて開口,閉口させる
三叉神経
口 唇 (1)口唇を突出させる
(2)「イー」と発音するように口角を引く
(3)口唇を閉じて頬を膨らませる.膨らんだ頬を押して空気が漏れる様子を観察(左右どちらか)
顔面神経
軟口蓋 (1)静止時の状態で左右非対称がないか
(2)挙上:「アー」と発音させ軟口蓋の挙上を観察.麻痺があると麻痺側の軟口蓋が動かず健側へ口蓋垂が引かれる(カーテン現象)
舌咽神経
迷走神経
喉 頭 (1)空嚥下をしてもらい喉頭の挙上を観察
(2)示指をオトガイ下部(下顎骨のすぐうしろ),中指を舌骨部,薬指を甲状軟骨の頂点,小指を甲状軟骨の下部にそれぞれごく軽く各指の先端を添えて空嚥下をしてもらう.示指,中指で舌筋,舌骨の動きを触知し,薬指,小指で喉頭の挙上を触知する.かなり個人差があるが,健常者で慣れておくと,挙上のスピード,挙上距離,挙上するときの力などの感触がわかる。「はい,飲み込んで」と号令をかけてから実際に挙上するまでの時間が1秒以上かかったら異常があると疑う。ただし,頸部が短くて指が入らず,十分に触知できない場合は,甲状軟骨の真上に示指を1本おくか,示指と中指をおいて診察する.
(3)母指と示指の腹で甲状軟骨を押さえて抵抗を加え,空嚥下してもらい,喉頭が挙上する力の強さをチェックする.正常ではかなりの力に打ち勝って喉頭挙上できるが,軽く押さえてだけでも挙上できなければ異常,逆に自発的に挙上できなくても,甲状軟骨を上に押し上げるように挙上を助けると先下反射が起こる場合があり,嚥下反射が残存していることがわかる.
舌咽神経
迷走神経
(1)前後運動:舌をまっすぐ前方へ突き出させたり,引っ込めさせる.舌の先端で硬口蓋を滑らすようにして前後運動を行わせる(舌の回旋運動を伴う)
(2)左右運動:舌で左右の口角をなめさせる.
(3)上下運動:硬口蓋と下顎切歯の裏側を交互に舌の先端で触れさせる.
 以上の運動は1回だけでなくリズムをもって繰り返させ,スピードや変換動作のスムーズさ,疲労などをチェックする.
舌下神経
反 射 (1)病的反射:下顎反射,口とがらし反射(錘体路障害),吸引反射(前頭葉の障害,両側大脳の広範な障害)
(2)口蓋反射:軟口蓋を口蓋垂から外側に軽くこすると同側の軟口蓋挙上,皮質核路の障害で消失,両側性の消失は仮性球麻痺の初期からみられ,きわめて鋭敏な検査である.球麻痺でも消失する.
(3)咽頭反射:舌圧子などで舌根部や咽頭後壁を触れると咽頭から軟口蓋全体が一気に収縮する.健常者でも欠如することがあり,臨床的な意義は少ないとされている.
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  藤島一郎 : 脳卒中の摂食・嚥下障害.医歯薬出版,1998.より